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南充浩 オフィシャルブログ

素材や縫製や製法だけでは売れない

2013年2月12日 未分類 0

 先日、こんなまとめブログがあって、興味深く読んだ。

どんな女の子も一瞬でダサくなる方法見つけたwwww
http://beelzeboulxxx.com/archives/23237433.html

もともとは、パロディや悪ふざけで作ったコラージュなのだろうが、意外にも「ブランド」というものの本質を突いてしまっている。
もとより、筆者はこの手の悪ふざけは大好きなので単純に面白おかしいのだが、どんなにカッコイイタレントのポートレイトでも特定のブランド名を入れるだけで、不思議と低価格品に見えてしまう。

もっとも例に出されているのが、しまむらで、あとユニクロ、PIKO、BADBOY、ライトオンなどと続いている。
ユニクロと比べて、幅広いファッションアイテムがそろうのがしまむらだ。
だからこんな服もしまむらには売っているのではないかと思わせてしまう説得力がある。

一例を挙げると、これが

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こうなる。

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いかにもそれっぽい。
しまむらのポスターにありそうだ。

デザイン物にユニクロのロゴを付けても合成感丸出しで違和感がある。もっとシンプルベーシックなテイストなら説得力が出るだろう。

反対に、そこらへんのオニイちゃんに「エルメス」や「バーバリー」のロゴを付けてもなかなか馴染まない。
写真をモノクロにするなどの工夫が必要なようである。

で、結局、「ブランド」というものは本来そういうものなのではないだろうか。
同じ材質・同じ縫製・同じデザインのTシャツだが、しまむらで売っているから1900円で、バーバリーだから5900円。買う側も「バーバリーだからそれくらいして当然」と受け取っている。
「バーバリーと同じ素材・同じ縫製・同じデザインだからうちも5900円で販売します」としまむらが主張してもなかなか消費者には受け入れてもらえない。

材質や縫製が直ちに店頭価格に反映されるなら、だれも「ルイ・ヴィトン」の塩化ビニールのバッグなど10万円も出して買わなくなる。

そこには、素材や縫製、製法を越えた「信頼感」がある。
それを作ることこそが、安易に使われ過ぎて手あかにまみれまくった言葉ではあるが「ブランディング」という作業だろう。

製造業社の多くはここが理解しづらい。

例えば、ラグジュアリーブランド「●●」の生地を製造している日本の企業があったとしよう。
で、この日本の企業はこれまでの下請け体質から脱却しようと、自社の生地を使って製品を作る。
その新製品の価格を決める際に、「●●ブランドは10万円で販売しているから、同じ生地を使って同じ製法で製造している当社の製品も同じ10万円にしよう」ということがよくある。

他の機械、金属、化学などの業界は分からないが、こと繊維業界に関していえば、こういう主張をする製造業社はけっこう多い。この15年間何社も見てきた。そしてそういう主張をしたブランドは消え去っている。

いくら、「●●」ブランドと同じ材質製法でも、無名の製造業社ブランドが消費者に同じ価値で受け入れられることはまずない。そうするためには何年間ものイメージ作り、販売活動、販促活動が必要となる。

もちろん、筆者個人は物作りをイイカゲンにして、「販促でチョチョっとタレント使ってPRしたら売れるんや」などとうそぶくブランドはまったく好きではない。そういうブランドは往々にして長続きしない。スタート当初は売れても安物のメッキは数年で剥げ落ちる。

しかし、いくら物作りが良くても、販促活動や販売活動、イメージ作りなしで高額品が売れるとも到底思えない。

なぜなら、消費者は材質や縫製や製法だけに高いお金を払うのではないからだ。

今回のこういう面白スレは製作者の意図しないところでブランドビジネスの本質を突いていたといえる。
下請けから脱却するために自社製品化を目指す製造業社にはぜひ、御一考いただきたい事例である。

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