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南充浩 オフィシャルブログ

100円ショップでの糸販売を始めたニッケ

2012年8月30日 未分類 0

 毛紡績最大手のニッケが100円ショップ向け商品の開発・卸に参入したという記事が8月26日の産経新聞に掲載された。

「もっと薄利多売だと…」毛紡績最大手が100円ショップ事業に参入したワケ
http://www.sankeibiz.jp/business/news/120826/bsc1208261931002-n1.htm

見出しだけを読むと、一瞬「ニッケが100円ショップを展開か?」と勘違いしそうになるが、ニッケが100円ショップ向けの開発・卸企業を買収したという話だった。

ニッケというとメンズスーツ関連の生地が思い浮かぶ。
ダーバンの夏用メンズスーツ「モンスーン」の生地はたしかニッケが開発していたと記憶している。

さて、記事を引用すると

 大阪府枚方市の京阪電気鉄道枚方市駅からタクシーで10分あまり。企業の研究所や工場が集中する「枚方東部企業団地」の一角にこぢんまりした倉庫と社屋が現れる。昨年3月、ニッケグループの傘下に入った友栄(ゆうえい)の本社だ。

(中略)

 友栄の平成23年9月期の売上高は7億6千万円、24年9月期は8億円弱を見込む。利益は非公開だが、石井社長は「単月の赤字はなく、卸売業として安定して利益を生み出している」と打ち明ける。

 生産コストの安い中国やベトナムなど東南アジアのメーカーから製品を輸入するほか、プライベートブランド(PB=自主企画)商品を開発し、100円ショップチェーンに卸している。なかでも使い捨ての紙コップやストロー、アルミ鍋、割りばしなどアウトドア用品、パーティー用品の品ぞろえが豊富という。

とのことである。

この友栄という企業だが、数年前に一度訪問したことがある。
当時は違う仕事だったので取材ではなく、営業活動の一貫だった。

今回の買収は、友栄に後継者がいなかったことから、証券会社が仲介したと記事中にある。

実は、野田課長は友栄の創業家出身だが、経営には興味がなく、オーナーだった父に対し家業の売却をすすめた。ニッケグループに買収されてからも、好きなクリエーターとして残った異色の経歴を持つ。

とのことだ。

数年前にお相手していただいたのは、今回引退された創業社長だった。
真面目な商売人という印象で、かなり丁寧に対応していただいたことが印象に残っているが、社長はおそらく覚えておられないだろう。

さて、今回の買収によって、ニッケ側には

毛紡績最大手のニッケの本業とはまったく関係なさそうだが、「毛糸を100円ショップで販売できるかも」(石井社長)との思惑があったようだ。ニッケの毛糸は1玉800~千円程度の高級品が主流だが、子会社で1玉100円の新製品を開発し、今年7月から友栄を通じ、100円ショップへの納入を始めたところ、早くも好評を博しているという。「毛糸の新たな販路も開拓でき、シナジーが出ている」と石井社長は胸を張る。

との思惑がある。

昨日のブログの補足ではないが、早くも大手メーカーは雑貨店への「糸売り」に着手し始めているということになる。
多くの中小の糸メーカーは、「生地メーカーへの卸売りしか販路がない」と思い込んでいる。
実際に、最近接触の多い糸メーカー各社は「どのように卸先を広げるか?」「今の卸先に取り引き量をどれだけ増やせるか?」に重点を置いている。
これはこれで正しい営業戦略だと思う。

しかし、生地メーカーの廃業が相次ぎ、アパレル各社も製造量を絞り込んでいる現状では、生地メーカーを新規開拓することも、現在の卸売り先に取り引き量を増やしてもらうこともかなり困難である。

それならば、今まで遠い存在だと思われがちだった消費者に「糸そのもの」を販売してみてはどうか?
糸メーカーが直営ショップを運営しても良いだろうし、今回のニッケのように100円ショップや雑貨ショップへの「糸売り」を模索してみても良い。

今回のニッケの記事は、糸メーカー各社に大きな示唆を与えているのではないだろうか。

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