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南充浩 オフィシャルブログ

ライトオンが増益と減益を定期的に繰り返す理由

2019年4月4日 お買い得品 0

ライトオンの第2四半期決算が発表された。
売上高390億4300万円
営業損失4億1900万円
経常損失3億3600万円
当期損失17億6700万円
と大幅な赤字に陥った。
とくに当期損失が巨額になった理由として「退店店舗及び収益性の厳しい店舗について減損損失を計上 するなど特別損失を1,338百万円計上したこと」を挙げている。
これを受けて、
ライトオンが原点回帰のアメカジ路線 通期の黒字化を目指す
https://www.wwdjapan.com/840007

ライトオン PBを再構築 外部ECモールを複数撤退
https://senken.co.jp/posts/righton-backnumber-ec-190403
 
という記事が掲載されており、いずれも商品政策面での巻き返しに言及している。
もちろん、洋服店ということでは「物」の良し悪しに売れ行きは大きく左右される。
店頭に立つこともあるが、お客の欲しい物がなければ、どんなに親切に対応しようが、どんなにスマイルゼロ円であろうが、物は売れない。
そういう意味では最終的に「物」である。
しかし、今回は商品政策面ではなく、仕組みのことで考えてみたいと思う。
 
通期連結決算では、営業利益1億円の黒字化を目指すと発表しているが、現時点で4億円強の営業赤字であるということは、残り半年で5億円強の利益をたたき出さねばならない。
実現できるかどうかのハードルはかなり高いと言わねばならない。
 
当方は、ライトオンが今後も継続的に成長ないしは、収益体質化するためには、特有なサイクルからの脱却を果たさねばならないと考えている。
ライトオンの決算を見ているとだいたい2~4年黒字や増収が続くと、そのあと2~3年は大幅減収ないし赤字が続く。
これはどういうことかというと、マサ佐藤氏の解説によれば「期末に在庫処分セールをやるかやらないかで黒字になったり赤字になったりしている」という。
在庫処分セールをしなければ黒字ないしは増益が続く。
ただし、その間に不良在庫は積み上がっているというわけである。
しかし、不良在庫を無限に積み上げることは不可能なので、何年間か溜まった不良在庫をどこかの時期に値下げ処分する必要がある。しかもそれは単年度や何か月間かで終わるほどの量ではない。
何年間かかかって溜まった在庫は、いくら値下げ処分してもあらかた捌けるまでにまた長い年月が必要になる。
これが何年間か続く赤字または大幅減益の理由と考えられる。
 
ちょっと過去にさかのぼって見てみよう。
2018年8月期連結は営業利益13億7000万円、経常利益9億6800万円、当期利益2億9800万円と黒字である。ただし単純な比較はできない。なぜなら2018年8月期から連結化しているので、単体決算だった2017年8月期とは別物だからだ。
2017年8月期は巨額赤字である。
営業損失28億9800万円、経常損失28億8800万円、当期損失44億2100万円
だった。
しかし、この前年(2016年8月期)と前々年(2015年8月期)は大幅増益だった。この2期を指して、分析力のないコンサルタントやアナリストはこぞって「ライトオン復活」と持ち上げた。
2016年8月期は
営業利益37億3300万円(61・3%増)
経常利益36億7700万円(61・0%増)
 
 
2015年8月期は
営業利益23億1400万円(32・8%増)
経常利益22億8400万円(38・3%増)
 
と2期連続の大幅増益だった。
 
しかし、2014年8月期と2013年8月期は赤字ではないが大幅減益に終わっている。
2014年8月期は
営業利益17億4300万円(50・7%減)
経常利益16億5200万円(51・7%減)
だし、
2013年8月期は
営業利益35億3300万円(11・4%減)
経常利益34億1700万円(14・8%減)
と2期連続の大幅減益に陥っている。
 
これを店頭と連動して考えてみる。店頭は申し訳ないが当方の記憶でしかない。
2015年8月期と2016年8月期は思わず飛びつきたくなるような大幅な値下げセールはほとんどなかった。なぜなら、この2期にライトオンではほとんど買い物をしなかったからだ。
以前にも書いたことがあるが、丸八真綿とコラボした丸八ダウンというダウンジャケットがあった。定価は13000円~18000円くらいだ。
これくらいの値段のダウンジャケットなら定価で買えよと言われそうだが、2014年や2013年頃のライトオンだと、1月下旬以降になると、ダウンジャケット類が軒並み5900~9800円程度にまで値下げ処分されていた。
その記憶がある当方にとって、いくら、丸八とのコラボだといっても定価でダウンを買いたいという気は起らない。むしろ、また半額、もしくは半額以下にまで下がるものだと思って、ひたすらに待っていた。
しかし、下がらない。
定期的に店頭に立ち寄ると、それほど陳列数量は減っていないのになかなか値下がりしない。
当方も毎日ライトオンの店頭に通うほどには暇ではないから、月に2~3度覗くと、値下がりもしないが数量も減っていないという時期が続いた。
それまでのライトオンなら3月頭に投げ売りセールをする可能性があったので、3月頭に店頭を覗くと丸八ダウンがすっかりなくなっていた。
 

「定価にも関わらずこの短期間で売り切れたのか?しかも2月末に?」

 
 
と驚いたものだったが、答えはその半年後にわかることになる。
どうも倉庫に格納していたようで、2016年秋(要は決算期の変わる9月以降)に再び、見慣れた丸八ダウンが店頭に並んだ。
そして、2016年末から2017年1月にかけて丸八ダウンは半額に値下げされて売りさばかれた。
当方も8900円に値下げされた丸八ダウンを2016年12月下旬にゲットした。
 
これを見ると、2017年8月期の大幅赤字の原因がわかるだろう。
2015・2016年度にため込んだ不良在庫を2017年度で投げ売り処分したからである。
 
また2013年度・2104年度の大幅減益も同様で、このころ当方はライトオンの値下げ品を非常に頻繁に買っていた。下手をするとユニクロよりもライトオンの値下げ品を買う方が多かったほどだ。
その記憶から考えると、この2期連続の大幅減益も不良在庫の投げ売り処分だといえるのではないかと思う。
そして、2019年8月期連結の第2四半期の赤字転落も同じで、昨年夏に売られていたTシャツ類を今、990円に値下げして店頭で販売している。この値引き処分が原因の一つだといえる。
 
ライトオンの商品については置いておく。商品の良し悪しというのは主観も絡んでくる。「ワシはこれがええねん」という人もいれば、同じ商品を指して「なにがええのかさっぱりわからん」という人もいる。だから、商品については最悪水掛け論にしかならない。
商品政策はさておき、ライトオンはこのセール抑制での黒字&増益と投げ売り処分での赤字&減益というこのサイクルからの脱却を図る必要がある。
 
これと同様のことが過去に他社でもあった。
今はなくなってしまった帝人ワオというジーンズメーカーだが、過去に帝人の要職になった人によると、定期的に黒字と赤字を繰り返していたそうだ。
こちらは卸売り型メーカーだが、その理由はライトオンと全く同じで、値引き卸の抑制で黒字化し、貯まった在庫を減損処理して大幅減益ないし赤字に陥っていたとのことだ。
 
このサイクルから脱却するには商品政策もさることながら、商品の管理やマーチャンダイジングの緻密さ、仕入れ数量のバランス管理などが要求される。
そこの精度をいかに高めるかがライトオンの今後の課題だといえる。
果たしてライトオンはそこの精度を高めることができるのかどうか。できなければ競争力の強化は永遠にできない。ぜひとも頑張ってもらいたいと思う。
 
 
ライトオンはAmazonを撤退してしまったのでリーバイスのジーンズを貼り付けておきます

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