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南充浩 オフィシャルブログ

中期的展望での育成を期待したい

2012年9月19日 未分類 0

 ZOZOTOWN初のリアルイベントが9月15日、16日の二日間開催された。
これは一般顧客向けの展示受注会で、ネット通販がいかにリアルな予約販売に結びつくか業界からも注目が集まっていた。

さて、ネットではこのイベントの結果が報道されている。
そこから数字的に第1回目のこのイベントの成否を考えてみたい。

9月15日、16日の2日間、幕張メッセにてファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」が日本初の一般顧客向け合同ファッション展示会「ZOZOCOLLE」が開催。 1万人が来場し、1億5000万円の総受注を受けるなど、大盛況のうちに幕を閉じました。

「ZOZOCOLLE」は、ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」が行う初めてのリアルイベント。「FRABOIS」「Ne-net」「IENA」「Banner Barrett」など人気ブランドから、「UNITED ARROWS」「BEAMS」「nano・universe」など人気セレクトショップまで、人気の200ブランドが店頭に並ぶ前の最新アイテムを展示し、お客さんより予約を受け付けるという斬新な試み。

イベント終了後に発表されたファクトデータによると、会期2日間の総来場者数は1万人で、男女比は男性50.4%、女性49.6%、平均年齢は29歳。大人のファッションフリークが訪れたことで、総受注額が1億5000万円と、大規模な予約展示会となりました。

http://getnews.jp/archives/252185

とのことである。

2日間の来場者が計1万人、売上高が1億5000万円という結果だが、数字的にはやはり大きい。

これをもう少し細かく分解してみたい。

まず来場者数は2日間で1万人だから1日あたりは5000人
営業時間は初日が11時~19時(最終入場18時半)
二日目が10時~17時(最終入場16時半)である。

初日が10時間営業、二日目が8時間営業なので、
初日は1時間当たり平均500人の入場ペース、二日目は1時間当たり平均600人の入場ペース

となる。

これが街の小さいホールなら500人来るとかなりの集客感となるが、いかんせん、会場は幕張メッセである。
この会場に1時間あたり500~600人の入場ではちょっと空間が大きすぎて、人口密度が低く感じられたのではないだろうか?
もちろん滞留時間が長いので最初に入場した客が最後まで滞在したとしても5000人で幕張メッセという空間では混雑感は感じられなかったのではないだろうか。

次に売上高だが2日間で合計1億5000万円なので
1日当たりの売上高は7500万円
これだけ見ると非常に大きな数字であるが、出展ブランドは200である。
200ブランドの平均売上高を求めると1ブランドあたり37万5000円である。
1ブランドの1日当たりの平均売上高は37万5000円となる。
2日間合計の1ブランドの平均売上高は75万円。

1ブランドあたりの1日平均売上高が37万5000円はちょっと少ないのではないだろうか。
当然ブランドによって優劣があったであろうから、1日に100万円や200万円売れたブランドがある一方で、ほとんどゼロに近かったブランドも相当数あったと推測される。

100万円のブランド1つと、売上高ゼロのブランド1つ、この2ブランドの平均売上高は1社あたり50万円となる。こうして見ると、37万5000円という売上高はかなり厳しい結果だったのではないだろうか。

ちなみに1万人来場者があって、総額1億5000万円であるから、平均客単価は1万5000円である。
平均客単価はまずまずだろうか。

もちろん売上高1億5000万円というのはかなり大きな数字である。
しかし、200ブランドの合計売上高としては物足りないと言わざるを得ないのではないか。

入場料は1000円だから1万人の入場者で、合計1千万円である。
しかし、会場賃料、アルバイトなどの人件費、会場施工費などの経費を考えると1千万円では厳しい。

発表された数字から推測すると、第1回目は期待されたほどの実績ではなかったのではないだろうか。

この理由をいくつか考えてみたい。
まず、秋物を予約までして買いたいと思う消費者が予想以上に減っているということではないか。
次に、サイト全体の売れ行きが大きく成長したのは、日本全国の地方からの買い物客が多いためで、決して東京近郊だけの売り上げではないということだろう。
さらに、入場料1000円を払ってまで先物を手に入れたいと考える消費者はそれほどいないということもあろう。

先日、福井県の大飯原発のある大飯町に取材に行ったことがある。
ここは道路と大きなホール以外何もない。スーパーもコンビニもほとんどない。
ここで農家を営む若者がいるのだが、彼は「フィルソン」のウールベストを着、「エヴィス」のジーンズを穿き、「レッドウィング」のアイリッシュセッターブーツを履いている。

都会のワークカジュアル好きの若者と遜色ないブランドを手に入れている。
彼が購入する先はネット通販である。
ZOZOTOWNというサイトは、この福井県大飯町の若者のような地方からの買い物客に支えられている側面が大きいのではないだろうか。

こうした地方の若者がわざわざ幕張メッセまで来るとは考えられない。
もちろん、熱心なファンは来場しただろうが、サイトを利用している人数からすると少数派だったのではないか。

さて、このイベントの方向性だが、主催者と出展社が中期的に取り組めば成長する可能性が大いにある。
中期的というのは5~10年くらいを想定している。
けれども、あと2~3回開催して今回のような結果が続いた場合、主催者と出展社が短気を起こしてしまえばその時点で打ち切りとなる可能性もあると思っている。

ぜひとも中期的展望でのイベント育成に期待したい。

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