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南充浩 オフィシャルブログ

ギフト業界って知っていますか?

2013年4月11日 未分類 0

 3月29日の繊研新聞に「広がるギフト市場」という記者コラムがあった。

内容的にはまったくその通りで現状を上手くまとめてある。

「ギフト市場が広がっている。ここ数年、女性を中心に従来の中元や歳暮とは違う、日常的にカジュアルなギフトを贈り合う習慣がじわり定着しつつある。アパレルからの新規参入も含めてそうしたニーズに対応する新しいショップが続々登場し、競争が激化。新しい提案が求められている」

という書き出しから始まる。

この記事でも紹介されているようにクロスカンパニーが今秋から立ち上げる雑貨業態「メゾン・ド・フルール」はギフト対応をメインに掲げている。

たしかに、友人・知人に誕生日プレゼントや何かの記念で贈り物をする場合、この記事に挙げられているような店で雑貨を購入し、ラッピングしてもらうという人は多いだろう。

アパレル業界ではご存知ない方も多いかもしれないが、実は「ギフト業界」なる業界も存在する。
郊外の幹線道路沿いで「ギフトショップ○○」というような路面店を見かけたことはないだろうか?
あれがギフト専門店であり、彼らの属している業界がギフト業界である。

ギフト業界のいう「ギフト」とはおもに中元歳暮・仏事・チョイスカタログギフトを指す。
あの「ギフトショップ○○」の多くは中元歳暮・仏事・結婚式にのみ対応している。
結婚披露宴に出席すると、引き出物としてカタログを頂くことが多い。あのカタログには生活用品、雑貨、食品、繊維製品、衣料品などが掲載されている。ギフト業界が扱う品物の幅は広い。

だから、外からギフト業界を見た場合、扱う品物が雑多すぎて品物という切り口では理解することは難しい。
ギフト業界は食品業界にも繊維業界にも雑貨業界にも属している。しかし、それぞれの業界がこの「ギフト業界」を主力販売先とはあまり見なしていない。
彼らの主力販売先は、量販店であり百貨店であり、各業界の専門店であり、通信販売でありインターネット通販である。

先に繊研新聞が挙げた「ギフト」をギフト業界では「パーソナルギフト」と呼ぶ。

主力だった中元歳暮が減少傾向にあり、ギフト業界は2000年代半ばごろから「パーソナルギフトを強化する必要がある」と言い始めた。しかし、幹線道路沿いのギフトショップを想像してほしいのだが、一部の先駆的といわれる店を除いて、多くは外観も内装もお洒落ではない。店主やスタッフも野暮ったい。
そんな店で知人の誕生日プレゼントを購入しようという消費者はあまりいないだろう。
当然ながらギフト業界は「パーソナルギフト」需要をほとんど取り込めていない。

アパレルブランドやSPAブランド、セレクトショップが「パーソナルギフト」対応を強化すれば、まったく勝負にならない。

かくして、繊研新聞がまとめたような状況になるというわけだ。

さて、久しぶりにギフト業界の方と雑談をする機会があった。
ちょっとブランクがあるので「業界の情勢はどうですか?」と尋ねてみると「相変わらず、中元歳暮・仏事・チョイスカタログしか考えてない人が多い。ますます衰退するよ」との返答だった。

今でもたまにギフト業界誌を読むことがあるのだが、業界は「贈答文化を喚起しよう」などというキャンペーンを行っている。らしい。
らしい。と書いたのは業界誌では見かけるが、実際の生活上ではあまり見かけたことがないからだ。どのような手段でキャンペーンを行っているのだろうか?
業界誌上だけでのキャンペーンだったとしたらそんなものはまったく広がるはずが無い。

なぜなら業界誌は発行部数がひどく少ない上に、読者は業界の人間だけに限られる。
業界の人間に向かって贈答文化をわざわざ喚起する必要はない。業界が業界人に向かってキャンペーンをおこなっていることになり、広がりはない。

先の繊研新聞の記事の中で一つだけ事実と異なる個所がある。

「可能性が大きいギフト市場だが、競合する店が増え、すでにブルーオーシャンからレッドオーシャンになりつつある」

とある。

業界がいうところの「ギフト」も、「パーソナルギフト」も以前から競合する店は多かったのである。
業界のいう「ギフト」は捨て置くとして、「パーソナルギフト」への着手は、当然アパレル業界より早かった。しかし、各ギフトショップにはアパレル業界ほどのブランド力がなかった。ブランド力のないショップでだれが友人・知人へのプレゼントを買うというのか。

ギフト業界よりはブランド力のあるアパレル業界がその「パーソナルギフト」市場へ参入したため競争が激化しているのが現在の状況である。
これほどアパレル業界各社が「パーソナルギフト」対応を強化している現状では、ギフト業界が「パーソナルギフト」需要を取り込むことは最早不可能になったと見るべきだろう。

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