洋服が売れない理由はさまざまあるが、その一つに「前年実績主義」がある。

これはPOSの発達による部分も大きいとは思うが、前年売れた物を再度投入するというやり方だ。
もちろん、洋服には「定番」と「シーズン物」「トレンド物」があり、「定番」は文字通りの定番品なので何シーズンにも渡って販売されるのは当然といえるが、昨今の不振ブランド、不振店の多くは「シーズン物」「トレンド品」までを前年実績主義で品揃えしてしまう。

これには、各社の「失敗したくない」というチビった姿勢が表れているのだが、結局、上層部を説得する材料が「前年実績」しかないからだろう。

意見を押し通せない現場もだらしないし、単純に前年実績でしか判断できない上層部も情けない。
上も下もそうだからブランド全体、社全体が低迷するのは当然の結果といえる。

定番品とシーズン物、トレンド物の構成比率は当たり前だが工夫する必要がある。
ブランドや店ごとにコンセプトや売り上げ目標に対してその構成比率は変わる。
このあたりの計数管理はマーチャンダイザーの仕事であり、その職務経験のない筆者に教える能力はない。

佐藤正臣さんあたりに習われた方が良いだろう。
http://www.apalog.com/fashion_soroban/

それはさておき。

チビってブルっている各社は過度に前年実績主義にすがるから、何年間も同じ物が売り続けられることになる。
そういう商品が1型とか2型とか程度で展開されるなら何の問題もないが、定番品でもないのに何年間も同じ物が数多く売られ過ぎていることが問題なのである。

先日、アクセサリー・ファッション雑貨向けのある部材メーカーにお邪魔した。

さまざまな百貨店向けアパレルとの付き合いがある会社なのだが、チビってブルっている百貨店向けアパレルは、もう何年間も同じ商品を発注し続けてくるのだという。
デザインを買えるわけでもなく、アレンジのやり方を変更するわけでもなく、形は同じでせいぜい色柄を変えるだけの発注をもう10年間も続けているブランドもある。

メーカー側としては、デザイン変更も提案したし、アレンジ変更も提案したが、ブランド側が「前年実績通りで」という返事しか出さないため、10年間同じ商品を作り続けている。
メーカー側は「10年も同じ商品を投入し続ければ売れなくなるのは当たり前」と吐き捨てるが、まさにその通りである。

また別の衣料品メーカーでは、3年前にそこそこのヒットを出した商品を、ほとんど変えることなく投入し続けているが、やはり売上高が鈍ってきているとのこと。
商品のプランニング担当者は「同じ商品を3年も投入し続けたら飽きられるのは確実。初年度は新規性で売れる。二年目は昨年買えなかった人が買うから売れる。でも3年目は行き渡っているし、飽きられているから売れなくなるのは当然」と指摘するが、上層部が「前年実績」に固執した結果、そういう商品政策となってしまっている。

これで4年目も変わらなければ、この衣料品メーカーの業績はさらに低下するだけだろう。

どんなにバカ売れした商品だって何年間も同じ物を投入し続ければ、売れなくなるのは当たり前で、かつてのユニクロのフリースだって、大ヒットの反動で大ブレーキとなり、売上高が激減した時期がある。
2002年あたりのことだ。

今でもフリースは売られているが、店頭での展開数量は2000年ごろと比べると圧倒的に少ない。
2016年秋冬シーズンなんてフリースの存在感はほとんどない。
根強いファンがいるので、店頭には並んでいるが、数量は全盛期の何分の1という程度である。

考えてみれば当たり前のことで、いくら何百万枚売ろうが、複数年に渡って展開し続ければ多くの人は所有するようになっているし飽きている。
新色・新柄投入といったって根本的には何も変わっていないのだから、買われなくなるのは何の不思議もない。

毎年秋冬にユニクロのフリースを複数枚買い続ける人間なんて存在しない。

需要はゼロにはならない。買い替え需要もあるだろうし、今まで持ってなかった人が買ってみたいという場合もある。しかし、その枚数は全盛期とはケタ違いに少ない。
需要と供給とはそういうもので、服に限らずiPhoneでも自動車でも液晶テレビでも永遠に同じ数量だけ売れ続ける商品なんてものはこの世にはない。

定番品は別として前年継続品があるのはかまわない。
問題の本質は、前年継続品番があまりにも多すぎることである。

これによって店頭は新鮮味がなくなるし、各社から類似品も出回り店頭が一挙に同質化してしまう。
同じようなものなら、値段の安いところで買おうと思う人が増えるのは自然な流れである。

前にもこのブログで書いたが、3年位前まで、秋冬の大型スーパーの肌着売り場には「保温ステテコ」「発熱ステテコ」なる珍妙な商品が数多く並んでいた。

そもそもステテコというのは、春夏向けのズボン下(ズボンの下に穿く肌着。汗でズボンの裏地が肌に貼り付くことを防ぐ)であり、秋冬にはパッチ・股引と呼ばれる保温肌着が古くから存在する。

はっきりといえば、パッチ・股引・タイツがあるから、秋冬向けの保温ステテコなんていう商品は存在意義がない。

じゃあ、どうしてこんな珍妙な商品が数多く並んでいたのかというと、アホみたいな「前年実績主義」の賜物である。

2010年くらいから春夏の部屋着として、色柄を工夫したステテコが注目を集めた。
2011年の電力不足からそのステテコブームが拡大して、各社とも相当な売れ行きとなった。

2012年もその人気はある程度続く。2013年になると人気は陰り始める。
2014年には終わった。

しかし、前年実績主義でやると肌着売り場には「ステテコ」という商品の前年実績がある。
この「ステテコの前年実績」を守るためには春夏で落ち込んだ分を、秋冬で稼がないといけない。
かくして秋冬向けの「保温ステテコ」なんていう意味の分からない商品が作られて並べられた。

2016年秋冬の売り場では見たことがないので、各社とも大爆死で終わったのだろう。

当たり前だ。こんなに存在意義のない商品が売れるほど世の中は甘くない。

「ステテコの前年実績をキープせよ」と命じた大型スーパーの経営陣が一番のアホで、それに従った現場、メーカーも結果的にはアホだった。

これが「過度な前年実績主義」であり、百貨店も大型スーパーもその病に根元まで冒されている。
そして「保温ステテコ」みたいな意味の分からない商品を作っている。
そりゃ、衣料品・ファッション雑貨が売れなくなるわけである。