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南充浩 オフィシャルブログ

ブランドと製造加工業者の溝を埋めるためには・・・・?

2019年2月20日 産地 0

個人的には、ファッションのイシキタカイ系が主張する「産地を守れ」とか「製造加工業を守れ」っていうのはなんだか違う気がして、ずっと距離を置いている。
下手をすると彼らの主張だと、国がもっと手厚く保護をすべきだというようにも見えてしまうが、実際、繊維の製造加工業に関してはそれなりに行政は助成金やら補助金でサポートしている。
もちろん、それを受けられていない事業者もあるが、そうではなくて最早、年金や定期ボーナスのようにそれらを受け取っている事業者も珍しくなく、それがために逆に競争力・開発力を弱めている事業者もいる。
ある産地と直接取引をしている業者によると、その産地は長らく何十年間もあった手厚い補助金が近々終了するらしい。その業者によると「何十年間にも渡る補助金生活に慣れきっていて、終了と同時に廃業する業者が多数出てくるだろう」という。
多少特殊な事情のある産地ではあるが、これなんかは手厚い保護政策の完全なる失敗例だといえる。
最近は製造加工業者の発信も増えてきた。
まだまだ「ウェブサイトそれ何?」っていう業者も多いが、ウェブを完備していたり、SNSで定期的に発信する業者はこの10年間で相当増えたと感じる。
しかし、その多くが「嘆き節」であるところはちょっと共感できずに見ている。当方も基本はネガティブな性格だし、前向きな人間ではない。むしろ「常に前向きを演じている」ような人間はウザいから嫌いである。
とはいえ、製造加工業者が「嘆いてばかり」いるのはどうかと思うし、ファッション業界やブランドの他責にするばかりなのもどうかと思う。
嘆いていても業界の構造が急変することはないし、ましてやガチャマン時代に戻って繊維の製造加工業がウハウハなんていう時代は二度と来ないのだから、啓蒙活動はしつつも、今の業界から選ばれる「何か」を備える必要があると思っている。
そんな中で、ずっと注目していて、製造とマーケティングのバランスの良さ、そして製造業ならではの豊富な知識に一目置いているのが、このブログである。
https://www.ulcloworks.net/pages/1984264/blog
製造加工業に携わる人ならではの現実と、その現実に冷静に対処する様が描かれていて、いつも勉強になる。
おそらく、古いタイプの製造加工業者はこの人の主張に対して反発を覚えるのではないかと思うが、この現実的な視点を持ちえないと「単なる嘆き節」や「爺の昔は良かった話」で終わってしまう。
製造加工業者だけではなく、衣料品やファッションに興味のある人も読んでおいて損はない。製造をある程度は理解しないとZOZOのプライベートブランドのように大失敗してしまうからだ。
 
毎回のエントリーは興味深いものばかりである。
もちろん、これまで工場がブランド側から不当な扱いを受けてきた歴史はある。
「量産するよ」という口約束をしておいて、サンプルだけ作らせて本番の量産は低価格の中国や東南アジアで作ってしまうなんてことは日常茶飯事の業界だった。
また、「うちの特注を作ってくれ」と頼んでおきながら、作り終えたのに引き取らないとか、そんなことも日常茶飯事の業界だった。
それでも、過去の恨みをいつまでも抱えていても何かが好転するわけでもない。せいぜいそのブランドに何かの拍子に報復できるくらいである。
https://www.ulcloworks.net/posts/5747936
 

工場さんたちがアパレルメーカーさんの業務見学や販売体験をする事ってないし。将来自社を繁栄させる気があればこの発想になっても良い筈だなと。

 

工場さんたちも事情がわかってる場合もあるけど、理解はしてないと思う。なんでロット割れのオーダーになっちゃうのか、短納期になっちゃうのか、工賃を下げてほしいと思うのか。(展示会だけでオーダーがまとまらない時に地方回って受注かき集める巡業に出たり、大きい口座からの別注を引きつけたりとメーカーさんも発注条件を満たすために努力してる) 結果だけみたら工場側からしたら、アパレルメーカーの努力不足で終わっちゃう内容でも、体験してみたら一概にそうとも言い切れないかも、とか考えてもらえるきっかけを作る必要があるのではないかと。

 
例えば、小規模ブランドメーカーの営業担当者の知り合いが何人かいるが、彼らは毎週日本全国のブティックを巡回して少量ずつのオーダーを取ってきている。本当に旅芸人みたいになっている人もいる。
町場のブティックや個人経営の小規模ショップなんて売れ行きの苦しいところばかりだから、どうしてもオーダーは少量になってしまう。
メーカー側の努力が一概に足りなかったわけではないという場合も多い。そんな状況を一度やんわりとでもよいから製造加工業者が体験してみるのも悪くないだろう。
また、売り場に対してもそうだ。

工場さんたちって、自分が関わった仕事の最終商品を売り場に行って、どんなお客さんたちが買っているかまで見てる人は(いるだろうけど)そんなにいない。見てたとしても、生地屋なら生地の良し悪しとか、縫製工場なら縫製の良し悪しとか、技術的な側面に意識が行ってる。それはそれで見るのは良いんだけど、服の構成要素の1パーツだけ取り上げて『売れる』とか『工賃もっともらえる』とかそういう結論って出せない。その服の総合的な仕上がりとか、ブランドの全体像とか、お店の感じとか、そこに集まってくるお客さんとか、販売員さんの接客の仕方とか、木だけじゃなくて森も見ようねって話。
その上で、お客さんの戦ってるフィールドを知らないと、受けてる仕事だけ取り上げて「やれ◯◯は工賃が安い」だの「◯◯は売れてる」だの、聞こえてくる噂だけで判断して解った気になっちゃってないか?というのが心配な部分だ。

とあるが、実際に産地の人たちと商業施設見学をしたことが何度かあるが、売っている商品の中でも自分が携わっている分野、自分の同業他社の商品にしか興味を示さない人が多い。
さらにはここに書かれているように、商品の中でもディテールのみを過剰に見ている。
やれ「ボタンが安物っぽい」だとか、やれ「脇のナンタラ縫いが甘い」だとか、そんなことに終始する。
しかし、商品はボタンが良いから買われるものではないし、脇のナンタラ縫いが素晴らしいから買われるわけでもない。
商品全体のデザイン、バランス、シルエット、価格、売り場の雰囲気、すべてそろって買われるのだから、ボタンとか脇のナンタラ縫いだとかだけでは判断ができない。
製造加工業者が、そのあたりもトータルに見られるようになると何かが変わるのではないかと期待しているのだが、当方も甘いだろうか。(笑)
そんなわけで今回は山本晴邦さん(紹介したブログを書いている人)特集をしてみた。(笑)
 
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c6

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