筆者は基本的にペーパードライバーであり、それがためにゴールド免許を持っている。

しかし、免許を取得してから一度も運転をしなかったわけではなく、何度か練習を兼ねて運転をした結果、ペーパードライバーになった。

理由は運転が好きじゃないからだ。
運転している時間が苦痛で仕方がない。バスや電車なら寝てたり本を読んだり、スマホでニュースを読んだりできるが、運転している間はそれができない。
運転という行為に正直なところまったく面白みを感じなかったし、今でも感じない。

しかし、親父と二人暮らしになってから、もしものときは親父を病院まで運ぶ手段がないから、自動車の運転練習を再開すべきだろうかと思い始めた。

練習再開といっても、近隣の病院まで往復できればそれで良いので、例えば自動車で遠出したりなんていうことはこれっぽっちも考えていない。せいぜい、電車では行きにくい国道沿いのイオンモールへ行くぐらいである。

それほどに自動車の運転という作業には面白みを感じない。

そんな筆者がもしも自動車を買うとしたら今の軽自動車を選ぶ。

内側のスペースも広くなっているし、外見もそれなりにスタイリッシュになっている。
また、カーナビなどの装備も充実しているし、燃費も良くてスピードもそれなりに出る。

産地に取材に行ったりすると、軽自動車で迎えに来ていただくこともある。
乗せてもらって痛感するのだが、20~30年前の軽自動車とは雲泥の差である。

縁戚のおじさんにいまだにかなり古いタイプの軽自動車に乗っている人がいるのだが、自動車はあまり詳しくないがみたところ20年近く前の車種だと思われる。
もちろんカーナビなんて付いていない。パワーウインドウすらついていないのではないかと思う。

たまに乗せていただくのだが、やっぱり狭い。
快適性はまるでない。

同じ軽自動車でも今の軽自動車は格段に機能性とデザイン性がアップしていると、いつもおじさんの軽自動車に乗って痛感する。

男性には自動車好きが多い。
とくに運転そのものが好きな方も多い。

そういう方々は、非常に自動車にこだわる。

車種、デザイン性、機能性あらゆる点でこだわりがある。

走ることそのものが好きな人は、よく「日本車はつまらない」としてドイツ車などを選ぶ。
正直、その感覚はいくら事細かに説明してもらったところで筆者にはまるで理解ができないが、そういう嗜好が存在することだけは理解できる。

前置きが長くなったが、洋服も同じではないかと思う。

軽自動車に相当する低価格ブランドが、見た目も機能性も格段に良くなっており、ファッションにそれほど興味のない人にとっては、わざわざ高額ブランドやインポートブランドを買う理由がない。

何度も書いているが、30年前のジャスコの平場に並んでいる洋服は価格が安かった反面、見た目が死ぬほどダサかった。
いくらイケメンモデルが着用してもあのダサさは隠しきれなかっただろう。

使用している生地もいわゆる「ブランド物」とはまったく異なっていた。
ペラペラだったり色・柄がおかしかったりした。

「ブランド物」と同じような商品が欲しければ、「ブランド店」で買うほか手段がなかった。

だから筆者のような人間でさえ、DCブランドのバーゲンで服を買っていたのである。

今、低価格ブランドの衣料品は軽自動車同様に、見た目も機能性も向上した。
黙って着ていたら、そこらへんの百貨店やファッションビルに並んでいる洋服と区別ができない商品も増えた。

そうなると、低価格衣料でも十分だと考える消費者が増えることは不思議でもなんでもない。

一方、ファッションの好きな人というのは確実に存在するが、それは最早マスではない。
自動車そのものや運転すること自体が好きな人と同じような存在だといえる。

自動車好きの人はわざわざ高い車、燃費の悪い車、メンテナンスのめんどくさい車を買う。それが「味」だと言って。

これって、いわゆるオサレを自認するファッショニスタと呼ばれる人や業界人と同じではないか。

「味」だといって、髙い服、不必要なウンチク満載の服、メンテナンスのめんどくさい服、などを激賞して推奨する。

実はその判断基準は多くの人には理解されない。もちろんそうした判断基準が存在すること自体は理解できるが、多くの人はそういう服に惹かれる感性が理解できない。

筆者が自動車好き・運転好きの人間の感覚を理解できないのと同じである。

ファッションも自動車も「他人からどう見られたいかという要素がある」と指摘する人もいる。
たしかにそれはその通りである。
自動車の場合、ベンツとスズキの軽自動車は一目瞭然で違いがわかる。

とくにメーカーのエンブレムは絶対的に区別がつきやすい。

一方、洋服はどうだろうか?

ブランドのロゴやモノグラムが入ったアイテム以外はほとんど区別ができない。
バックポケットにステッチのないジーンズはユニクロなのか無印良品なのかドゥニームなのか、よく見てみないと区別ができない。

タグやリボンが付いていないMA-1タイプのブルゾンは、ユニクロなのかナノユニバースなのかユナイテッドアローズなのかは見ただけでは区別ができにくい。

そうなると、「かっこよく見られたい」と思っている人でさえ、低価格ブランドで十分だと考えてしまっても何の不思議もない。

今後、さらにそういう人は増えるだろう。

いわゆるそこそこに高額なファッション品を打ち出したいアパレル、ブランドは、割り切ってマニア層を狙うべきであり、ライトなマニア層あたりまでを獲得することを考えた方が合理的で論理的である。

いわゆるファッション品を打ち出しながら、マス層に買って欲しいと考えることは論理的には破綻している。
そして、そういう理解されづらいファッション品を打ち出しながら、「それを理解できないのは消費者が退化したからだ」などという妄言を吐くのは、愚か者のする行為である。