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南充浩 オフィシャルブログ

ノリと勢いだけのブランドは今後生き残れない

2018年10月12日 経営破綻 0

最近はそうでもなくなったが、ほんの15年ほど前までは、どんぶり勘定で経営されているアパレル企業が多かった。
そういう企業は2000年以降どんどんと淘汰されて姿を消していったが、完全に絶滅したわけではない。今でも生き延びている企業もあるが、いずれはすべて消え去ることになるのではないかと思う。
とくにドゥアラットの倒産を見ると、そう思えてくる。
 

アパレルブランド「DOARAT」を展開していた(株)ドゥアラットが破産開始決定
http://news.livedoor.com/article/detail/15428318/
アパレルブランド「DOARAT」を中心に店舗販売や卸売を手掛けていた。ブランドを譲り受けて平成22年11月、事業を開始。
 

とあるが、ブランド設立はもっと古い。97年に設立とあるから、もう20年以上前になる。
いわゆる裏原宿系ブランドとして知名度は高かった。ファッション雑誌にもよく掲載されていた。
しかし、この手のブランドはどんぶり勘定の経営が多く、もっとも成功したベイシングエイプですら、実は莫大な負債を抱えており、香港の企業に買収されてしまった。
2011年のことである。

https://www.news-postseven.com/archives/20110304_14151.html
「BAPEを手掛けるNIGOの会社『ノーウェア』が今年1月31日に、香港のアパレル小売会社『I.Tリミテッド(以下、I.T)』に買収されてしまったんです。取得額はおよそ2億3000万円でした」(ファッション関係者)
I.Tの発表によると、ノーウェアは2009年、2010年と2年連続で2億円前後の赤字を出し、2010年度末時点の負債総額は10億3000万円にも上ったという。それだけでなく、同社は金融機関への25億7300万円の借入金と17億円あまりの賃料などを支払わなければならない状況にあった。
「I.Tは以前からBAPEの商品を香港や中国で販売するなどノーウェアとのつきあいがありました。NIGOさんは昨年6月にI.T側と相談して、43億1100万円の負債を担保する形でノーウェアを買ってもらったんです」(前出・ファッション関係者)
 

とあり、他のお仲間ブランドもこれと内情はあまり変わらない。
そして裏原宿系ブランドの多くは、2005年以降、めっきり目立たなくなってしまった。
ドゥアラットもビジネス的には窮乏していたといえ、

負債総額は債権者10名に対して3691万円。

とあるから、たった3700万円の負債で倒産してしまうほどの小規模な売上高しかなかったといえる。さらに驚くのは記事中のこの文言である。

計画通りの売上高に達せず、業績不振が設立当初より続いていた。

とのことで、この「設立当初」というのは、97年のブランド開始を指しているのか、2010年に譲渡されたときを指しているのかイマイチわからないが、どちらにしろ、設立当初から業績不振で売上高未達が続いていたというなら、その経営・管理はザルだったといわねばならないし、経営陣は無能だったといわれても仕方がない。
とはいえ、昔のアパレルはこんな感じのところが多かった。
それにしても、雑誌広告で知名度を高めたが内情は売上高が極端に低いというのは、昔のアパレル業界にはよく見られた現象で、今でもその名残はある。
裏原宿系なんてその最たる例だったが、現在でいえば、東京コレクションに出展するドメスティックデザイナーブランド(国内デザイナーブランド)の多くは売上高が1億円にも満たない。名前を聞けば業界人なら誰でも知っているようなブランドだって年商何千万円程度しかない。
例えば、最近、知名度が格段に上がった某デザイナーブランドも実は、年商規模は小さく製造費が払えなくてその代わりに商標を商社に売却しているとまで言われている。
ファッション雑誌の掲載が多く知名度が高かったブランドを買収してみたら、その経営状態の悪さに驚いたという逸話は掃いて捨てるほどある。
それほどに、ファッション雑誌に登場するブランドはイメージと実態がかけ離れていることが多く、ドゥアラットもその一つだったといえる。
しかし、勘と度胸とどんぶり勘定でいつまでも企業経営ができるはずもないし、そんな穴だらけの企業が永続できるはずもない。
西暦2000年以前なら、そんなザルみたいな経営でも何かのブームに乗れば売れに売れることもあった。しかし、社会も消費者も成熟した現在では、そんなビッグブームはおいそれとは生まれにくくなっているし、まぐれ当たりみたいなことも起きにくくなっている。
今回はドゥアラットだったが、勢いとノリだけでやっているようなブランドは今後も続々と破綻し続けるだろう。もうそんなものだけでは通用する時代ではなくなっているからだ。
今回のドゥアラットは良くも悪くも「古き良き時代」を色濃く引きずっていたブランドだといえ、それがまた一つ消え去ったといえる。
 

NOTEの有料記事もよろしくです。
地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
そんなドゥアラットの商品をどうぞ~

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