我が国のGDPが年率4%増のペースで推移しており、景気は拡大傾向が続いているといえる。
一方、多くの人は景気拡大の実感がないと伝えられるが、これは2005年ごろの景気拡大でも同じことが言われていた。

実際に我が身を振り返ってみてどうかと問われると、たしかにあまり実感はない。
別に当方の手取りは増えていない。
しかし、何となく世間の雰囲気を見ていると一服感は感じる。強い不況感は感じない。

好況にもかかわらず、高額衣料品の消費は伸びないが、それは当たり前ではないかと思う。
これからこのままGDPが伸び続けてもバブル期までのような爆発的な消費は回復しないだろう。

それには単に「モノ余り現象」や「コト消費」などの要因以外に、給与水準が大きく増えないからといいう要因もある。

先日、たまたま父親の大卒初任給の話題になった。
当方の父親は1944年生まれだが、1月生まれなので学年は1943年生まれと同じになる。
浪人も留年もせずに大学卒業後、サラリーマンとなってなんやかんやあって今に至る。

働き始めたのは1966年4月ということになり、父親の記憶では初任給は2万円くらいだったという。

大卒初任給の年次統計だと1968年からしか掲載されていないが、68年は3万円強となっている。

http://nenji-toukei.com/n/kiji/10021/%E5%A4%A7%E5%8D%92%E5%88%9D%E4%BB%BB%E7%B5%A6

別のインターネットの書き込みでは66年ごろは2万5000円だったとあるが、確証はない。

父親の話も含めて総合すると66年の大卒初任給の相場は1万8000~2万5000円くらいだったと考えられる。
ちょうど今の初任給の11分の1くらいだ。

一方、当方が働きだしたのが93年か94年だったが、このときの平均は19万円強である。
27年くらいでおよそ10倍に初任給は増えているということになる。
もちろん物価もそれにスライドしているが、物価は単純に10倍になったわけではない。
商品によっては5倍くらいに抑えられているものもあるし、10倍以上のものもある。

そこから現在まで24年間くらいが経過しているが、大卒初任給平均額はほとんど増えていない。
せいぜい1万円か2万円増えた程度で、1・05倍程度であり、ほぼ同じ期間だった66年から93年の間の10倍増とは比べ物にならない。

年次統計を見ていると、68年以降はだいたい毎年5000~1万円ずつくらい初任給が上がっている。
5000円というと今から見るとそれほど高いとは思わないが、30000円の給与が35000円になるのだから、最低でも1・2倍以上に増えているといえる。

初任給が高くなれば、この当時の年功序列賃金だと先輩社員の給与はそれよりも増えているということである。
そうでなければ、入社2年目や3年目よりも新卒の方が給料が高くなってしまい、年功序列の賃金体系は維持できなくなってしまうからだ。

父親の記憶によると、初任給は2万円だったものの、翌年以降は月額1万円とか2万円のペースで昇給していったという。
初任給は2万円だが、翌年からは月給が3万円に増えるということで、実に50%増である。
1・5倍に増えるということになる。

今の初任給水準に合わせると、初任給は20万円だが、翌年からは月給が30万円に増えるというのと同じである。で、その次の年もまた1万円増えたとすると、入社二年で給料は倍増しているということになる。

父親の記憶が正しければ、初任給20万円で、翌々年の月給は40万円になっているのと同じだ。

これだけ短期間に劇的に昇給すればおのずと消費は活発になる。
自動車だろうが住宅だろうがローンを組むことを恐れない。ローンの良しあしは置いておいて、そういう気持ちになっても不思議ではない。

さらにいえば、このころの半期に一度のボーナスは3ヶ月とか5ヶ月分の支給があったらしい。

ましてや、いくら高額だとはいえ、自動車や住宅に比べてケタ違いに安い洋服なんて飛ぶように売れて当然だろう。

初任給20万円とすると、7月に60万円、12月に100万円の支給があったことになる。

そりゃ金遣いが荒くても当然だろう。

このころは、既製服やオシャレ着、カジュアルウェアなんていうものが出始めで、みんな持っていなかったからなおさら飛ぶように売れる。

それまでまったく所有していない新製品が出れば、飛ぶように売れるというのは、家電もiPhoneもこのころの洋服も同じである。

そもそも、60年代には既製服もオシャレ着もカジュアルウェアもほとんど存在していなかった。
60年代前半に大学生だった父親に尋ねてみても、よほどのオシャレ野郎以外は、今のクールビズみたいなシャツとスラックスで通学していたそうだ。

ジーンズはまだ一般カジュアルとして普及していないし、そもそも今のようなカジュアルウェアというカテゴリーさえない。

そういうものが発売され、それがアメリカの文化だと喧伝されれば、飛ぶように売れるのは当たり前だ。価格が高くても毎年50%も給料が増え続けるなら買うことに躊躇はなくなる。

先日、トウキョウベースが初任給を25万円に引き上げるという発表があった。

老人世代の大量定年に加えて、若者人口の減少から人手不足となっていて、就職率は圧倒的に高くなっている。優秀な人材を捕まえるためにも今後企業は初任給を上げていくだろう。

じゃあ、60年代後半とか70年代みたいな旺盛な消費が復活するかというとそれはないだろう。

就職してからの昇給率はその当時ほど高くないからだ。
もちろん、初任給が上がった分だけ多くの会社は昇給させるだろう。
しかし、その昇給率は当方の父親が経験したような50%増とか倍増ではありえない。

それはみなさんが己自身の昇給を振り返ってみればおのずと明らかになるだろう。

一部の例外を除いてそんな昇給を果たした人はいないはずだ。

また、初任給が増えたといっても当時のような増え方ではない。

となると、「少々高い服でもドンドン買うで~」なんて人は今後もほとんど現れない。
マイルドなインフレが起こり、物価上昇にスライドして収入が増えることはあっても劇的に増加はしない。初任給だって、20年後に10倍増になっているなんてことはないだろう。

となると、少しだけ財布のヒモは緩むことはあっても、70年代の高度経済成長期や80年代のバブル期のような「高い服」がバンバン売れるということは考えられない。

結局、「景気回復の実感がない」とか「高額衣料品が売れない」とか嘆いている企業幹部やマスゴミマスコミ各社の経営陣というのは、当方の父親と同年配とは言わないまでも、バブル期の旺盛な消費を身をもって体験している世代だといえる。

だから、少々の景気回復では物足りないし、あの当時の熱狂が忘れられないのだろうと思う。

そしてその当時の感覚を残したままで、種々の施策を打ってみたところで、バブル崩壊以後しか知らない世代(47歳の当方も含む)の消費動向を忠実にキャッチなんてできない。

それが旧大手アパレルや百貨店各社、ひいてはマスゴミマスコミ各社が苦戦している最大の要因だろう。

バブル期みたいな旺盛な消費を理想として考えているならアホそのものである。

高度経済成長期を身をもって体感した世代の多くは定年を迎えており、彼らが実権を握っている企業はほとんどない。しかし、バブル体感組はまだ定年を迎えておらず、多くの企業の上層部にいる。
今の消費者のニーズに的確に対応できるようになるのは、このバブル体感組が定年を迎えて以降のことになるのではないかと思う。

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鎌倉シャツのビジネスモデルが秀逸なポイントを考えてみた
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