統計的なデータをきちんと掲載しておられて、とても参考になるブログがある。

小型量販衣料品店の動向を追う
http://retail-study.cocolog-nifty.com/blog/

である。

今回は、「衣料品の家庭消費規模の推移を見る」という興味深いデータを掲載しておられた。
http://retail-study.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/index.html#entry-75225187

この統計によると

1996年の「衣料品の家庭消費規模(推計)」は約18兆4836億円ありました。しかし、2010年には約8兆9899億円となり、1996年の約49%と半減。

とのことである。

消費不振のほかに、衣料品そのものの単価が下がっているということもあるだろう。
2011年、2012年の統計は出ていないようだが、おそらくこの9兆円弱からさらに低下しているのではないか。
もちろん、個々のブランドを見ると、96年当時と変わらぬ価格を維持していたり政策的に高価格化しているところもある。しかし、衣料品全体の平均価格は年々下落しているし、消費者もあまりこだわらないアイテムに関しては背伸びして高額品を購入することは確実に減っている。
一つには、所得が伸びていないということがあるだろう。また、低価格衣料品が10年前、15年前に比べるとデザイン面でも品質面でもかなり「マシ」になっているということもある。

さてさて、先のブログはかなりデータを詳細に紹介しておられるのだが、衣料品は「他の婦人シャツ」の2・7%増を除くと全般的にかなり低下している。

中でも96年当時と比べて30%以下にまで落ち込んでいる品目が7つもある。
消費規模が70%以上減というとてつもなく厳しい数字である。

個人的に注目したのが「子供セーター」「男子セーター」である。それぞれ28・9%、28・4%である。
それからついでに「婦人セーター」も見ると、子供や男子ほど低くはないがそれでも41・9%である。
ちなみに「男子」というのは「男性」という意味だろう。一方で「婦人」と表記しているのだから、なぜ「男性」表記ではなく「男子」表記にしたのか疑問だ。

一般的に日本では「セーター」は秋冬のアイテムとして認知されている。
欧米だと綿セーターは春夏にも愛用されているらしいが、日本では春先に着用するくらいでゴールデンウイーク以降着用する人はぐっと少なくなる。

この統計は数字だけなので、そこから推測すると①購買枚数が激減している②購入価格が大幅に低下しているという2つの要素が考えられる。

個人的に「セーター」は大好きなので秋冬は常に何らかのセーターを着用しているのだが、まず、「子供セーター」は購入枚数が激減しているのだと思う。この10年で冬にセーターを着用している子供を見かけることがほとんどなくなった。たいがいの子供はフリースかスエットを着用している。
セーターは洗濯が面倒なので保護者が敬遠しておられるのだろう。

男子セーターの減少は両方の要素が当てはまるのではないか。
土日に通行人を眺めていると、休日カジュアルでセーターを着用している男性は以前に比べて減った印象がある。子供と同じでフリース、スエットを着用しているケースが多い。
また、オンタイムの平日はスーツやジャケットの下にVネックの薄手セーターを着ておられる場合が多いが、これはほとんどがユニクロに代表される低価格品であろう。
ユニクロの無地ラムウールセーターは1990円の割には色も品質もマシだ。ダークなベーシックカラーのVネックセーターならこれで十分ではないかと判断する男性が増えても不思議ではない。

一方、女性のセーター姿は以前と変わらずに多いような気がするのだが、半減以下になっているということは、購入単価が下がっているということだろう。
一般的に男性ブランドよりも女性ブランドの方が低価格ブランド数も多く、市場に流通する商品はデザインバリエーションに富んでいる。

この統計だけを見ると、ニットメーカーはかなり厳しい商戦を強いられていると思う。

とくに男性向けの中級~高級価格帯のセーターなんていうものは、趣味性の高い「嗜好品」という位置付けに近づいているのではないだろうか。

あと、30%を下回っていないが、消費規模のあまりの低下に驚いたのは「背広服」である。
いわゆる男性のスーツ類だと思うが、なんと34・8%しかない。
実に65%減である。

クールビズ、ウォームビズが進んだカジュアル化による需要減と、2プライススーツショップや量販店の1万円均一スーツ、1万円以下スーツなど超低価格品の購買数が激増したということだろう。
「ブランド」の付いた中級以上のスーツは完全に「趣味の逸品」となってしまっている。

あと和服も21・0%にまで低下しており、実に79%減である。
これも需要減と同時に価格低下が原因だろう。
スーツの場合は需要減といってもそれでも一定数量は必要とされているわけだが、和服の場合は需要そのものの減少であるわけなので、和服を回復させるためには目先の対処療法としての単価上昇を目指すよりも、需要を増やすこと(要するに着物愛用者を増やすこと)を考えるべきなのではないかと思う。

閑話休題

今後、男性向けセーターもスーツも市場からなくなることはないが、低価格品のみが残って中級~高級品は「趣味の逸品」としてのみほそぼそと生き残るという未来が濃厚なのではないだろうか。
そして、中級以上のセーター、スーツ類は大衆が利用するようなビッグビジネスにはなりえないと想像している。