ちょっとジーンズの話題続きで恐縮だが、考えていたことをパラパラとまとめてみたい。

エドウインやリーバイスに代表されるナショナルブランド(NB)は、一部にトップス製品があるものの、ほぼジーンズとカジュアルパンツ専門メーカーだと考えて差支えない。
NB各社のジーンズは、シルエットが事細かに細分化されている。かつて、筆者らが若かりしころは、その細分化された中から自分にぴったり合うシルエットの商品を探すのが楽しみでもあった。

リーバイス501はちょっと合わないから、ラングラーを穿いてみる。
ラングラーでも11MWZは合いにくいから13MWを穿いたらぴったりだった。
でもリーバイスの509もそれなりに合う。

こんな感じだった。
しかし、大部分の消費者にとって、ジーンズのシルエットをそこまで細分化する必要があるのだろうかと思う。
とくにジーンズNB各社が苦戦を始めてからその思いは強くなった。
もっとシルエットの選択肢を狭めた方が良いのではないか。

ちょうどこの考えをもう少し詳しく説明したブログを発見したのでご紹介したい。
リーバイスのHPが題材になっている。例によって長文である(・_・;)

プロダクトの整理と「選ばせない仕組み作り」がポイントのようだ。
http://keynotes.hidezumi.com/keynotes/2012/11/style_selector.php

ページに掲載されているルックブックは面白い。裾の長さなどのポイントを抑えるとお洒落に見えるということがよく分かる。特に高価なプレミアムジーンズを買う必要はなさそうだ。と、同時に消費者に何かを選ばせるというのはとても大変なのだということも浮き彫りになる。システムとして見た場合、とにかく使い勝手が悪い。

(中略)

次に、人は10以上の選択肢を見せられると「げんなり」してやる気を失ってしまう。これはつまり「お客さんが買ってくれなくなる」ということを意味する。ここでは16のスタイルが立て続けに提示され、3つほど見ると、前になにがあったか分からなくなる仕組みになっている。

これはヒトの脳のキャパシティに起因している。電話番号のような一連の情報の組み合わせだと7つから12程度は覚えていられるが、乱雑な情報の列になると、せいぜい3つか4つが限界だろう。またプロセスの数も5つ以上は「多いな」と感じられてしまうのではないかと思う。

(中略)

さて、Find Your Styleに戻る。無事にこの関門を通り越えて「好みのジーンズ」が選べたとする。最後にジーンズを選ぶと、結局いくつものジーンズが提示される。この時点で「前に選んだものが何だったか覚えていますか」ということになる。きっと「うんざりして」選ぶのをやめてしまうだろう。

いずれにしても「選択肢が多すぎて探せない」ということは、状態化している。最近出た野村総合研究所の生活者一万人調査の抜粋には次のようなコメントがある。

一方で、「商品やサービスに関する情報が多すぎて、困ることがある」と「商品やサービスに関する情報が不足していて、困ることがある」のどちらに近いかを尋ねた結果をみると、前者の考えを支持する人が全体の70.1%をしめる結果になっています。また「事前に情報収集してから買う」人は2006年(28.9%)から2009年(35.8%)に大きく増加したのに対して、今回の調査では33.1%とやや減少しています。買い物時に参考となる情報や利用者の評判は気になるものの、いわば情報過多の状況下にあるため、自身でさまざまな情報を収集する傾向がやや頭打ちになっていることがみてとれます。

口コミやブランドの信頼性などにこだわる人がいる一方で、情報疲れしている人もいるのかもしれない。店頭への回帰も見られるようだ。この「情報過多」というのは、現在では重要なポイントだ。

とある。

この筆者は、反対のアプローチで業績を回復したブランドに注目している。
アバクロンビー&フィッチ、通称アバクロである。
彼は、アバクロはジーンズを4シルエットに集約することで、売り上げが回復したと以前に述べている。
たしかに米国でアバクロの株価は上昇しているようだ。

さて、筆者も気になって現在のリーバイスのHPを見てみた。
メンズを見てみる。

510 スーパースキニー
511 スキニー
508 スリムテイパード
551 スリム       (蓬莱の豚まんではない)
502 ストレート
501 ストレート
505 ストレート
503 リラックス
527 ブーツカット

と全部で9つものシルエットがある。
517はいつの間にか527に変更になっていた。
また、501と502は同じシルエットで、ボタンフライとジップフライの違いがある。
なのにどうして同じストレートで505があるのだろう?
HPによると腰回りがゆったりしてひざ部分がストレートになっているそうだが、そんな細かい違いが必要だろうか。

どうだろうか?明らかに選択肢が多すぎるのではないかと思う。

ジーンズNBが苦戦を余儀なくされた一因に国内外のSPAブランドの台頭がある。
代表格であるユニクロとGAPのHPのメンズジーンズを見てみる。

ユニクロは細い順に、スキニー、スリム、レギュラー、リラックスの4シルエットしかない。
またGAPも スキニー、スリム、ストレート、イージーの4シルエットしかない。

この両ブランドの施策がすべて正しいとは思わないが、ジーンズのシルエットはこの4つで事足りるということであろう。実際にこの両ブランドに押されてジーンズ専門店の売上高が激減しているのだから、ジーンズNBは注目すべきではないだろうか。

ただ、ジーンズNBと両ブランドを単純に比較しきれない部分もある。
ほぼ単品アイテムしか展開していないNBと、トータルファッションを展開する両ブランドの違いがある。

両ブランドは異様に細分化されたジーンズを展開する必要はなく、
4シルエット程度の提案でも各種のトップスと組み合わせることで着用感のバリエーションが提案できる。

一方、単品しか展開していないジーンズNBは4シルエットだとラインナップがさびしいと感じるのだろうか。
しかし、リーバイスで言うなら、501だとブルーデニムの濃淡だけで7種類ある。うち1種類はクラッシュ加工なので6色か。ここにホワイトデニムバージョンとメイドインジャパン製品、メイドインアメリカ製品が加わる。

502だとブルーの濃淡だけで6色、ブラックデニムが1つ、カツラギ素材によるカーキやオリーブなどのカラージーンズが3色、そこにまだメイドインジャパン製品も加わる。

こうして見ると、一つのシルエットに7~10色のバリエーションがあることになる。
平均8色と仮定すると、リーバイスだと9シルエットなので9×8で72のバリエーションということになる。
これはかなり多い。仮に4シルエットか5シルエットに集約してもカラー展開を含めると、40ちかいバリエーションが確保できることになる。
40種類もあれば十分だろう。

そういえば、VMDの基本理論に「一番遠く(4~8メートル先)から認識できるのは色柄」とある。
ならば、シルエットを増やすのではなく色柄の種類を増やす方が、まだ理にかなっているのではないだろうか。

次に認識しやすいのはデザインであり、微細なシルエットの違いではない。
ならば、カーゴポケットを付けるとか目立つ付属を付けるとか、ブッシュパンツ型にしてみるとかの方が効果的だろう。
2メートル先で待っている相手が、502を着用しているのか505を着用しているのかを見分けられる人間はおそらくほとんどいないだろう。
だから、微細に異なるシルエットの商品を拡充することはあまり効果がないと思う。

それにしても改めて数えてみたがブルーデニムの濃淡のバリエーションも多すぎる。
6色や7色も必要ないのではないか。せいぜい4色で十分だろう。
もし、ラインナップがさびしいならブルーデニム以外のカラーバリエーションを拡充してはどうか。

ちなみにGAPはストレートがブルーデニムで4色、スキニーとイージーがブルーデニムで2色、スリムがブルー2色と異素材で2色である。

ユニクロはレギュラーのブルーが4色、スリムのブルーが5色、スキニーのブルーが3色、リラックスのブルーは2色だ。

ブルーデニムの濃淡だけで見ると、ユニクロよりもGAPの方が効率的だが、そのユニクロでさえNB各社よりも色の集約は効率的である。

微細なシルエット変化とブルーデニムの色変化をたくさん打ち出すことで、消費者ニーズを広く捉えようということだろうが、選択肢が増えすぎて一般消費者にその思いは伝わっていない。
むしろ、4シルエットと数色のブルーに集約したユニクロやGAP、アバクロの手法に学ぶべき点は多いのではないだろうか。