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南充浩 オフィシャルブログ

ライセンスビジネスは必ずしも「有害」ではない

2018年10月17日 企業研究 0

先日から、デサントと伊藤忠商事の抗争が激化している。

スクープ解説 デサント社長解任狙いか
伊藤忠が株を買い増す理由
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/101500876/

これについてどうのこうのを言うつもりはないが、正直なところ伊藤忠側の言い分もわからないではない。
デサントが経営危機に陥ったのは、15年ほど前、アディダスがライセンス契約を解除したからである。
日本アパレル市場において、3大ライセンス解除事件というのがある。
1、カネボウとクリスチャンディオール
2、デサントとアディダス
3、三陽商会とバーバリー
である。
1の結果はカネボウが倒産した。そういえば、最近韓国資本で人気を盛り返してきたフィラも元はカネボウがライセンス生産していた。
2は15年に渡る結果、デサントは伊藤忠商事に支援されながら経営を改善して今にいたっている。
3は目下、三陽商会がバーバリーなきあと苦戦中で、結果がどうなるかは予断を許さない。カネボウのように倒産してしまう可能性もあるし、デサントのように15年くらいかかって経営が再建できるかもしれない。
これらを指して、「ライセンスビジネスは悪だ」と言い切るような風潮があるが、それはいかがなものかと思う。
というのは、物事にはすべてにおいてメリットとデメリットがある。ライセンスビジネスにおいても当然デメリットもあれば反面にメリットもある。3大ライセンス事件ではライセンスビジネスのデメリットばかりがクローズアップされすぎているが、当然メリットもある。
どうしてこんな話を書いてみようと思ったのかというと、専門学校でライセンスビジネスについて触れることがあり、メリットとデメリットを整理して話したからだ。
国内アパレルがライセンスを受ける立場しかないということを考えると、デメリットに注目する人が増えるのは仕方がないといえる。
しかし、国内アパレルブランドが海外に進出する際には、現地アパレルにライセンス権を渡すことはメリットが生じる場合がある。
逆に国内アパレルがライセンスを供与される立場であっても、ライセンスビジネスが成功している事例もあるのだから、完全にデメリットしかないとは言い切れない。
ライセンスのメリットを考えてみよう。
かなり昔にこのブログでも触れたことがあるが、かつてエヴィスジーンズが欧州で高い人気を得ることができたのは、イタリア企業にライセンスを供与したからである。
その結果、輸出ではなく現地生産することでエヴィスジーンズは、日本国内とほぼ同じ価格で現地で販売することができた。
一方、日本国内から欧州に輸出したドゥニームは国内価格の3倍程度の値段に跳ね上がってしまい、あまり売れずに終わってしまった。
2万円くらいのジーンズならまだ売れるが、7万円のジーンズになるとかなり売れにくい。
だからエヴィスが欧州で人気ブランドとなることができ、ドゥニームはあまり広がらなかった。
これがライセンスビジネスのメリットといえる。
国内でいえば、ライセンスの効果で人気ブランドとなっているのが、ジョイックスコーポレーションのポールスミスのメンズラインではないかと思う。
ポールスミスが初めて日本に上陸したときは、ライセンスではなかったため、イギリスサイズでダボダボだったと古い業界人は語っている。
ライセンス締結後、日本人体型に修正され、価格も抑えられた結果、ポールスミスは日本で人気ブランドになることができた。
まあ、3大ライセンス事件も同様だが、ポールスミスがディオールやバーバリー、アディダスのように離れることはほぼないと業界内では見られている。
国内ブランドが海外市場に進出する場合、現地企業へのライセンス供与はメリットが大きい。ポールスミスの例を持ち出すまでもなく
1、サイズを現地体型に合わせることができる
2、価格を抑えることができる
という利点がある。
一概にライセンスビジネスは悪だとは言い切れない。
それにしても伊藤忠とデサントの確執は激化する一方であり、

伊藤忠の岡藤正広会長はデサントの石本社長に対して、すでに来年の定時株主総会ではこのままの状況だと再選に反対すると忠告している。仮に伊藤忠が推す取締役が多数を占めた場合、デサントは一転して買収受け入れを決める、というシナリオもあり得る。

とのことで予断を許さない状況にある。
これに先立って、デサントはワコールに救いを求め、緩やかな協力関係が結ばれている。
ライセンスビジネスも所詮は、単なる「手段の一つ」「カネ儲けの道具」に過ぎないわけだから、使い方によって毒にも薬にもなる。
一方的に、「悪」とか「無用」と断ずることは却ってビジネスの選択肢を狭めるだけだといえる。
「羹に懲りて膾を吹く」
ということわざがあるが、熱い食べ物(羹)を冷まさずに食べて火傷を負ったからといって、冷たい食べ物(膾)を食べるときにも冷まして食べるのは愚かなことであるという意味である。
メリットがあればライセンスビジネスをすれば良いし、メリットがなければライセンスビジネスはやめれば良い。所詮は「道具」なんてそんな使い方で十分である。
 

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地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
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