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南充浩 オフィシャルブログ

ZOZOが下半期にPBで高単価品の投入を避けた理由を推測してみた

2018年11月2日 ネット通販 1

小売店の店頭に立っていると、単価の高いアイテムが多いと売上高が稼ぎやすい。
これを痛感する。
粗利益率とか営業利益率は置いておいて、高いアイテムが売れると売上高はあっという間に目標に到達する。
例えば、当方がかかわっている生地販売会「テキスタイル・マルシェ」でも、それは容易に体感できる。1メートル300円の生地で1万円の売上高を作るには30メートル売らねばならないが、1メートル5000円の生地なら2メートル販売するだけで1万円が稼げる。
どちらが利益が高いかは別問題なので置いておく。
しかし、1メートル300円の生地は利益率100%でも300円以上は稼げない。
1メートル5000円なんてそんなに簡単には売れないが、1メートル2000円くらいの生地ならそこそこ売れる。1メートル300円とか500円の生地しかないメーカーが1日5万円の売上高を稼ぐのはかなり難しいが、1メートル2000円の生地があるメーカーが1日5万円の売上高を稼ぐことはそれほど難しくない。
バッタ屋の店頭でもそのことは体感できる。
1枚300円とか500円の商品ばかりで10万円の売上高を作ることはかなり難しいが、1枚3000円とか5000円の服があってそれが何枚か動けば10万円には比較的容易に到達できる。
テキスタイル・マルシェやバッタ屋で店頭に立っていて、それを体感できていることは、面倒だし足も疲れるし、ジジイだから腰もダルいが、幸運でタメになっていると感じる。
さて、前回ブログの続きというか、書き方を変えただけの手抜きと言おうか、ZOZOのPB(自社企画商品)の販売計画についてだが、通期での売り上げ目標が200億円である。
現在、4月~9月までの半年間が終わり、10月~来年3月までの半年間が始まった。これを合わせると通期の決算となる。
昨日も書いたように、200億円という売上高を来年3月までに達成することは不可能に近いと思う。

ZOZOのPB商品が残り半年で185億円も売れるとは思えない


4月~9月のPBの販売実績は5億円強、受注実績は15億円強で、10億円の差が生じているのは度重なる納期遅れによるものであり、いかに計画が杜撰だったかがわかる。
 
大幅な納期遅れを2度も発生させた会社の社長が、テレビ番組「ガイアの夜明け」で「日本人は約束を守る」というセリフを吐いて納期遅れを起こした外国企業を責めているシーンは、体を張った壮大なギャグではないかと思えた。通常、「ガイアの夜明け」に採りあげられた企業やブランドは反響が大きく、上場企業なら株価も伸びるが、出演後も株価が下がり続けているところが市場の評価を示しているといえる。
それはさておき。
1200円のTシャツと3800円のジーンズでは200億円を稼ぐことはそれこそ何千万枚売るのかということになる。夏場には満を持して3万円台のオーダースーツが発表されたので、売上高を稼ぎやすい「高い商品」が登場したといえる。
200億円を売るためには、下半期は実績ベースで考えると残り195億円、受注ベースで考えると185億円の売上高が必要になる。
となると、下半期に投入すべきは高単価の商品ということになる。例えばダウンジャケット、ウールコート、カシミアセーター、高級ウールを使用したセーター、などである。
しかし、不思議なことにそのどれも投入が発表されていない。発表されているのはブラックジーンズ、チノパン、ジップアップパーカ、シャツのバリエーションである。
恐らく価格はどれも2900~3800円にせざるを得ないだろう。
どうしてダウンジャケットやカシミアセーターのような高単価商品を投入しないのだろう?天候・気温的にはそれらが最も動きやすい時期なのに。
ダウンジャケットなら最低でも1万5000円くらいの価格にはなるだろうし、カシミアセーターだって1万円くらいにはなるだろう。それこそ、1200円のTシャツをちまちま販売するよりははるかに売上高が稼ぎやすい。
前回のブログで書いたように、低単価品ばかりの投入では残り185億~195億円の売上高を稼ぐことは不可能だろうと思われる。
ではどうしてダウンジャケットやカシミアセーターなどの高単価商品を投入しなかったのか。ここからは個人的推測だが、ZOZOスーツの計測精度に自信がなく、今後の精度向上が見込めないことがはっきりしたからではないかと個人的に見ている。
1200円のTシャツや3800円のジーンズの計測間違いは諦めがつくから、クレームになりにくい。クレームがゼロではなかっただろうが、それほど多くもなかったはずだ。
しかし、3万円のスーツは違った。連日、サイズが明らかに間違っているスーツがSNSに投稿された。クレームの量もすごかっただろう。カスタマーセンターの担当者は本当にお気の毒な状態にあったのではないか。
現状の計測システムのままで、単価は優に1万円を越えるダウンジャケットやカシミアニットを投入すれば、オーダースーツの二の舞になりかねない。通常のメーカーのように既製品を売るならまだしも、「一応オーダー」と謳っているから、計測データを基に作る、もしくはサイズを調整しなおさなければならない。
計測データの精度が低いからサイズ間違いが頻発し、クレームの嵐になる。1200円のTシャツは諦められても1万円を越える服を諦められる人は少ない。
 
そして、水玉柄のZOZOスーツの計測精度をこれ以上高めることができないことが分かっているから、ZOZOスーツではない入力する計測システムを立ち上げようとしているのではないか。
 
ビッグデータを手に入れたと言っているが、そのビッグデータの何割かは間違ったサイズデータなのである。間違ったサイズデータを何万件か手に入れたところで、間違いの再生産にしかならない。
まあ、そんな感じで売上高を稼ぎたいなら高単価商品の投入は不可欠だが、それをしないままでの目標据え置きは単なる株価対策にしか見えない。どれもこれも今からでは生産なんてできるようなアイテムではないのだが。
 

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地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
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中公新書「元禄御畳奉行の日記」と合わせて読むと面白い
 

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 comment
  • maeda より: 2018/11/02(金) 12:50 PM

    門外漢ながら思うのですが、そもそもオーダー形式でダウンジャケットやカシミアセーターを大量生産できる工場が少ない気がします。
    スーツはもともとパターンオーダーなどの既存の仕組みがあるので投入できたのかと。

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