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南充浩 オフィシャルブログ

生活必需品とファッション衣料の差

2013年1月7日 未分類 2

 先日、こんな記事を読んだ。

高所得者層ほどユニクロ好きが多い理由
http://president.jp/articles/-/8231

ユニクロの利用率は各層を問わず、他のファストファッションブランドに比べ、50%前後と圧倒的に利用率が高い。意外にも、1000万円以上の所得があるマル金男性層でもユニクロが利用度はダントツに高い。2010年には55%にも迫る勢いだ。マル金はユニクロが好きなのか。

との疑問から記事が始まる。

比較対象はしまむらとH&M。

記事中のグラフでは、1000万円以上の所得がある男性はしまむらの利用率は低調、H&Mの利用率は急上昇している。
しかし、ここは注意が必要である。
横軸が2006年~2012年までの年数の目盛、縦軸は各層の利用率の目盛である。
横軸は3ブランドとも共通なので流し見してもかまわない。
問題は縦軸である。
ユニクロは10%ごとの目盛であるのに対して、しまむらとH&Mは1%ごとの目盛である。
ユニクロの最大利用率の値は60%であるが、しまむらの最大利用率は8%、H&Mの最大利用率は6%である。
ケタが1ケタちがう。

H&Mのグラフが急上昇しているといっても、3%だったものが6%になったにすぎない。
成長率でいうなら倍増ということになるが、利用率6%ではほとんど利用されていないに等しい。

無題

(プレジデントオンラインで掲載されていた3ブランドの利用率グラフ)

ユニクロはすでに2006年に30数%の利用率があり、2010年には利用率60%に近づく。
2011年は40%に下がるが、2012年は少し増えて50%になっている。
そしてこれは何もお金持ちだけのことではない。全層に渡ってのユニクロの利用率はしまむらとH&Mよりも10倍大きいのである。

男性の利用率だけを見るならユニクロとしまむら、H&Mを比較すること自体がナンセンスだということになる。

それにしてもどうしてユニクロの男性利用率はこれほど高いのか。
その疑問に対して元メンズクラブ編集長の林信朗氏はこう答えておられる。

「要するに、ユニクロはファッションではないんですよ」

「ユニクロは基礎生活材なんです。つまり、ヒートテックやウルトラライトダウンのような防寒着であったり、下着であったりするわけです。特に高所得者層はそれらを人に見せたり自分で味わったりする『ファッション』とは捉えていないと思うんです」

とのことであり、生活必需品であるから男性の全層に渡って利用率が高いというわけである。
さすがは慧眼である。

ユニクロは現在でも生活必需品としての要素が色濃いブランドだと感じる。
ファッションを切り口としたブランドではない。と言い切ってしまおうか。

昨年のクリスマス前、午後2時から5時頃まで「あべのマーケットプレイス キューズモール」を一通り見て回った。
ここにはユニクロ以外にライトオン、グローバルワーク、チャオパニックティピー、ウィゴーなど低価格ブランドがそろっているので比較対象しやすくてよく利用する。

そのとき、ユニクロは何か安売りの目玉商品があったのか、平日午後だというのにレジにはずっと20人ほどの行列ができている。その行列を見ていると、明らかに年金受給者と見受けられるお年寄りがかなりの割合で含まれていた。

一方、ライトオン、グローバルワーク、チャオパニックティピー、ウィゴーを見ると、お年寄りはほとんど入店すらしていない。最年長者でも40代であろう。

ユニクロはお年寄りの支持率が他の低価格ブランドに比べて断トツに高いのではないかと感じる。
近隣のロードサイドのユニクロにも相当数お年寄りが来店している。
それだけ知名度が高いのだと思うが、他の要素としては、先ほど林氏が述べておられるように「生活必需品」としての性質が色濃いからだと思う。

今回、比較対象されたしまむらやH&Mは「安いファッション」と捉えられている。

「しまむらやH&Mは今瞬間的に流行のファッションを安く買う、という感覚ですよね。だからしまむらは特に低所得者層に受ける。彼らはしまむらをファッションとして捉えていると思います。でもH&Mはどうでしょう。高所得者層がそこへ行くのは娘や妻といった家族での買い物もかなり含まれているような気がしますね」

林氏は文中でこう述べられている。
そして、ライトオン、グローバルワーク、チャオパニックティピー、ウィゴーなども同様に「ファッション」として捉えられていると感じる。生活必需品と捉えている人はあまりいないだろう。

生活必需品とファッション衣料品ではおのずとその利用客数は異なる。
「寒くなったから保温肌着を買おう」「出張先で急に靴下が破れたので代わりを安く買おう」「突然雨が降り出したので安い傘を買おう」「夕方から突然冷え込んできたので、急きょニットや防寒アウターを買う」
などというのが生活必需品ブランドの利用法である。
そして、高所得者はまさにユニクロをそのように利用している人が多い。

今の衣料品業界の齟齬は、アパレル各社がユニクロを「ファッション」だと捉えていることも原因の一つではないのか。
だから百貨店向けアパレルが「ユニクロで売れたアレと同じ素材を売ってほしい」とか「ユニクロで売れたアレと同じデザインで売りたい」などという馬鹿な要望が出てくるのではないのか。

土台、百貨店向けアパレルとユニクロでは店頭価格も違うし、利用客数も利用客層も異なる。
そこに向けてユニクロと同じ商品を売ったところで、ユニクロと同じ枚数が売れるはずはない。

百貨店向けアパレルがユニクロと同じくらいの枚数を販売したければ、店頭価格を下げて「実用衣料品」の性質をもっと色濃く打ち出す必要があるが、はたしてそんな物を消費者が望んでいるか、と言われると極めて疑問である。

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 comment
  • ブティック経営 より: 2021/04/24(土) 5:59 PM

    ユニクロはファッションではありません、下着屋さんです、あれをファッションと言う人はファッションセンスがない人です。

  • kimgonwo より: 2021/04/26(月) 3:46 PM

    そういえば 大阪南港に安藤忠雄さんがデザインした社屋のアパレル会社の人が
    「ファストリはアパレルメーカではありません。いえ、認めません。」
    とフリース馬鹿売れの時に言ってたな
    あの会社どうなったのかな?

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