三陽商会が遅れてきた中期計画を発表したのだが、無難な感じにまとめられており、新鮮さ斬新さはなかったと感じた。

長らく百貨店にほぼ特化してきた同社だが、ショッピングセンターへ進出し、ファッションビルとネット通販を強化するという内容で、常識の範囲内でまとまったという印象が強い。

即効性はほぼ期待できず、どれだけ地道に気長に根気よく取り組めるかにかかっていると思う。
この内容で、V字回復できると思っている人がいるなら、ちょっとその見識を疑う。

三陽商会、直営店とECに投資 新中計を策定
https://www.wwdjapan.com/381482

この記事が過不足なく公平にまとめていると思う。

同社にとって売上高の7割を占める百貨店の市場縮小を見据え、ECやショッピングセンター(SC)での事業拡大に乗り出す。

とあるが、残念ながらショッピングセンターも市場規模は縮小しているし、ECは市場の拡大ペースが鈍化しており、優勝劣敗が鮮明になりつつある。
とても後発の企業が一朝一夕で業績を拡大できる状況ではない。

ちょっと脱線するが、同じ事柄でも書き方一つで大きく変わる。
このWWDの記事や繊研新聞の記事なら、「新鮮味はないがまあ、それしかやりようがないよな」という感想を持つが、正式発表の前に書かれた日経新聞の記事なら「今さら何を言ってるの?三陽商会の首脳陣はちょっとおかしいんじゃないの?」と感じられる。

記事の切り抜き画像を貼っておく。

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見出しは「三陽商会、SCや駅ビルに活路 百貨店苦戦で 低価格の新ブランド」となっており、現在のSCや駅ビルの状況を知っている人間にとっては「そこに活路なんてないわ」としか感じられず、そこに「活路がある」と思っている経営陣はおかしいのではないかと感じられてしまう。

日経新聞としては、新機軸をより集中的に書くことで、記事への注目度を高めたかっただけだと思うが、この書き方では注目は集まるかもしれないが、三陽商会の首脳陣の見識が疑われる方が可能性が高いのではないかと思う。

自戒も込めて気を付けなくてはならないと改めて思う。

それはさておき。

識者の方々は置いておくとして、SCももう青天井の状態ではない。
単なる体感で語ってるわけではなく、数字がそれを示している。

2016年(暦年)の既存SC売上高対前年比は▲1.1%と2013年以来3年ぶりに下回った。
http://www.jcsc.or.jp/cat_sales/p_20170209_6586

日本ショッピングセンター協会の正式発表である。
既存店ベースでは前年割れを起こしているのであり、個人的には来年以降もこれが続くのではないかと考えている。

ちなみに新店も含めた業績は

SC年間総売上高(全SC 3,212ベース・推計)は、速報値で31兆1,241億円で前年比+0.1%となった。テナント総合は▲0.9%、キーテナント総合は▲1.4%となった。

とあり、▲はマイナスという意味で、新店を合わせてすら0・1%増にしかなっていない。
新店効果はほぼなかったということである。

ショッピングセンターにこれから新規参入する三陽商会は並大抵ではない苦戦を強いられるであろうことは容易に想像できる。
さらにいえば同じ大手の一社であるイトキンはショッピングセンターを大幅縮小しており、そこに三陽商会が新規参入するというのはよほどキチンとした構想を持って当たらないと確実に失敗するだろう。
どのような構想を描くのか注目したい。

また駅ビル(いわゆる駅近隣のファッションビル)だが、これもすでに成長分野ではなくなっている。
しかし、定期的に不振テナントを入れ替えるため、最初のチャンスくらいはもらえるだろう。
問題はそこで出店した後、実績を残し続けられるかどうかである。
売り上げ不振が続けばテナントを入れ替えられるだけである。

業界紙の中には、小規模ながら実績を残した同社のギルドプライムに期待する声もあるが、ギルドプライムはかなりニッチな層に特化しており、大規模に成長する見込みはほぼない。
テイストを薄めるとそれは可能かもしれないが、おそらく「ブランドらしさ」がなくなって逆に大苦戦に陥るのではないか。

WWDの記事中にもあるように新ブランドを立ち上げて対応するしかないが、マンパワーが低下した三陽商会にヒットを飛ばせる新ブランドを立ち上げられるような人材が残っているのかどうか疑問を感じる。

EC(いわゆるネット通販)に関しても同じで、成長分野と目されているものの、アパレルに関してはなかなか厳しい状況になっている。
先日、ここでも書いたが、先行していた通販のスクロールがアパレルECの撤退を決定した。
年商600億円規模の通販会社ですらアパレルECは成功できなかった。

これまでEC分野では、ほぼ鳴かず飛ばずだった三陽商会がすんなりと業績を拡大させてもらえるとは到底考えにくい。

今回中期経営計画で打ち出されたいずれの項目も、苦戦が予想されるので、三陽商会は引き続きイバラの道を歩むことになると思う。

記事中では、駅ビルに関して

それでも岩田社長は「失敗の経験も生かせるはず。モノ作り、MD、価格設定などうまくいかなかった理由を分析し、一つ一つつぶしていく」と再チャレンジに意欲を見せる。

という抱負が述べられているが、駅ビル以外のSC、EC、その他全分野に対してこの姿勢で臨む必要がある。

そうすればもしかすると将来的には展望が開ける可能性がわずかながら残っている。
どの分野に対してもイージーには考えておられないとは思うのだが。

くどいようだが、今回打ち出されたどの販路もすでにレッドオーシャンになりつつあり、V字回復できることは考えにくいので、その部分を加味して取り組んでもらいたいと思っている。