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南充浩 オフィシャルブログ

大寒波という「僥倖」に期待するな! 防寒衣類は作りすぎるな!

2019年1月15日 企業研究 0

一部には例外はあるものの、2018年秋冬の商戦は暖冬の影響で、概ね芳しくなかったようだ。
アパレルでは、2018年秋冬というと2018年秋から2019年2月ごろまでを指す場合が多い。
気温の変化を思い出してみよう。当方の体感気温は大阪市内を基準としている。天気予報を見る限りにおいては東京も名古屋も大阪とさほど気温の推移に大差がなかったように感じる。
9月はいつものごとく高気温が続いた。10月に入っても高気温が続き、10月10日ごろには最高気温30度越えの日があった。一昨年(2017年)も10月10日ごろに30度越えの日があったが、それを過ぎると急速に涼しくなって11月はけっこう涼しかったと記憶している。
しかし、2018年は10月10日を過ぎても高気温が続き、11月になっても高気温だった。さすがに長袖を羽織ってはいたが、防寒衣料は着た覚えがない。
2017年12月はほぼ平年通りの気温でときどき暖かい日があったと記憶している。2017年年末は暖かい日が続いて、年末大掃除で窓ふきをしていたら汗ばんだ記憶がある。
2018年が異例だったのは、11月はまだしも12月に入っても高気温が続き、たしか12月20日ごろに6月並みの高気温の日があった。あの日は半袖Tシャツ一枚で出歩きたかったが、さすがに12月下旬にその出で立ちはおかしいだろうと思って、半袖Tシャツの上から綿のカーディガンを羽織っていた。がらにもなく痩せ我慢をしたわけである。
2018年の12月がようやく寒くなったのは年の瀬が押し迫った26日ごろからだった。
2018年1月と2月は突然異例の大寒波が襲来した。だから2017年秋冬はこの大寒波のおかげで最終的に防寒衣類が好調に消化できた。
かわって、2019年1月だが、たしかに寒いことは寒いが、昨年の大寒波とは比べ物にならない。まだ年始から2週間しか経過していないが、ちょくちょくと最高気温12~14度の暖かい日が挟まっているし、来週の予報も最高気温は10度越えなのでそれほど厳しい寒波ではない。
1月の21日までの気温を見ても、それほど防寒衣類は消化しないだろうと思う。
 
さて、代表的なアパレルの決算をいくつか例示してみる。
 

ファストリ 3年ぶり減益 昨年9~11月、防寒衣料が苦戦
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO39889030Q9A110C1TJ2000/

 
オンワード/3~11月、秋冬物苦戦し営業利益29.8%減

オンワード/3~11月、秋冬物苦戦し営業利益29.8%減


 
という具合である。もちろん好調だったアパレルもあるが、それは例外だといえる。
 
Tシャツアパレルとかジーンズアパレルなどを除くと、多くの総合アパレルは、単価の高い防寒衣類を販売する秋冬シーズンの方が、売上高が高くなる。
買い上げ客数が同じでも客単価が高くなるから当たり前だ。
Tシャツやポロシャツはよほどの「何か」がないと高値では売れないし、高値で売ったとしてもせいぜい1万円くらいである。
一方、冬の防寒衣類は、例えばダウンジャケットだとユニクロでさえウルトラライトダウンを除けば、1万円を越える。通常のアパレルブランドなら3万円くらいはする。
となると、単純に比較しても客単価は3倍になるから、ユニクロに限らず多くのアパレルは秋冬偏重にならざるを得ない。
それにアパレル人は、ファッションが好きだから、Tシャツ1枚でないと我慢できない夏よりも重ね着ができる秋冬の方が力が入る。おのずと企画や販売にも力が入る。
当方も秋冬の商品、とくにコート類は大好きで、見ているだけでもけっこう気分がいい。(ちょっと変態テイスト)
 
しかし、防寒衣類は売れれば大きいが、売れないとダメージも大きい。しかも気温に左右される。気温も関係なしに「先物買い」する人というのは、恐らく変態的ファッションマニアでしかなく、その変態の数は著しく少ない。
少数の変態に向けた変態ブランドはそれ用に商品を作ればよいと思うが、そうではなく、マスを狙いたいのなら変態の嗜好に合わせるべきではない。
ぶっちゃけていうと、「防寒衣類は博打」の要素が強い。そして、2018年1月~2月のような記録的寒波が襲来するのは何年かに一度しかない。
もちろん、2018年12月の異常な高気温も何年かに一度しかないが、毎年の東京・大阪の気温推移を見ていると、9月・10月は例外なく高気温が続いている。だいたい低いときでも最高気温は25度前後ある。15年くらい前の10月に札幌に出張した際、札幌の最高気温は16度で、大阪の最高気温は26度だったことを覚えている。
となると、どうあがいても東京や大阪では防寒アウターは10月末までは動きにくい。例年だと11月にグっと気温が下がって動き始めるが、2018年は12月20日ごろまで高気温だったため動かなかった。
2018年1月~2月の記録的寒波は何年かに一度突然出てくるボーナスステージだったと考え、防寒アウター類は「作りすぎないこと」が重要になる。
ホームランか三振かというスタイルではなく、アベレージヒッターを狙うならそうすべきである。
先に挙げた日経のユニクロの記事には

今期は想定以上の暖冬でダウンやセーター、機能性肌着「ヒートテック」など主力の防寒衣料が苦戦。値引き販売で粗利率も低下した。

という一節があるが、これとても2018年1月・2月の大寒波の記憶に引きずられすぎたのではないかと思う。もっと生産量を絞っていれば必要以上に値引きすることはなかった。
 
戦後直後の着る物がなかった時代~バブル期の異様なファッションブームのような「とりあえずたくさんの服を買う」という時代ではもうない。
多くの消費者はすでに何枚も服を持っているし、防寒アウターも何枚も持っている。だから体感温度で売れ行きが大きく左右されるのである。暑くても防寒を買いたいとか寒くても半袖を買いたいなんていうバブル期みたいな人は一部を除いては今はいない。
マスに売りたいのなら、そういう動向と平気気温に忠実に商品を作るべきで、変なアパレル特有の嗜好をビジネスに反映させることは今回の秋冬の失敗を繰り返すだけである。
 

久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c67bf

 
そんなオンワード樫山の「ICB」の防寒アウターをどうぞ~
 

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