「栴檀は双葉より芳し」という言葉がある。
優れた人物は若いころから優れているという意味である。

これと逆の意味の言葉が「大器晩成」である。
もっとも、陳舜臣氏によると「大器晩成」のもともとの意味は、「大器ができるには時間がかかる」という意味ではなく「大器はできにくい」という意味だったという。

まあ、「大器はできにくい」という方が、実情には合っていると思うが。(笑)

今年4月からファッション専門学校で週に1度だけ「計数管理」の授業をしているが、これがなかなか難しい。

売上高、粗利益、営業利益、経常利益、値入率、掛け率、上代、下代などの言葉の意味を説明するだけでも一苦労である。
なぜなら、学生たちにとってこれらの言葉はなじみがないから、言葉を見ただけで拒絶反応・思考停止に陥る。

これが偏差値の高い大学の生徒ならまだ違うのかもしれないが、往々にして偏差値の低い学生が集まる専門学校の場合は、本当に言葉になじませるだけでも工夫が必要になる。

それはさておき。

こういう話をすると、若者批判・学生批判が出ることがあるが、じゃあ自分が19歳のときどうだったかと考えてみると、これらの学生とあまり変わらなかったといえる。

もちろんこれらの言葉になじみはなかったし、興味も持たなかった。
とりあえず教えてくれるから覚えておこうかという程度だった。

しかし、社会人になってそういう言葉に普通に接するようになると、それらの重要性が立ちどころに理解できたし、学生時代にもっと勉強しておけばよかったと後悔した。

だいたい、人間なんてその程度がほとんどである。

栴檀はほとんど存在しない。
この社会は衆愚で凡夫の集まりである。

自分がその立場になって初めて理解する、興味を持つという人間が圧倒的大多数ではないか。

先日、一人の卒業生と再会した。
自分たちで洋服店を起業したいとのことで、いろいろとプランを練っていた。

そこで、彼から質問があり、資金調達についてだった。

資金調達にはさまざまあるが、自分で貯める・家族親族に借りる(もらう)以外だと、金融機関から借りなくてはならない。

そのためには、事業計画書の作成が不可欠だ。

店の完成予想図や洋服のデザイン画だけを見せてカネを貸してくれる人などこの世には存在しない。

売上高・営業利益・経常利益が書き込まれた事業計画書を見せて初めてカネが借りられる。
カネを借りるためには、つじつまの合った事業計画書を作らねばならない。

「何のツテもコネも知名度もないけど、とりあえず初年度売上高は10億円を目指します」みたいな妄想願望垂れ流しの事業計画書では誰もカネを貸してくれない。

で、営業利益とは?経常利益とは?ということを説明したのだが、たぶん、彼は今までで一番熱心に「授業」を聞き、一番理解を深めていた様子だった。

実際に学生の時にはピンとこないが、起業を計画して必要に迫られるとたちどころに飲み込んで理解できる。
人間なんてそんなもんだろう。

まあ、だから「栴檀」の登場を過剰に期待するのではなく、できにくい大器を一つでもできるようにするしかないのだろう。

嫌がられても「計数管理」はデザイン学部・デザイン学科の学生にも専門学校は等しく教えるべきだ。
「金勘定なしでデザインさえやっていれば商品は売れる」なんて陳腐なフィクションを教え込むことは罪に等しい。

また、「卒業と同時にマーチャンダイザーとしての就職を目指す」なんていう詐欺にも等しい看板は取り下げるべきだ。

商品面だけでなく、営業・販売面、生産面、資金面までをトータルに考えるのがマーチャンダイザーであり、そんな高度な知識・経験をたかだかファッション専門学校の何年間かで教えられるはずもない。

企業に就職してそれぞれの部門への理解を深めて初めてマーチャンダイザーになれるのが実態である。

そういう意味では、フィクションとイリュージョンしか教えないファッション専門学校の存在は百害あって一利なしである。
誰か「ファッション専門学校の闇」なんて本でも書いてくれないかな~?

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