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南充浩 オフィシャルブログ

ライザップのまとまりのない企業買収は今後も続きそう (追記あり)

2018年11月14日 企業研究 0

2015年ごろから、実態よりも衣料品・経済メディアに過大評価されていると見ている企業が3つある。
トウキョウベース、ZOZO、ライザップグループである。
頻繁に出てくる前2つの経営者に比べて、ライザップグループの経営者は衣料品メディアにはほとんど登場しない。この辺りはご自分の適性を良く理解しておられるのではないかと思う。
さて、このライザップグループが、カルビーの前会長をプロ経営者としてCOOに迎えた。今年6月のことである。正直言うと、屋上屋を重ねるように感じた。
ところが、わずか4か月後の10月1日にそのカルビー前会長の松本晃氏がライザップグループのCOOから外れてしまった。
RIZAP松本氏、COO外れる
プロ経営者、生かし切れず
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/111300901/
一体何が原因なのかというと、

RIZAPグループはM&A(合併・買収)を繰り返して急成長をしてきた。関係者の話を総合すると、松本氏はM&Aをいったん停止し、収益を上げられる事業に絞り込むなど体制の再構築を主張した。これに以前からいる経営陣の一部が反発し、激しく“対立”しているという。

とのことである。
松本氏とはまったく面識がないが、さすがに慧眼だといえる。
ライザップグループは傘下企業が多すぎ、しかもダボハゼ的に買収しているため、まったくシナジー効果を得られていない。

柱のフィットネス事業とのシナジー(相互作用)がどこにあるのか見えにくいほど多岐にわたるグループ企業は、上場会社で9社、非上場を含めると75社に上る(18年3月末)。売上高1362億円の企業としては非常に多いが、そのほとんどは買収で傘下に収めている。
 そこに対立の火種があった。実はそれらの中には業績が悪化し、買収価格が会社の正味資産である純資産(総資産から負債を差し引いたもの)を下回る企業が多数あった。会計上、その差額部分は「負ののれん」として認識され、RIZAPグループが採用する国際会計基準では営業利益に計上される。
 これは割安購入益と呼ばれ、同社の決算説明資料によると、営業利益に占める比率は17年3月期には58%、18年3月期で54%に達するほど。実態としてRIZAPグループは業績悪化企業を割安に買うことで利益を押し上げている状況なのである。

というのがライザップグループの実態で、M&Aの自転車操業といえる。
これはライザップ抱えるアパレル・ファッション企業についても同様で、一体何の基準で買い集めているのか、どのようなシナジー効果を期待して買い集めているのか、がまったく見えない。
買い集めた個々の企業同士に関連性や親和性が極端に薄い。アパレルに関して言えばその買収は「ダボハゼ」的で、某コンサルタントに言わせると「某商社が見捨てたアパレルを拾い集めている。ゴミ箱状態」とのことである。
現在、買収したアパレルは再編が進められており、例えば、高級シルバーレディースアパレルの馬里邑は同じく買収した堀田丸正の一事業部と位置付けられている。
・夢展望
・ジーンズメイト
・堀田丸正(馬里邑、イエリデザイン含む)
・三鈴
・マルコ
などとなっている。
これを一つずつ見てみる。
まず、夢展望はヤングレディース向けの低価格カジュアル衣料品のオンライン通販である。
ジーンズメイトは男子ティーンズが強いカジュアルチェーン店、マルコは高級補正下着、堀田丸正は意匠糸などの素材関連であり、傘下の馬里邑は先に書いたように高級シルバーレディース服である。
これらの一体どこに「シナジー効果」が生まれるというのだろうか。
ターゲットも価格も商品テイストも販路もバラバラ。メディアはさんざん「シナジー効果ガー」と煽ったが、買収以後目立ったシナジー効果は全く見られていない。
それぞれの会社が相も変わらず半独立形式で運営されている。
もっとも、内部での人事異動や出向などはあるようだが、それとてそれほど大きく何かが変わるわけではない。異動した人は異動先に馴染んでお終いである。
そして、ライザップグループ全体を見渡しても同様の傾向であり、フリーペーパーの会社があり、なぜかゲーム会社まである。
そりゃ「プロ経営者」なら「ダボハゼ的買収はやめて収益化に取り組もう、傘下を整理しよう」と言うに決まっている。松本氏の見方は極めて一般的で常識的だといえる。
一方、松本氏と対立している経営陣はそれなりには言い分があるのだろうが、自分の得意分野を制限整理されることに対して既得権益を守りたかったのだろうう。
とくに今のアパレルグループにいる経営陣を見ると、そういう思考の人が何人か見受けられる。
送り込まれた先をたった2年で倒産に追いやった人、「1勝9敗」どころかここまで「連戦連敗」「0勝全敗」の人、なんかがその席に座っている。
今回、COOを外れたことで松本氏の発言力は極めて小さくなり、権限は消滅した。これからは「単なる役員」でしかなくなる。ライザップグループに在籍しても企業と松本氏双方にとって何の意味もないだろう。
反対に、対立派はさらに発言力を増して、ライザップグループはさらにダボハゼ的買収を繰り返して内部は混迷を極めてるのではないかと思う。例えていえば、名前こそ立派だったが内部は諸侯が独立的に力を持って国としてのまとまりがなかった神聖ローマ帝国(現在のドイツ)に似たような状況に陥るのではないだろうか。
それにしても話は横道に逸れるが、この日経ビジネスの記事はそれなりによく書けているが、1か所だけ疑問な表現がある。
冒頭の

創業者の意向をくむ幹部と経営方針が対立しており、プロ経営者を生かし切れない日本企業の課題が浮かぶ。

だが、「日本企業の課題」ではなく「ライザップの課題」ではないか。いつからライザップが日本の全企業を代表する立場になったのか。記事にアクセントをつける意味もあり、少々オーバーな表現をしたのだろうが、実態と乖離した表現は慎むべきではないか。
(追記)
ライザップグループが11月14日、大規模赤字転落を受けてM&Aの凍結と不採算部門の廃止を打ち出した。これは素直に歓迎したい。

M&Aの凍結と不採算部門の廃止を打ち出したライザップ


 
 
 
 
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