先日、新進気鋭のカジュアルアパレル、オールユアーズの原康人さんにお会いしたのは、新商品の内容を尋ねるためだった。

オールユアーズはこれまで機能性素材を使用しながらも、よくある「産地とのコラボ」や「製造加工業とのコラボ」を打ち出してこなかったが、昨日から発売になった新商品は、産地とのコラボを打ち出している。

そして、オールユアーズとしては今後は様々な産地とのコラボを手掛けたいとのことで、希望する産地は連絡してみてはどうか?

今回は「身にまとう毛布」というキャッチフレーズで、いわゆる「毛布」の技術を利用した生地をカーディガン、パーカ、ダッフルコートの3型に仕上げている。

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そして、その「毛布」の技術を応用した生地を加工しているのが、毛布産地として有名?な大阪府の泉大津である。

ほんの少しでも産地をかじったことのある人なら泉大津がタオル、毛織、毛布、ニットなどの産地であることは知っているが、産地なんて無縁のファッション畑の人ならそんなことは全然知らないだろう。

泉大津に限らず、日本の各産地というのは、産地の中の人が思っているよりも知名度が低い。
それを読み違えると、ビジネスに多大な支障をきたすので、できるだけ客観的に自身を判断してもらいたい。

さて、今回の生地は、いわゆるニット(編地)で、製造地は和歌山だ。
表が綿、裏にウールが出るようになったプレーティング編みである。
プレーティング編みとは何ぞやというと、表と裏で別の素材が出てくる編地である。
今回なら表は綿で裏はウールである。

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(上が表、下が裏面)

ファッションブロガーMB氏がグローバルワークの吸水速乾Tシャツを絶賛していたことがあるが、あれもプレーティング編みで、表地は綿で裏面はポリエステルだった。

プレーティング編みというのはそういう技術である。

この和歌山産地で編んだ生地を、泉大津の藤井若宮製絨で起毛加工を施し、毛布状に仕上げている。
藤井若宮製絨は染色・整理加工などを手掛ける泉大津の老舗業者で、かつて一度2006年ごろに民事再生法を申請したが、今でも存続できているのは何よりといえる。

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さて、この毛布生地を使ったトップス3型がキャンプファイヤーのクラウドファンディングに出品されている。

https://camp-fire.jp/projects/view/42749

9月4日に出品されたばかりなのに、目標金額100万円をたった1日でほとんど到達している。
9月5日の朝時点ですでに86万1000円を集めているから驚きである。

オールユアーズは連続24か月クラウドファンディングというプロジェクトを仕掛けており、今回の毛布は第3弾となる。
第1弾、第2弾ともに目標金額を達成したが、とくに第2弾は集めた金額がとてつもなく大きかった。

8月末までに2か月間で集めた金額はなんと1800万円強で、クラウドファンディング史上ファッション分野での集めた金額の最大額となっている。

https://camp-fire.jp/projects/view/34653

今回の第3弾の金額の集まり具合も前回の勢いをそのまま引き継いでいるといえる。

第2弾と比べると話題になることが少なかった第1弾の「色落ちしないブラックパンツ」だが、それでも目標金額は優に達成している。

この調子が続くなら、12商品すべてで目標金額を達成することができそうだ。

原さんとの雑談は少し前のブログに一部を利用した。

アパレルブランドの「小売店向け展示会」は意味がなくなりつつある
http://minamimitsuhiro.info/archives/4827762.html

である。

ここで言われているように、小売店向け展示会を開催しても、販売不振でビビっている小売店はほとんどオーダーを出さない。
ならば、展示会を廃止して新商品はクラウドファンディングで発表してしまえということで、クラウドファンディングで売れていれば、ビビっている小売店も安心してオーダーしてくるからである。

何とも情けない話ではあるが。

さて、オールユアーズの商品が売れている要因は何かというと、それは「わかりやすさ」である。

クラウドファンディングに登場した商品を例に出そう。

第1弾は「色落ちしないブラックパンツ」
第2弾は「着心地が良くてイージーケアなセットアップ」

である。

種明かしをすると、二つの商品で使用されている生地はまったく同じである。
組成はポリエステル100%。

この純ポリエステルの生地には、様々な機能がある。
まず、吸水速乾、そして軽量、ストレッチ性である。
この吸水速乾機能だけをフィーチャーして「ファストパス」という商品群をオールユアーズはすでに発売している。

ファストパスのキャッチフレーズは「真冬でも部屋干し3時間で乾燥する」であり、その他の軽量やらストレッチ性は一切謳っていない。

軽量はポリエステル本来の機能性で、実はそんなに特筆すべき機能ではない。
ポリエステルは基本的に軽いのである。
またストレッチ性は、現在では着心地のためにはマストな機能で特別なことはない。

それでもこれを謳おうと思えば謳えるが、あえて「吸水速乾」一つに絞った。

今度は、「色落ちしないブラックパンツ」を見てみよう。
素材は全くファストパスと同じだ。だから吸水速乾性も軽量性もストレッチ性もある。

しかし、それは全く謳わない。

そのとき謳っているのは「色落ちしない」ということだけである。
綿主体のブラックパンツは、かならず色落ちする。
デニムみたいに白っぽく色落ちするのではなく、綿主体のカツラギやサテン素材は、赤褐色に色落ちする。ブラックのはずが少しチョコレートっぽい茶色になる。
こうなったら、そのズボンは寿命だといえる。

ところが、ポリエステルはこの商品に使われている素材に限らず、基本的にほとんど色落ちしない。

だから、それのみを謳っている。
実は何の特別な機能でもなく、ポリエステルが本来持っている機能にすぎない。

よくある産地ブランドやファクトリーブランド、モノづくり神話系ブランドだと、

「ドコソコで栽培された綿花を紡いで作ったナンタラという糸を使い、〇〇産地で織りあげた(編んだ)〇〇という生地に、××という染色を施し、さらに▽▽という加工も施して〇〇な風合いに仕上げました」

とか

「この商品には、吸水速乾だけでなく、消臭、防汚、撥水、ストレッチ性、軽量性、防シワ、UVカットなど様々な機能性がてんこ盛りです」

とか

そういう打ち出しが多い。
多いというか99%のブランドがこれだ。

しかし、そんなものは実は消費者にはほとんど響いていない。
響いていたら産地ブランドやファクトリーブランド、モノづくり神話系ブランドはもっと売れているだろう。

「ナンタラ織りシャツ」とか「ナンタラ編みニット」がもっと売れているはずだ。

形態安定で爆発的に売れたワイシャツはその後、機能性を毎年1つずつ付加していき、最終的には7つくらいの機能性(防臭、防汚、UVカット、ビタミンC、マイナスイオンなど)を持っていたが、今、店頭に並んでいるワイシャツの多くは形態安定のみがほとんどで、あってもそこに防臭か防汚が付けられているだけで、機能性をてんこ盛りにしてもそんなものは何のセールスポイントにもならないことが証明されている。

製造工程の詳細すぎる説明も、てんこ盛りの機能性も販促には実際のところほとんど必要なくて、わかりやすい切り口が1つだけあれば良いのである。

もし、他のアパレルがオールユアーズに見習う部分があるとするなら、そこである。

noteで有料記事を始めてみました~。

鎌倉シャツのビジネスモデルが秀逸なポイントを考えてみた
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/na76c612e6d37

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