実店舗での洋服販売不振を受けて、猫も杓子も「EC強化」を打ち出しており、あんまり詳しくなさそうなコンサルと称する人は安易に「EC強化」「ネットショップ」を勧めてくる。

本当に最近の猫と杓子は「EC強化」か「大草直子」かである。

アメリカでは大量の実店舗閉鎖、商業施設閉鎖が相次ぎ、その要因はECの拡大だとされており、日本でも何年か後にはそれに類した(完全に同じではない)動きが見られるようになると考えられる。

業界のおじさんたちもすっかりその気で「EC強化」とか「ネットで売ったら何とかなる」なんて極めてイージーに考えている人が増えた。
もちろん、中には「今のご時世でネットの売上高がポンポン増えるとは思えないが、とりあえずやるだけやる」という、まともなおじさんも相当数いるのだが、ネットに親しんでいないおじさんは本当に極めてイージーに捉えていて、アホらしくてこちらも諫める気にもならない。

失敗して金をドブに捨てるのは筆者ではなくて、イージーなおじさんなので、勝手にどうぞである。

筆者が見るところ、Eコマースはブランドや企業にとっては不可欠だが、そこで成功するにはよほどの「何か」がないと不可能な状況になっていると考えられる。
2005年ごろのように、Eコマースのプレイヤー自体が少なくて、立ち上げればすぐさまある程度の売上高が見込めるという市場ではすでになくなっている。

それを数値を挙げながら永江一石さんが説明しておられるので、イージーなおじさんは熟読してもらいたい。

楽天をやめてどこに行くというんだ、ジョー・・・・
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=32386

発端は、楽天市場の凋落についての日経MJの報道である。
これは事実だ。出店者数も4万店台で足踏みが続いている。

ちなみにYahoo!ショッピングは出店者数が40万店ですでに楽天の10倍となっている。
楽天は抜本的な改革がなされない限り、このまま沈んでしまうだろう。

またAmazonの台頭も著しいし、ファッションならZOZOTOWNの一人勝ちともいえる。
これらに伍して支持されるだけの魅力が楽天市場には皆無である。

で、日経MJの記事は、「自社直営サイトかBASEでがんばる」と結論付けているのだが、これがおかしいと永江さんはご指摘されていて、その通りなのである。

まず、楽天の欠点について

○楽天は制限が多すぎる。しかもダサイ
○インスタなどの外部リンクが貼れない
※インスタ貼ったところで売り上げかわんないですけどね
○使いづらい
※そりゃ基本設計が20年くらい前のものですから・・・
○上納金高すぎ

とのことで、ここに異論のある人はいないだろう。

問題はその次なのだが、現在のEC市場はどうなっているかというところで、

これは講演とかがあるといつも言ってることなんですが、15年前はネットショップとか始めるとすぐに月数十万から数百万くらいの売り上げが上がりました。

商材によっては数ヶ月たったら月商500万とかいう事例もありました。嘘のような本当の話。

しかし現在では、よほど名前の通ったブランドやリアルの店舗が多数あるようなもの、大量の広告投資を行ったケースを除いてはこんな美味しい話はございません。逆に15年前から比較する99%のネットショップはアクセス数、売り上げともに落としているはずです。

とのことで、これも体感的にはその通りではないか。
イージーなおじさんはここに目をつむっているか、そもそもネットを触らないのでまったく知らないかのどちらかなのだろう。

で、ここからが今回の秀逸な部分なのだが、

なかなか年度が古いものがないのだが、日本のB to CのECマーケットは2005年に3.1兆。2015年に13.8兆だから、10年で4.5倍になったわけ。

でね。どうググっても「マーケットは拡大した」というのばかりで、ECサイトの数自体はどうなったかの調査がない。

まあ、数えるだけでも大変だし、調査のしようもないというのもありますが、3年前に講演したときに人力で数えてもらったら、ざっくり見ただけで数十倍以上になってました。細かいのまでみたら数百倍でしょう。

いまでは小洒落た小売店ならたいていサイトがあってネット販売もしている。ほとんど売れてはいないと思うがBASEみたいな無料のCMSもある。BASEみたらこれで30万店がオープンしたとあります。

市場が5倍になっても店舗が数百倍ですよ


とのことで、競争率は格段に高まっている。

イージーなおじさんやイージーなコンサルがECを「魔法の杖」みたいに考えている理由の一つに、EC市場規模の拡大ということが挙げられるが、彼らはECサイトの数がどれだけ増えているかにはまったく気が付いていないのである。

下手をすると、ECサイト数が増えたからEC市場規模が拡大したと考えられないこともない。

確率論だけでいくと、売上規模が5倍になっても、店舗数が数百倍になっていたら、これはかなり競争が激しくなっている。ここを考慮せずにECを「魔法の杖」みたいに考えている人らはちょっとおかしいんじゃないかと思う。

日経MJの記事では、ユナイテッドアローズやメガネのオンデーズが自社ECで好調な一例として挙げられているが、それ、どっちも大手企業だから!
無名の零細企業が参考にできるモデルケースではない。

無名の零細企業が、「ただ単に」ECサイトを立ち上げたところで、埋没してしまってだれからも注目されない。

イージーな人たちはネットに対して「ネットは世界と直結しているから売れるはず」というが、いくら世界と直結してようが、そのネット空間に店は何百万店・何千万店もある。
何百万店もある中から、どうして無名の店に「わざわざ」客が来るのだろうか。
ちょっと考えればわかりそうなものだが。

永江さんの提示する解決策は

○エッジの効いたオリジナルの商品
○良質なコンテンツSEO
○正しいソーシャルの運用

であり、それを実施てきている企業は極めて少ない。

話は逸れるが、「ユニクロのEC化比率は5%程度と低いのが弱点だ」なんて言ってるちょっとアレな人たちがいるが、ユニクロは自社直営ECだけで売っていて、売上高が400億円以上もある。
シップスやフランドルよりもユニクロのECだけの売上高の方がはるかに大きい。
%だけを見て絶対額を考慮していない「%バカ」の典型といえる。


EC市場が広がる可能性はまだあるが、それ以上に店舗数は増え、競合は激化する。
無策で無名の零細企業が売上高を拡大できる要素はすでにゼロである。EC市場で競争を勝ち抜けるのは、それなりの大手企業か、無名の零細でも「無策ではない」企業に限られる。

カネもアイデアも知名度もない企業が一発逆転できるなんていう甘い市場ではすでになくなっている。