国内生地産地もさまざまな問題を抱えている。

以前、某生地産地の展示会用に生地の新色・新柄を開発する打ち合わせ会議に出席したことがある。
具体的な色柄を提案するためデザイナーも同席した。
その際、デザイナーは新柄を3色展開で提案した。

いずれも明るめの色彩を使ったものだ。
ビビッドほど強い色ではないが、パステルほど淡くも無い。
グリーン、濃い目のレモンイエロー、パープル、ターコイズブルーなどを使った3色である。

1ヶ月ほど経過して、出来上がった試験反が送られてきた。
なんと、3色のうち2色までが指定した色ではない。
明らかに深緑とかマスタード、ワインとかのくすんだ色彩となっていた。

デザイナー側が電話で問い合わせると
「あの色は売れないと思ったからうちの定番色に変えた」
との返事。

デザイナーと二人で呆れた記憶がある。

この産地展示会は、産地企業が資金を出し合って開くものではない。
実は国や都道府県などの行政から助成金や補助金が出ており、必要経費の大半以上をそれで賄うことができる。
そして、展示会の目的は「新しい販路を開拓する」とともに「新しい商材を開発する」ことも含まれている。

いわば新色・新柄を開発することはこの場合、義務でもある。

通常の自社展示会であれば、自社の既存の定番素材ばかり並べていても良い。
売れるか売れないかわからない新色・新柄を開発する必要性はないと判断しても当然だ。

しかし、この場合は行政からの助成金や補助金が出ており、新色・新柄を開発しなければならないのである。

それを勝手に「定番色」に置き換えるなら、新商材開発のための助成金や補助金など必要ないということになる。

国内産地企業はたしかに製造技術は高いかもしれない。
しかし、新色・新柄の必要性を感じず、従来の売れ筋や定番に固執するなら、そんな開発活動など止めてしまえば良いのである。

このデザイナーは「国内産地との連携のメリットの一つに、同一言語で意思疎通が取りやすいことにあると思っていましたが、指定通りに作らないのであれば外国企業と取り組むのと何ら変わらない。むしろ指定通りに仕上げてくれる外国企業の方が良いかもしれません」という感想を漏らした。

国内産地企業が廃れる原因は外的要因が山ほどあるが、産地企業自体の体質もそれを助長した側面があると思う。

先日、レザーバッグ縫製工場を営み、自主ブランドやOEMを請け負っている方とお話をする機会に恵まれた。

レザーの業界でも似たようなことはあるらしい。
国内のタンナー(なめし業者)に、イメージに近いレザーのサンプルを渡して、「これに近づけてほしい」と依頼してもまったく違う物が出来上がってくる場合が少なからずあるという。

タンナー側の言い分としては「製法がわからなかった」とか「売れないと思ったから別の加工にした」とかだという。
製法がわからなければそれが判明した時点で、依頼主にそれを連絡すべきだし、売れるか売れないかを勝手に判断することはおかしいのではないだろうか。

この辺りの意識を改善しないと、国内生地製造業者も国内なめし業者もまだまだ消えていくだろう。