予定を変更して(予定なんてないけど、言ってみただけ)今日はこの話題に触れたいと思う。

三越伊勢丹HD、大西社長が辞任へ 多角化の成果出ず
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ05H6O_V00C17A3MM8000/

 三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長(61)が3月31日付で辞任することが5日わかった。傘下の事業会社、三越伊勢丹の社長も同時に辞任する。消費者の百貨店離れが進むなか、事業の多角化を目指す構造改革で成果を上げることができなかった。後任の社長は週内をめどに社内から選ぶ方向で調整し、石塚邦雄会長(67)は当面続投するとみられる。

 大西氏は2012年に三越伊勢丹HDの社長に就任。消費者との接点を広げる小型店の積極出店などに取り組む一方、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)や婚礼事業のプラン・ドゥ・シー(東京・千代田)といった外部企業との提携も推進してきた。

 ただ、17年3月期の連結営業利益は前期比28%減の240億円となる見通し。急速に事業分野を広げる大西氏に対し、社内からは「少ない人数で運営している現場への負荷が大きい」との指摘も多かった。

とのことで、直近の業績急低下を見ていると、引責辞任もやむなしだと感じられてしまう。

昨年、6回に渡ってインタビューをさせていただいたこともあるので、今回はこのニュースについての感想をまとめてみたい。あくまでも個人的な感想である。

記事中で挙げられている多角化の事例のほかに、外食産業のトランジットジェネラルオフィスとの合弁会社設立や旅行会社ニッコウトラベルの買収などもあり、2012年の就任以来、百貨店のみでは限界があるとしての多角化を進めていた。

今回の辞任発表は、多くの方々が指摘しておられるように後任を決めないままの辞任発表なので、かなり異例で異常な事態だといえる。

同社の決算は3月期で、5月に毎年決算発表がある。
実はそれに向けて、新経営計画を策定しており、決算発表前に一度聞かせていただけそうな話もあった。

それだけに今回の辞任発表はかなり突発的な何かが内部で起きたと考えられる。

個人的な印象では昨年秋口からムードが変わったと感じる。
というのは、東洋経済オンラインに社内の反対派の大西改革への否定的なコメントが掲載された。

そのときに「ああ、業績に陰りが出て、反対派の活動が活発になってきたんだなあ」と感じ、下手をすると反対派に足元をすくわれることがあるかもしれないとも感じたが、それが現実になったということだろう。

知り合いの某経済誌記者にその話をすると、「実は大西反対派の愚痴みたいなものは以前からも頻繁に寄せられていた」との返事があったので、以前から根深い対立があったのだと改めて感じた。

業績の急低下の原因はいくつかあるのだろうけど、目に見えての大失敗は銀座三越店の改装だろう。
爆買い重視の改装だったが、改装オープンと同時に爆買いのムードは終結した。
その結果、中国人は来なくなり、日本人客も離れた。

インタビューでは、大西社長自ら「中国人客を重視しすぎて、日本人の富裕客層の上位3割が離れた」と認めておられた。

大西社長が提唱された改革の中身が正しかったのかどうかはわからない。
最終形態にたどり着いておらず、結果がわからないからだ。

しかし、方向性の正誤は別として、百貨店が今までのままで生き残れる可能性はほぼないから、何かを変えねばならなかったことは事実である。

トランジットとの合弁会社による、新規外食店はやっと今年4月に第1号店オープンが発表されたばかりである。

シドニー発のイタリアンダイニング「フラテリ パラディソ」を4月末に表参道ヒルズにオープンするとのことだが、筆者のような田舎者にはシドニー発のイタリアンというのはなんだか微妙なフレーズだと感じられてならない。たとえて言うなら、「東京発の本格中華料理」みたいな感じを受けてしまう。

まあ、中身はともかくとして第1号案件がやっと決まったばかりだ。

また、以前から旅行業強化を掲げていて、先日、ニッコウトラベルを買収したばかりである。

改革プランの良し悪しは別として、やっと形になったばかりのものも多かった。

これらの案件は、社長が辞任することで、間違いなく方向転換は強いられるから、当初に描かれていた完成形態にたどり着くことはできなくなった。
逆にすべての合弁事業が中途半端な尻すぼみで終わってしまう可能性も極めて高い。
尻すぼみで終わればかえってホールディングスの収益を圧迫することになり、三越伊勢丹HDはかなり厳しい状況に追い込まれると個人的には見ている。

じゃあ、これまで通りの三越と伊勢丹のやり方、ひいては百貨店のやり方を継続していればよかったのかというと、その選択肢がありえないことは誰しも認めるところだろう。
現に、「これまで通りのやり方」で百貨店の業績は低下する一方だったから、そのやり方は間違っていたということである。

残念ながら、三越に往年の勢いはすでにないし、伊勢丹のファッション特化路線は新宿本店以外で成功したためしがない。

名古屋のイセタンハウスも苦戦しているという話しか聞かないし、大阪・梅田のルクアイーレの伊勢丹コーナーも縮小されている。JR京都以外の地方店では伊勢丹は連戦連敗である。

伊勢丹はトップから現場まで東京大好き人間で固められている。
大西社長自身だって、著書で明かしておられるように、就職する際、東京にあるという理由で伊勢丹を選んでいる。

東京大好き人間だけで固められた百貨店が地方民の需要を正確に把握できるはずがない。
伊勢丹新宿店のような「先端ファッション」を求める人数は地方には少ない。
そもそも各地方の人口は首都圏の足元にも及ばない。
ファッション大好き人間の比率は変わらなくても、分母が少なくなれば実数も少なくなる。
それだけのことである。

三越も変わらない、伊勢丹も変わらないということを反対派が選択したのなら、三越伊勢丹HD自体も三越という暖簾も伊勢丹という暖簾もこのまま衰退することになる。

百貨店という業態も、変わらないなら売上高はこのままどんどん低下し続ける。

今回の異例の事態はそんな未来を確実にしてしまったのではないか。