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南充浩 オフィシャルブログ

未来は予測できないから確率の高い方を選んで組み立てるべき

2019年2月26日 考察 0

ちょっと気温の話でも。
2月18日くらいからめっきり気温が上がってきて、ここ2~3日の昼間はダウンジャケットを着ていたら暑いくらいである。(あくまでも大阪・東京基準。東北・北海道は除く)
この分だと、今年も去年に続いて3月末には桜が散ってしまって、葉桜の中での入社式・入学式になるのではないかと思う。(あくまでも大阪・東京基準)
こんな話をしたら、10人中4人くらいからは「去年の3月の気温なんて覚えていない」という答えが返ってくる。
人間の記憶なんてそんな程度のものでしかない。
 
2018年秋冬は概して気温が高く、暖冬に終わったといえるだろう。
季節の区切りでいうと、2018年9月から2019年2月末までを2018年秋冬だととらえていて、仮に3月に寒波が来たとしても、暖冬だったという結果は変わらないと思う。
2月と3月の気温は本当にその年によって異なっている。
例えば2011年3月は寒かった。どうしてそんなことを覚えているかというと、東日本大震災があったからで、滅多に東京出張しない当方が、なぜかたまたま3月11日に東京出張していて、新幹線も地下鉄も止まってしまったので大阪に帰れなくなったからだ。
あの時は寒かった。ウルトラライトダウンの前身であるユニクロのライトダウンを着て、東京の街を徘徊していた。
それに比べると2018年3月は暖かく、3月下旬に桜が満開になっていたし、3月末の昼間は汗ばむほど気温が高かった。当方の高血圧がまた進んだのかと思ったが、どうやら本当に気温が高かったようだ。
 
さて、2017年秋冬は防寒アウターがよく消化できた年だった。プロパーで売れたかどうかはブランドによって異なるだろうが、2018年1月・2月にはバーゲン価格でよく売れた。
理由は寒かったからだ。
気温の推移をおさらいしてみる。9月が暑く、10月10日ごろまで暑かったのは、毎年同じ傾向で、2018年秋冬と変わらない。
しかし、これまでの年は11月には気温が下がるし、遅くても12月には気温が下がった。俗に12月中旬から下旬にかけて急激に気温が下がるので「クリスマス寒波」なんていう呼び名もある。
2018秋冬シーズンにはこれがなかった。
11月も気温が高いまま推移し、12月に入っても気温は高く、27日ごろにようやく気温が下がったがそれでも例年に比べると高めだったと感じる。もちろん、寒い日が1日か2日はあったが。
 
2017秋冬シーズンは、2018年1月には記録的な大寒波がやってきて、2月も寒いまま推移した。だから防寒アウターの消化が進んだ。だが、2月下旬に急激に気温が上がり3月に桜が満開となった。
ところが、2018年秋冬シーズンは、年が明けた1月・2月にも大寒波は来ず、今気温の上昇を迎えている。だから防寒アウターの消化が進まない。
 
もちろん、ファッションやブランド力で売っているところはその限りではないが、ファッションやブランド力で売れているのは一握りにすぎないから、一部の例外を除いては防寒アウターがダブついている。
2017秋冬シーズンと2018秋冬シーズンの違いは、11月と12月の気温もさることながら、年明けに大寒波が来たかそうでないかによるところが大きいと考えられる。そして昨年1月・2月の大寒波は「歴史的」とか「近年まれに見る」という称号が得られるほどであり、これが毎年訪れるとは考えにくい。毎年訪れるなら「歴史的」でもなんでもないからだ。
にもかかわらず
 

2018年秋冬は暖冬でアウターが売れずに各社大苦戦した。
自分も2017年にアウターが足りなくなり2018年秋冬に向けて仕込み過ぎて失敗した。
 

なんて書いている人もいる。
 
基本的に、冬は暖冬、夏は猛暑というのが我が国の最近続く気温の推移である。
当然、何年かに一度例外的な寒い冬、涼しい夏が訪れる程度である。冷夏は10年に1度あるかないかだろうし、大寒波襲来も10年に一度程度だろう。
だとすると、それが実現する可能性は極めて低い。未来のことは簡単に予測できないということが言いたいらしいが、予測できないからこそ、確率的に高い方を選ぶのが常道である。
10年に1度程度の大寒波とか冷夏を期待して商材を揃えていてはそりゃ在庫がダブついて当たり前である。確率を無視して昨年の記憶や情緒に引きずられすぎるからこういう失敗を繰り返すのであり、それを繰り返してきたのがアパレル業界だといえる。
大寒波という僥倖を期待して防寒アウターを増やして売上増を企てるなんて、非効率もよいところである。当たる確率の低い博打に大金を賭けるようなものでしかない。
例えば、某ブランドは「うちの背景にある工場は防寒アウターの縫製が苦手だから」という理由で、防寒アウターは初回納品分しか作らず、その代わりに得意とする長袖Tシャツ、トレーナー、スエットパーカを強化して売り出したところ、2018秋冬シーズンでも売上高を伸ばすことに成功している。
こちらのプランニングの方がよほどまともで、これこそが企画やマーチャンダイザーの仕事だといえる。
体感と情緒と気分でのディレクションや、「冬は防寒アウター」というステレオタイプの固定概念にしがみついたマーチャンダイジングなんて百害あって一利なしである。
未来予測は不確実だからこそ、確率の高い方を選ぶべきである。
冷夏と大寒波なんていう僥倖は絶対に期待するべきではない。
 
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c6
 
そんな在庫消化の値下げ防寒アウターをどうぞ~

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