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南充浩 オフィシャルブログ

素材関連企業もBtoCが必要

2013年1月21日 未分類 0

 ファンシーヤーンの専門商社、丸安毛糸が2月20日から自社内で編物教室を開始する。
専門商社というくらいだから、メーカーではない。糸を作っているわけではない。商社機能である。

http://www.maruyasu-fil.co.jp/article/14689416.html

無題

(同社のイメージ図)

これまでBtoBの活動をされてこられた企業だが、さらに知名度を高め、ニット需要を創造するための取り組みであろう。
実は、昨年11月下旬に、丸安毛糸の大阪展示会を取材と称して訪問した後、ブレストという名の社内吞み会に参加させていただいた。
その際、丸安毛糸の岡崎社長が「もっと知名度を高めて、ニットを好きな人を増やすにはどうすれば良いか」と仰ったので、「自社内にあるニットラボで一般消費者向けのニット教室を始められてはどうですか?」と提案した。

ニット教室やワークショップにはそれなりの需要があると、筆者なりに考えていた。
現に、阪急百貨店うめだ本店の10階では、期間限定ショップが入れ替わり立ち替わりワークショップを開催している。阪神百貨店のレディースジーンズ売り場「ジーンズハウス」だって定期的に各種ワークショップを開催し始めている。
知り合いのデザイナーブランドが卸売りしている小規模専門店も毎月何らかのワークショップを開催しているとも聞く。

そんな事例を挙げながら提案した。
当初、岡崎社長はBtoCへの取り組みについてそれほど乗り気ではなかったような印象をお受けしたが、意見交換するうちにだんだんと乗り気になってこられたように感じた。

しかし、ここまでなら他の原料メーカーや生地産地でも良くある話だ。

その際、乗り気になっておられても後日、伺うと「あれはやっぱり当社では無理」というお返事をいただくことがほとんどである。感触でいうなら8割以上だろう。

そんなわけで、筆者も単なるブレストに終わるだろうと考えていた。

ところが、先日「ニット教室始めます」というお知らせをいただいた。
当然、筆者以外の方々の意見もお聞きになられた上での決断だろう。
それにしても動きが早い。構想わずかに2カ月である。

原料メーカーや生地産地の腰の重さに慣れている筆者は驚いた。
まさに即断即決である。

近年、丸安毛糸は業界の内外から急速に注目を集めている。その一端はこの動きの早さにあるだろう。

原料メーカーや産地企業にワークショップや生地小売りのようなBtoC事業を提案すると難色を示されることが多い。ロットは細かいし、売上高は小規模だからだ。大量受注大量生産の時代を覚えておられる方なら仕方がないとも思う。

けれども、今後何年間か待ち続けて、国内製造業にバブル期や高度経済成長時代のような大量受注が戻ってくるのだろうか。筆者は何十年待っていても戻ってくることはないと考えている。
ならば新しい事業を考えないと企業存続は難しい。

それに産地企業の方々がよく仰るのだが、「○○で有名な××産地だから」というようなことは産地側の幻想だと考えておいた方が実状に沿っているだろう。
消費者はそれほど生地産地に詳しいわけではない。雑誌やマスコミの影響もあるが、デニム生地だって「児島」で製造していると思っている人がほとんどなのである。
児島のメイン産業は洗い加工場で、あとは小規模な縫製工場が残っているに過ぎない。
デニム生地メーカーは皆無だ。

デニム生地メーカーが集積しているのは広島県福山市周辺と岡山県井原市である。
だが、一般消費者は「デニム生地の井原市」と言われてもピンとこない。
そんなものである。

だからこそ、ワークショップでも生地小売りでも、オリジナルグッズのネット通販でも何でも良いから一般消費者に直接接触できるBtoCが原料メーカー、素材関係会社でも必要だと考える。
何も某紡績や某合繊メーカーみたいに意味のわからないイメージだらけのテレビCMを流す必要はさらさらない。

そんなわけで、構想2カ月くらいで動く原料メーカーや産地企業が続々と現れていただきたいと切に願う。

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