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南充浩 オフィシャルブログ

要らない物はタダでも要らない

2012年11月14日 未分類 0

 先日、このような記事が産経新聞に掲載された。

個人消費0・5%減「安くしても売れない…」 低価格路線見直しも
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/121112/biz12111221500019-n1.htm

平成24年7~9月期の実質国内総生産(GDP)で、GDPの約6割を占める個人消費は前期比0・5%減と2四半期連続で悪化した。不振からの脱却を狙い、スーパーや外食産業は低価格路線を推進してきたが、デフレ慣れした消費者の需要を喚起しきれないでいる。外食などでは低価格路線を見直す動きも出ており、景気後退局面での試行錯誤が続く。

(中略)

ダイエーは「値下げで以前より客足が戻ってきた」と強調するが、全国スーパーの既存店売上高は9月まで7カ月連続のマイナス。度重なる値下げの効果は薄まりつつある。

 値下げを競ってきた外食チェーンでも、ゼンショーホールディングスが展開する牛丼チェーン「すき家」の既存店売上高は、昨年9月から今年10月まで14カ月連続の前年割れ。「価格を下げても来店につながらない」(同社幹部)傾向が強まり、単価の高い「牛トロ丼」(並盛り680円)などを投入し始めた。

 日本総研の小方尚子・主任研究員は「低価格に品質が伴わなければ、消費者は買わない。ニーズをいかにくみ取り、市場でシェアを取るかの試行錯誤が続くだろう」と話している。

とのことである。

さて、この記事で適切だと思う部分は「デフレ慣れした消費者の需要を喚起しきれない」というところである。
デフレ慣れしているから、少々値下げしたところで消費者は驚かない。

ふーん。(`・ω・´) でお終いである。

もはや、外食にしろ衣料品にしろ日本の価格水準は世界でも最低ではないだろうか。
とくに衣料品はこれ以上の値下げはできないところにまで来ている。

ジーユー以下の価格を実現するなら300円均一とか100円均一店にならざるを得ない。

それ以前に、マーケティングでよく言われるように「要らない物はタダでも要らない」のである。
いくら、牛丼を250円に値下げしても「じゃあ2杯食べよう」と言う人はそうそういないし、セーターを500円に値下げしたからといって「3枚買っとこう」と言う人は少ない。

昨年、ユニクロでラムウールセーター(定価1990円)が990円に値下がりしたときに1枚購入した。
ライトグレーが欲しかったので、それだけを買ったのだが、いくら990円になったからと言って、「普段着用しない深緑色のも買っておこうかな~」とはならない。
深緑色はいくら安くなっても筆者にとっては「要らない物」である。

こういう報道に対して「収入が目減りして使えない人が増えているだけ」という意見があるが、そういう要素はあるだろう。しかし、アルバイト程度でも働いている人なら250円の牛丼は食べられるだろうし、月に1枚くらいは990円に値下がりしたシャツくらいは買えるだろう。
結局消費が伸びないのは収入以外の要素が強いと考えた方が適切ではないだろうか。

で、個人的に違うなと思うのは、最後のまとめのくだりである。
「ニーズをいかにくみとり」という部分だ。

よく使われるフレーズだが、「ニーズをくみとる」「ニーズを掴む」という姿勢である限り、販売はおそらく伸びない。

「ニーズを提案する」「ニーズを教える」という姿勢が必要ではないだろうか。
手あかにまみれた例えで恐縮だが、Appleの復活はまさに「ニーズを提案」できたことがきっかけだったと言われている。当時の消費者は別に「タッチパネルで操作したい」とも「スマートフォンが欲しい」とも感じていなかったはずである。
とくに日本にはiモードを始めとして、携帯電話からのインターネット接続が一応は可能だった。
これにものすごく不便を感じていた日本人は少ないだろう。筆者はとくに不便を感じてはいなかった。

Appleはその「ニーズを提案」できたから支持を集めることができたのだろう。
今後のAppleの行く末は知らないが、過去から現在にいたるまではそうである。

GMSも外食チェーンも百貨店も「ニーズをくみとる」ことばかり考えていてはますます売上は下がるだけだろう。

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