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南充浩 オフィシャルブログ

ダウンファブリックという新素材に感心した話

2019年5月27日 展示会レポート 3

何を書こうかと思っていたら、前回のブログを読んだマサ佐藤氏から、ダウンファブリックについて書いて欲しいとの要望があったので、書いてみる。
それにしても土曜日から暑い。湿度が低いからまだ過ごせているが、これに湿度が加われば当方の嫌いな季節である。
 
今回、ジョンブルの2019秋冬展示会にお邪魔したところ、新素材「ダウンファブリック」が使用されていた。もちろん、ジョンブルが開発した素材ではなく、尾州のテキスタイルコンバーターであるササキセルムが開発したとのことだが、当方は初めて現物を見た。

ダウンファブリックを使ったジョンブルのジャケット


 

ダウンファブリックのチェック柄ジャケット(左)


 
 
ダウンファブリックとはちょっと奇妙な名前だが、羽毛(ダウン)を真ん中に挟み込んでいるかららしい。しかし、通常のダウンジャケットのような生地を想像してはいけない。
ああいう形状ではない。
本当にボンディングの手法でダウンを挟み込んで薄い生地にしている。
ダウンジャケットや中綿のようなモコモコ感はまったくない。
生地はかなり薄い。本当に通常のちょっと厚手のカツラギくらいしかなない。
効果としては保温性、防風性がありストレッチ性もある。
では、ダウンファブリックの正式な解説はないのかとウェブをあさっていたら、繊維ニュースに記事が掲載されていた。
こういうところは流石は繊維ニュースである。
 
ササキセルム/ダウン使いの生地訴求/生地の間に入れた3層構造
http://www.sen-i-news.co.jp/seninews/viewArticle.do?data.articleId=336257&data.newskey=4a49484672ff96cdec18c74422e67eb2&data.offset=0
 

ボトムやスーツ素材の生産を得意とするササキセルム(愛知県一宮市)は19秋冬向けで、生地と生地の間にダウンを入れた「ダウンファブリック」を訴求する。ウール100%の生地に比べ暖かさに優れるという。
キュプラ・ポリエステル・ポリウレタン混の表側と裏側の生地の間に特殊な技術でダウンを吹き付け、ボンディング加工で生地を貼り合わせた3層構造に特徴がある。表側の生地に転写プリントを施し複数の柄を展開する。
 

とのことである。
正直なところ「ダウンファブリック」という名前を聞かなければ、ダウンが挟み込まれているとはまったく想像もできない薄さだった。
本当に、保温性が高いのかどうかはこの季節での展示会なので正直なところわからないが、試着した人に尋ねると、ちょっと汗ばんだとのことなのでそれなりの保温性はあるのではないかと思う。
もし、本当に保温性が高いなら、画期的な生地ではないかと思う。
 
冬の防寒アウターは何のかんのと言いながら分厚い生地が必要になる。
それは冷気を遮断するためである。
生地が分厚くなるとそれだけ重くなる。
 
ダウンジャケットが好まれる理由の一つに、軽さがある。
ダウンジャケットは冷気を遮断するためにダウンを使用するが、そのダウンが軽いから総重量としては通常の服よりも軽くなる。
 
実際のところ少々重い服でも着てみると、重量は意外に感じないものだが、手に持ったりハンガーにかけたりすると、その重量を感じる。
重くて固い生地の防寒アウターは近年敬遠される傾向にある。
 
しかし、ダウンジャケットにも欠点はある。
それはモコモコしてかさばる点だ。
最近だとパッカブルなダウンジャケット類も開発されてきたが、防寒性の高いダウンジャケットはやっぱりモコモコでかさばる。
 
ダウンファブリックの保温性がもしも高いとなると、薄くてかさばらなくてそれでいて保温性のあるアウター、パンツ類ができることになる。
そういう意味ではかなり期待ができる。
 
それにしても生地の開発というのはすごいものだと思う。原材料から工夫した化学的な新素材もあれば、このように昔からある生地の組み合わせを工夫することで作る新素材もある。
化学的な新素材を作るにはそれなりの設備や施設も必要だが、組み合わせの工夫、要は再編集することで新素材を開発するのはそれよりもずっと投資が少なくて済む。
まだまだ工夫の余地はあるものだと感心させられた次第だ。
 
 
ジョンブルのサスペンダー付きジーンズをどうぞ~

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 comment
  • イワセ より: 2019/05/27(月) 8:28 PM

    ササキセルムではなくコゼットの開発ではありませんか?

  • 通りすがり より: 2019/05/28(火) 3:29 AM

    このダウンファブリックの良さは服のデザインを損ないにくい、という点だと思います。
    ダウンにはどうしても偏りを防ぐために縫い目が発生しその縫い目がデザイン性を落としコールドスポットの発生というマイナス面がありましたが生地に内包出来ることでそれなりの断熱性と引き換えにデザインの自由度をあげるものだと思います。
    ただこの手の生地の欠点は重くなること…
    今化繊綿がダウンに限り無く近づいている中でどう必要とされるか楽しみな生地ですね。

  • とおりすがりのオッサン より: 2019/10/19(土) 10:57 AM

    アパレル素人からみたら、ダウン使っても空気の層が殆ど無くなっちゃったら
    保温性もなくなっちゃうんじゃないかと思いますが、その後の評価はどうなってるんでしょう?

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