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南充浩 オフィシャルブログ

機械と副資材の問題も忘れてはいけない

2012年11月30日 未分類 0

 最近、若手の独立系デザイナーが自主的に国内素材メーカーの生地を使うことが増えた。
生地問屋を経由せずに各産地の○○織布だとか○○ニットだとかの生地工場から直接購入している場合も多い。
これには生地メーカー側の姿勢の変化も大いに関係しているだろう。昔に比べて小ロットでも対応してくれる機業が増えた。

国内製造業の危機が叫ばれて久しく、実際、国内製造業は限りなく消滅の危機に瀕しているが、幾分明るい兆しだとも感じられる。

しかし、実際には生地メーカーの存亡以外にも、多くの段階で国内製造業は相変わらず危機に瀕している。

一つには機械の問題だ。
多くの生地メーカーが使用している織機や編み機は旧式の物が多く、機械メーカーももう部品を製造していない。このため、補修・メンテナンスには一苦労する。
中には機械メーカーそのものが倒産・廃業していることもある。

そのため、廃業した他の生地メーカーから織機や編み機を引き取って、修理用のパーツとして保管していることも多いと聞く。

次に副資材の問題だ。
衣料品や雑貨の製造には、芯地や付属品などの副資材が不可欠である。
しかし、この副資材の製造先も廃業・倒産している場合が多いようだ。

先日、帽子ブランド「ポレポレ」の展示会にお邪魔した。
こんな物作りをされている。

http://www.polepole.tv

http://www.polepoleshop.com/

帽子以外に、薄い石膏で造形した型が展示されていたのだが、これを作るのにはバクラムという芯地が必要だという。バクラムは木の皮を細く裂いて織った物だそうだ。
柳の木の皮が最高だという。
この柳の木のバクラムを作っていたのが東北地方の職人だったが、高齢のために廃業されたらしい。
ポレポレさんが知る限り、もう国内でこのバクラムを作っている職人はいないとのことだ。

だから、何年分ものバクラムを買い貯めたそうなのだが、今のストックがなくなると次に購入できる先がもうない。

IMG_1100

(固めたバクラム)

おそらく何らかの代替品を使うことになるのだろうが、国内製造業はジワジワと消滅しつつあるのだと感じずにはいられない。

これ以外だと再三指摘されているが、縫製業の問題もある。
国内縫製工場の多くは、高齢化した日本人と若いアジアからの研修生で成り立っている。
メイドインジャパンと表示されていても実状は「メイドバイチャイニーズ」だったり「メイドバイベトナム人」だったりすることがほとんどである。

こう見てくると、国内繊維製造業に明るい兆しなどとはとても思えない。
もちろんムードを盛り上げることは大切だが、国内生地メーカーのことだけではなく、機械や副資材の状況も認識しないと地に足のつかないカラ騒ぎで終わってしまう恐れがある。

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