アパレル企業にはファミリーセールと呼ばれる会員向けのセールがある。
業界の人はおなじみだろう。

2~3日間、どこかのホールを借りたり自社の倉庫で、定価の半額くらいで商品を販売する。
もともとは社員の家族、親族を呼んでの割安販売だったのでファミリーセールという名称になったが、現在は赤の他人が圧倒的に来場する格安販売イベントとなっている。

だいたいのアパレル企業が、以前は5~7月、11月~12月の年2回のペースで開催しており、我々は、「あれが夏冬の社員のボーナスの原資になる」と言い合っていたものだった。

97年の山一・拓銀倒産ショック以降、洋服不振が強まり始め、過剰在庫を軽減しつつ、収入を増やす目的からかファミリーセールを乱発する企業も増えた。

97年に繊維業界紙に入社すると、さまざまな取材先からファミリーセールの案内をいただくようになった。
オンワード樫山、ワールド、ジョイックスコーポレーション、ヤマトインターナショナル、伊藤忠商事、大賀などから案内をいただき、実際に足を運んで買い物をした。

2005年ごろからファミリーセールに足を運ぶ回数が減った。
理由はいくつかある。

1、日程が合わないことがある
2、会場が遠方過ぎて行くのがめんどくさい
3、思ったほど割引率が高くない
4、ファミリーセールに行かなくても安い商品が年中手に入るようになった

という感じである。

1はどうしようもない。また日程が合うときに行くほかない。

2は、ワールドやジョイックスコーポレーションである。
ワールドは神戸、ジョイックスコーポレーションは昔、加古川で、今は明石で開催するがいずれも遠い。
移動時間と電車やバスの運賃を考えるとめんどくさくてもったいない。
そういう理由で行かなくなった。

3は、オンワード樫山で、今はどれくらいの割引率かしらないが、90年代後半とか2000年ごろは定価の3割引き程度で、それなら何もわざわざホールに足を運ばなくても通常の商業施設の夏冬のバーゲンで事足りる。

4が一番深刻だと思うが、筆者はこの理由でファミリーセールに熱心ではなくなった。
他の方々はどうだろうか?

コスパを最重視する筆者がどうして2005年ごろまでファミリーセールに定期的に足を運んでいたかというと、その当時は安い商品と、いわゆる「メーカー物」と呼ばれる百貨店・専門店向けアパレルの商品の見た目が圧倒的に違っていたからである。

安いに越したことはないが、量販店や低価格店で売られていた洋服は明らかに見た目がダサかった。
これはユニクロ、無印良品も同様である。
2005年までのユニクロ、無印良品の洋服の見た目は圧倒的にダサかった。

色・柄がなんだかおかしいし、シルエットも変だ。それにやたらとデカい。
襟や袖口などのディテールも違う。

確かに価格は魅力的だったし、生地や縫製の品質もそれなりに良いと言われていたが、見た目が圧倒的にダメだった。

だから、いわゆる「見た目の良い」洋服を安くで買おうと思ったら、夏冬のバーゲンかファミリーセールくらいしか選択肢がなかった。
ケチな筆者が夏冬のバーゲン、ファミリーセールで各ブランドの商品を買っていたのはそういう理由があった。

2005年ごろから低価格ブランドの見た目がマシになった。
この時期からユニクロを買うようになった。それまでにユニクロで買ったのは、ブーム時のフリース1枚とTシャツを数枚程度だけだった。

2016年に買い物をしたブランドは、ユニクロ、無印良品、ライトオン、ジーンズメイト、ジーユーの5つのみである。あと西友と(笑)。

低価格品と百貨店・専門店向けアパレルブランドの商品との「見た目の格差」がなくなった現在、ファミリーセールに通う必要性がほぼなくなってしまった。

年2回、毎回通うファミリーセールはヤマトインターナショナルのみになってしまった。

そのヤマトインターナショナルのファミリーセールが25、26日に大阪で開催された。
来年2月末以降にエーグルの事業譲渡が発表されているので、エーグルがファミリーセールに出品されるのはこれが最後になると考えられる。

ヤマトインターナショナルのファミリーセールは定価の半額が原則なので、エーグルは半額になっても高い。
しかし、人気はやっぱりあって、いつもエーグルコーナーは黒山の人だかりである。

ここ3年は、オグランジャパンの肌着やクロコダイルの靴下くらいしか買わなくなってしまったが、とりあえず恒例行事として足を運んでみた。顔見知りの社員も何人かおられるので声をかけることも目的にある。

ヤマトインターナショナルはクロコダイル、エーグルが基幹ブランドだが、ジーンズチェーン店向けにカーニーハウス、ユニバーシティオブオックスフォード、ジーンコックスなどのブランドも長らく展開している。

筆者も洋服販売員時代にオックスフォードを店舗で扱っていた。

もともとはカーニーハウスが低価格、オックスフォードがその上という価格帯でのすみわけがあった。
カーニーハウスだとポロシャツやカットソーが2900~4900円だが、オックスフォードはシャツが6000~8000円、ジャケットが19000~29000円くらいだったが、近年はこのすみわけが崩れており、カーニーハウスが値上がりしていた。

過去には、グロウベックやペリフェリックなどのブランドがあったが廃止になっている。
モード系カジュアルのグロウベックはあまり好きなテイストではなかったが、フレンチトラッドのペリフェリックはそこそこの高価格だったが好きで何枚か半額以下で購入していまだに着用している。

ヒロミチ・ナカノというブランドも前回まではあったが今回はなくなっていた。

さて、そのカーニーハウスとオックスフォードも廃止が決定したと、前回の夏のファミリーセールで社員から伺った。今回がカーニーハウスとオックスフォード、それからレディースのジーンコックスが出品される最後になる。

最後だからだろう。いつもよりこれらのブランドの割引率は高かった。
1000円、2000円という価格の商品が多く出品されており、本来買うつもりはなかったが1000円に値下がりしたヘビーオンスのチェック柄ワークシャツと、ウール・ナイロン混の無地セーターを買ってしまった。

肌着は西友で先日、4枚1000円のレナウンのを買っているので必要ない。今回は買わなかった。

これくらいで終わろうと思って、順路を進むと、基幹ブランド「クロコダイル」コーナーがあった。
以前にクロコダイルでも格安に値下げされたダウンベストを2枚ほど買っているが、本来は50代向けカジュアルなのであまり愛用しない。
クロコダイルの一画にクロコダイルトーキョーという少し若向きのラインがあったが、本来それは高いので、半額でも筆者は買わないことが多い。

ところが何の気なしに防寒アウター類の値段を見ると激安である。
5200~7400円である。
定価はいずれも2万円を越えている。

で、ついついその中の1枚であるグレーとネイビーのチェック柄ピーコートを買ってしまった。
定価28000円が5600円に値下げされており、実に8割引きである。

IMG_2048

(5600円で買ったチェック柄ピーコート)

使用素材の表示が少しイイ加減で(笑)、ウール・ポリエステル・その他としか書かれておらず、その配合比率が明示されていない。
しかし、触感としてはかなり上質な感じで、ユニクロや無印良品はともかく、ジーユーやウィゴー、H&Mあたりのブランドの素材とは比べ物にならないほど高級感がある。

全体的(袖、背中)に薄い中綿が入っており、これ1枚でほぼ完全な防寒ができる。

さすがは定価28000円(税抜き)といったところで、これが5600円(税抜き)で買えるのはかなり値打ちがある。

社員に尋ねると、このラインもなくなるそうで、ヤマトインターナショナルは「クロコダイル」本体のみのブランド展開になるのだという。
今後、新たなブランドをライセンス生産する予定だというがどんなブランドかはまだ発表されていない。

それにしても、来春から「クロコダイル」と新ブランドのみの展開となったら、これまで同様のファミリーセールを開催することは難しくなるだろう。

長らく親しんできたカーニーハウスやオックスフォードなどのブランドがなくなってしまうのもなんだか寂しく、クロコダイルのみなら自分がファミリーセールに足を運ぶ理由もほとんどなくなってしまう。

ちなみに、ジーンズチェーン店からはカーニーハウスやオックスフォードの存続要望が出されたため、担当チーム(オックスフォードとカーニーハウスの部署は同じ)がすでに独立起業して新たなブランド名で、ジーンズチェーン店への卸売りを開始していると、これも残った社員から教えてもらった。

それにしても、すさまじい激動である。

上場企業であり、老舗でもあるヤマトインターナショナルには何とかこの激動を乗り切ってもらいたいと思わずにはいられない。