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南充浩 オフィシャルブログ

アダストリアの「悪材料が出尽くした」とはまったく思えないんだけど?

2018年10月11日 お買い得品 0

先日、発表された第二四半期決算後、アダストリアホールディングスの株価が上昇している。正直にいうと、当方は上昇する材料がないと思っているのだが、株式関係の情報を読むと、投資家は「悪材料は出尽くした」と見ているようで、それが株価上昇につながっている。
アダストリアホールディングスも在庫の処分が進んでいるとの見解を発表しているが、果たしてそうだろうか。外野たる当方からはそうは見えない。
 

アダストリア苦戦の要因は出店過多よりも、売れない商品企画とブランドリニューアルの失敗にある


 
 
というのも店舗によっては、アダストリアホールディングスはすさまじい値下げセールを行っているからだ。
恐らくは、いくつかの店舗に在庫を集中させて値下げ処分しているのではないかと推測される。
昨日、ヨドバシカメラ梅田店に行った。
最近、ヨドバシカメラの5階から7階の衣料品フロアを覗いていなかったし、約束の飲み会まで時間が余っていたからである。
6階のレイジブルー、5階のグローバルワークを見て驚いた。
6階のレイジブルーには天井からデカデカと「OUTLET SALE」と書かれた赤い看板が吊り下げられているだけでなく、入り口にも同様の立て看板が設置されている。


 
中に入ると、店の約半分ぐらいのスペースが30%オフ、40%オフ、50%オフ、60%オフとオフ率別に分けられて商品が並べられている。
半袖が多いので今夏物だと考えられるが、長袖も混じっているので今春物か昨年秋物ではないかと考えられる。
昨日は10月10日で、昔なら体育の日という祝日である。
衣料品業界には変な区切りがあり10月21日には、防寒アウターが一斉に立ち上がる。その10日前ということで本来は「秋物商戦真っ最中」であり、この時期にこんな大規模なバーゲンセールは本来なら行われることはない。
近年、バーゲンの早期化・長期化が進んでいるが、10月の中旬にこれほどの大規模セールが行われるのは異例のことだといえる。
5階のグローバルワークも店舗の約半分が「赤札セールコーナー」になっており、大型店であるこの店に在庫を集中させて投げ売り処分をしているのではないかと推測される。
 
この様子を見ていると、とてもではないが「悪材料が出尽くした」とは思えないし、「在庫処分が進んだ」とも思えない。ましてやプロパー消化率(定価販売)が高まっているとも思えない。
株式投資家やコンサルタント、マーケティング専門家の多くは、現場を見ずに判断しているといわれるが、今回の「悪材料出尽くし」という見方は、まさに店頭を見ずに判断を下しているのではないかと思う。
当方がアダストリアの各ブランド店について見ると、商品的施策においては、ちょっと大ヒット商品は生まれそうにないし、市場を牽引するような斬新な開発も行われていない、と感じる。
ブランドステイタスが高まっているかというとそうでもないし、業績をV字回復させられるような材料は1つも見つけられない。
ついでにいうと、商品をけなしているわけではない。各ブランドの中には安値の割に良くできている商品もあるし、そういう商品が値引きされたら当方だって毎シーズンいくつか買っている。
とはいえ、「エポックメイキング」となるような画期的な商品というのは、今までもなかったし、現在の店頭にもない。
アダストリア自体も自社での斬新な商品開発・ブランド開発というのを潔く諦めている節があり、外部にアイデアを求める施策をいくつかすでに打ち出しており、メディアでも発表されている。
当方はその潔い姿勢を評価したいと思っている。できもしないのに「クリエイティビティーガー」とか「おもしろい商品開発をー」なんて空々しい宣言を叫ぶブランドやアパレル企業は数多くあってうんざりするのだが、そういう身の程知らずに比べるとよほど好感が持てる。
それと世間的なトレンドの傾向も、前年踏襲型が多く、いきなり突然変異的な突拍子もないトレンドアイテムが出現するようなことは減っている。
2000年頃まではそういう「突然変異的なビッグトレンド」が数多くあったが、2005年以降はめっきり減っており、2010年代になると本当に少なくなった。2015年のガウチョパンツくらいではないかと思う。
だから、アダストリアの各ブランドが斬新な商品を開発しない・できないというのは無理からぬ部分もあるといえる。
とはいえ、前年踏襲型の商品開発・ブランド運営ではジワジワと業績回復させるほかなく、V字回復というのは通常は望めない。
そんな定石と10月10日時点での特大値下げセールを組み合わせて考えると、株式投資家が考えているような急激な業績回復というシナリオはあり得ないのではないかと思う。
アダストリアホールディングスは、そういう思惑に踊らされることなく、地道な取り組みでの業績回復を目指して欲しいと願わずにはいられない。
 

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地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

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