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南充浩 オフィシャルブログ

強者に追随する弱者

2012年8月28日 未分類 0

 先日、某素材メーカーの役員から「百貨店アパレルから『ユニクロで売れているあの商品と同じ素材を売ってほしい』と言われることが、ここ数年で日常的になってきた」との声を聞いた。

これには正直驚きを隠せないのだが、ユニクロで売れている各種アイテムは、安ければ1000円、高くても5900円ほどである。(この範囲に収まりきらない商品も一部ある)
百貨店に納入するアパレルの店頭販売価格は、Tシャツ類を除くと安くて5900円、高ければ2万円以上になる。

ジーンズを例に採ると、ユニクロは3990円である。百貨店アパレルだと安くても1万円は超える。
価格にこれくらいの開きがある。

さて、ユニクロで某アイテムが50万枚売れたと仮定する。
百貨店アパレルが、それと同じ素材を使って商品を製造したとして、50万枚はとてもじゃないが売れない。
なぜなら店頭販売価格が違いすぎる。
ユニクロのこの商品の価格が2990円だとする。
おそらく百貨店アパレルは少なくとも9800円くらいになるだろう。

いくら同じ素材を使っているからと言って、近所のユニクロで2990円で購入できるものをわざわざ百貨店まで行って9800円で購入する消費者がどれほど存在するだろうか。

件の素材メーカー役員によると、百貨店アパレルは「ユニクロで50万枚売れたんだから、同じ素材を使えばうちだってそれ並みに売れるのではないか」と主張するらしい。

しかし、店頭販売価格が3倍近く違ううえに、顧客層もまるで異なる。
百貨店愛好者や高額所得者の中にもユニクロ愛好者はそれなりにいるが、ユニクロを愛好する消費者層は多岐に渡っている。低所得者層や中所得者層も数多く取り込んでいる。
高額所得者層の一部を取り込んでいるに過ぎない百貨店アパレルとは、顧客層も違えば、顧客数も大きく異なる。

これだけ異なるのに、何故百貨店アパレルが「ユニクロのあの商品と同じ素材を使えば、うちもユニクロ並みに売れる」との考えに至るのか理解に苦しむ。

何度もランチェスターの法則を引用している。
弱者の法則は、ニッチ戦略であり、1点突破主義である。
強者の法則は、追随主義であり、圧倒的な物量作戦である。

現在のアパレル業界を見ると、強者はユニクロであり、百貨店アパレルは弱者である。
強者ユニクロが、弱者の百貨店アパレルに対して追随主義で物量作戦を展開するなら理解できるが、弱者である百貨店アパレルが、強者ユニクロに追随するのは明らかに愚策である。
圧倒的物量で攻めるならまだしも、物量はユニクロに遠く及ばない。これではユニクロに勝てるはずが無い。

傍から見ていれば容易にわかりそうなものだが、いざ、自分がその中に入ってしまうと物事は見えないらしい。

自戒も込めて、改めて気をつけなくてはならないことを痛感した。

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