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南充浩 オフィシャルブログ

業界向け大型展示会出展よりもポップアップショップ開催の方が効率的?

2019年4月3日 トレンド 0

ちょっと告知も兼ねてしまうので恐縮だが、昨日4月2日から、梅田ロフトでテキスタイル・マルシェを開催している。
16日までで15日間という長丁場になる。
梅田ロフトでの開催も、2週間の長期開催も初めてのことになる。
https://ameblo.jp/textile-marche/entry-12449944643.html
4月2日(火)~4月16日(火)
     営業時間:11:00~21:00
     最終日16日(火)のみ18時閉場
梅田ロフト 1階ロフトマーケット
      大阪市北区茶屋町16-7 (06-6359-0111)
 
出店者は大江(丹後)、カツミ産業(大阪)、アイピーテキスタイル(奈良)、林与(滋賀)、YS企画(京都)、宏和産業(大阪)、ヨシダ(大阪)、棉生テキスタイル(京都)、アートファイバーエンド(京都)、奈良靴下The Pair(奈良)、ウッディパレス(大阪)、gonomi(京都)

 
という具合である。
今回は、百貨店ではなく出店者が付きっ切りである必要がないので、交代制で立つことになっている。
 
で、初日が終わったのだが、会場で出店者からいろいろと話を聞いていると、

「いろいろとBtoB向けの大型展示会へこれまで出展してきたが、名刺交換だけで終わってしまって、受注に結び付くことが少なかった。最近は特にその傾向が加速している」

という意見が複数からあった。
ちょうど、少し前にもアパレル業界の大型展示会IFFの開催が中止となっており、IFFに限らず、従来の卸売り型展示会というのは全般的に成立しにくくなっているといえる。
 
少し前にもこんなニュースがあった。
扱っている商品も違うし開催場所も企業規模も異なるが。
来場者が激減 スイスで開催中の世界最大の時計見本市「バーゼル・ワールド」
https://www.wwdjapan.com/833124
 

昨年12月に同見本市からの撤退を表明した、世界最大の時計企業スウォッチ グループ(SWATCH GROUP)の影響。
ニック・ハイエック(Nick Hayek)=スウォッチ グループ最高経営責任者 (CEO)は、出展中止の理由を「SNSをはじめとするネットメディアの普及により、見本市出展にかつてのようなPR効果はなくなった」と述べ、グループは現在、チューリヒで小売店向けの展示会を開催中。
 

とのことで、先ごろのIFFの開催中止と、原因はほぼ同じであると感じた。
 
テキスタイル・マルシェ出店者の意見も「出展にかつてのような効果がなくなった」というところは共通している。
 
マルシェ出店者は、ではどうしているのかというと、百貨店やファッションビル、ショッピングセンターなどのポップアップショップに出店することが増えている。
10年ぐらい前までは、ポップアップショップというと、小規模な製品ブランドや個性派ブランドがほとんどだったが、今は卸売り型の大型展示会に見切りをつけた素材業者や加工場が自社ブランド製品と技術を宣伝するために出店するケースが増えている。
 
小規模ブランドや個性派ブランドからするとポップアップショップで大きな利益を稼ぐことは難しい。よほどの人気ブランドでない限りは、1週間で500万円以上はなかなか売れない。
百貨店の場合だと、場所代として売上高の30~40%が取られるから、仮に1週間で200万円売れたとしても、手元に残るのは140~120万円くらいになる。
そこから人件費、交通費、宿泊費が引かれる。
さらに、そこで販売するために作った製品の製造費も引かなくてはならないから、利益として残るのは50万円前後というのが標準的ではないかと思う。
ポップアップの場合、ブランド側の人間が店頭に立つのと、まったく立たないのとでは売れ行きが大きく変わるから、立たなければ時間を取られることはないが売上高はさらに低くなってしまう。ある程度の売上高を獲得したければ、だれかブランド側の人間が毎日立つ必要がある。
そうなると、8時間なり7時間くらいは売り場に労力を取られるから、ポップアップショップを頻繁に開催することはよほどのやり方を工夫しないと難しくなる。
ブランドとしてポップアップだけで大きな利益を上げることは基本的には期待できない。
だから宣伝広告のためということになる。
 
通常の宣伝広告は空振りすることもあるから、金を払っただけで終わることも珍しくない。ところがポップアップは1日に何万円か何千円かくらいは売れるから、支払ったコストの何分の1かでも回収できる宣伝広告ということになる。
 
これは、素材業者や加工業者でも同様だが、それでも現在の受注に結び付かない業界向け大型展示会への出展よりは、はるかに効果があると見ている場合が多い。
葉書きやウェブで招待しておけば、卸先業者も売り場に来てくれる場合があるし、苦し紛れで作った自社製品ブランドもいくつかは売れることもあるから、幾分かでも現金回収ができる。
卸売り型展示会に絶望している業者からすると、卸売り型展示会は出展費用・什器レンタル代・サンプル製作料・人件費・交通費・宿泊費も含めると、だいたい1回出展するのに100万円は軽く飛んでしまうが、受注はゼロの場合が珍しくないという。
ポップアップショップの場合は、手数料は売上高の何割かということになっているから、出店費用の先払いがない上に、什器類はあらかたビル側が無料で貸してくれる。サンプル製作料・人件費・出張宿泊費は必要であることは変わらないが、商品が売れれば幾分か現金回収ができる。
だから、卸売り型展示会に絶望している製造加工業者は、ポップアップショップの方が「割安」だという。
 
こういう見方が徐々にではあるが、製造加工業者間に増えてきていると感じられるから、今後ますます卸売り型の大型展示会というのは規模を縮小するのではないかと思ってしまう。
令和の時代には、もしかすると、繊維・ファッション関連の卸売り型大型展示会というのはほとんどなくなってしまう可能性が低くないのではないだろうか。
 
 
 
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