MENU

南充浩 オフィシャルブログ

アメリカンラグシーが日本で復活するが、その体制に疑問

2019年3月6日 企業研究 0

昨年に全店を閉店したアメリカンラグシーが日本で復活する。
「アメリカンラグ シー」が日本で復活 伊藤忠と提携 コロネットが運営
https://www.wwdjapan.com/821513

「アメリカンラグ シー(AMERICAN RAG CIE)」が日本に復活する。1984年に創業し、85年にラ・ブレア通りにストアを構えたロサンゼルス発のライフスタイル提案型セレクトショップで、マーク・ワーツ(Mark Werts)創業者兼CEOが率いる米インダストリーワーツ社と伊藤忠商事が9月1日に日本におけるマスターライセンシー契約を、コロネットが独占のサブライセンシー契約を締結。

とのことである。
ちなみに昨年夏の撤退はこんな具合だった。
アメリカン ラグ シー ジャパンが事業終了 20年の歴史に幕
https://www.wwdjapan.com/598540

サザビーリーグの関係会社のアメリカン ラグ シー ジャパン(AMERICAN RAG CIE JAPAN)が今年9月に事業を終了する。同社が運営するセレクトショップ、アメリカン ラグ シーは2018年春夏まで営業し、8月中旬をめどに全店を閉店する見通し。
サザビーリーグでの事業は9月末で終了するが、本国インダストリーズ・ワーツは、オンラインビジネスを中心とした事業の継続を検討しており、19年にあらためて店舗展開することも視野に入れている。

 
という具合で、サザビーリーグが80%を出資して98年に上陸したショップだったが、2008年に売上高のピークを迎えてからはその後10年間で店舗数を減らして縮小し続けてきて、昨年夏の撤退ということになった。
 
記事の画像を見た印象では、今回再スタートする店舗はアメリカ本国に近い形になるのではないかと思う。しかし、本国に忠実にすれば、多店舗展開には向かないだろう。
 

われわれがロサンゼルスのラ・ブレア通りの店で常時8万SKUもの商品をそろえている
 

とマーク・ワーツ創業者兼CEOは答えているが、SKUが多すぎて非効率極まりない品ぞろえをしている。もちろん、これが「面白い」ということだとは理解しているが、多店舗化するにはある程度平準化しなくてはならない。また、各店を管理・構築・維持できる人員が複数必要となるが、その育成が難しい。
衣料品とは異なるが、圧縮陳列の宝探しで名を馳せたドン・キホーテだが、今でこそ大規模チェーン店となっているが、創業者の安田隆夫氏の著書「安売り王一代」によると、マニュアルを作って部下にそれをやらせてもまったく再現できなかったそうである。そこで自身のマニュアルを押し付けるのではなく、部下に任せて何度も失敗させて、ようやくその陳列のコツを部下が飲み込めるようになったとのことで、定説に沿った店作りが売り物ならマニュアルを覚えさせればすぐに会得できるが、定説を無視した圧縮陳列は「コツ」が必要だからマニュアルを覚えさせるだけでは体得できない。
この8万SKUなんていうのはそれと同じではないかと思う。また単に在庫管理が杜撰なだけではないかとも思うが。(笑)
8万SKUの商品を陳列するなんていうのは、およそ定説に反しているから、それを効果的に陳列するには「コツ」が必要になる。その「コツ」を複数の人間に体得させなければチェーン店化は事実上不可能である。
だからこそ、

当面はECを中心に展開し将来的には、東京、大阪、福岡など、大都市に4店舗程度を出店したい考え。

とあり、4店舗程度が限界だろうと思う。
 
それにしても今回の提携は伊藤忠商事のマスターライセンシー契約はまだしも、運営がコロネットというところに疑問を感じる。
インポートアパレルとしては歴史の長いコロネットだが、店舗運営やEC運営はそれほど得意ではない。むしろ、それらをアウトソーシングしてきたというのが実態である。記事では「運営」としか書かれておらず、何の「運営」なのかがわからないが、店舗運営やEC運営に関してであればコロネットにそのノウハウはないと考えられる。
逆にどうして、前回のラグシーがサザビーリーグだったのかというと、店舗運営のノウハウが豊富にあったからだろう。
ただし、サザビーリーグは疑PAによるチェーン店化をしたため、本国のラグシーとはまったく似ても似つかないショップとなっていたが、それはそれで日本の消費者の嗜好には合っており、だからこそ2008年に最盛期を迎えることができたといえる。
 
それにしても、8万SKUもある個性的なショップ(笑)は多店舗化には基本的には向いていない。強烈な個性のあるショップは平準化するとその魅力を失う可能性が高い。また多店舗化することで希少性はなくなりどこにでもあるショップというイメージにもなってしまう。
前回のブログで書いたメゾンドリーファーも同様ではないかと思う。1店舗のときにはその店舗だけで年間10億円弱もの売上高があった。
しかし、「梨花さんの魅力」という属人的な要因を複製することは難しいから多店舗化することには向いていない。だからこそ2015年で離脱したブランド統括は多店舗化に強く反対していたのではないかと思う。
また、かつては希少性がウケていたスターバックスは今では、マクドナルド並みにどこにでもある店舗になってしまっている。
 
長くなったが、結局何が言いたいのかというと、今回の布陣では新生ラグシーが日本でビッグビジネスに育つのは難しいのではないかと思う。
コロネットの運営に対しては不安しかなく、サザビーリーグがロンハーマンを育てたようなことをできないのではないかと当方は見ている。
コロネットには店舗運営、EC運営のノウハウはあまりないし、さらにいえばイメージ戦略に長けているわけでもない。
一体何の運営を担当するのか、本当に謎でしかない。
コロネットがよほどの人材を獲得していれば話は別だが。
 
 
 
ドン・キホーテ創業者の「安売り王一代」をどうぞ~

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ