昨今、高額な洋服は売れにくいとされている。
一般人からしてみれば、高額な洋服と安い洋服の何が違うのかよく分からないのである。

物作りガー的な人からすると「消費者が劣化している」とか「物の価値がわからない人が増えている」とかいう理屈になるが、でも、いくら憎悪してみてもわからんもんはわからない。
わかるようになるまで啓蒙活動をするか、今の消費者が評価しやすい物を作るか、そのどちらかしかない。
どちらもできないなら、それは仕方がないからどうぞ淘汰されてください、ということになる。

いつも書いているように、見た目がほとんど変わらなくなっていることは大きな理由だと思う。
百貨店アパレルの企画力、MD力が低下したと同時に、低価格ブランドの企画力・MD力が向上しているのが原因である。

例えばファーストリテイリングにはワールド出身者が本当にたくさん在籍している。
アダストリアにもワールドやらTSIの出身者がたくさんいる。

早い話、百貨店アパレルのノウハウは業界に拡散してしまった。
それに加えて長引く凋落ですっかり百貨店アパレルが保守的になってしまい、もっとも安全パイだと考えられる売れ筋の再生産に終始してしまったから、商品の見た目が変わらないという状況に陥っている。

売れ筋の再生産から脱却することは可能だが、流出したノウハウを回収することは不可能である。

だから、今後も低価格商品の見た目は最低でも今と変わらない。
以前の状態に戻ることは絶対にない。

今度は素材のことを考えてみる。

素材の良し悪しも正直なところあまりよくわからない。
超高級素材ですごく柔らかいとか手触りが良いとかそういうことはわかるが、でも安い素材でもそれなりによさそうな風合いをしていたり、手触りが良い物もある。
某大手セレクトショップのバイヤーがカシミヤ0%をカシミヤ70%だと言いくるめられて、誤表記をしたまま店頭で販売したことはそれを証明している。

担当バイヤーがちょっとアレすぎではないかと思うが、それを差し引いてもカシミヤが入っているように感じるくらいの素材だったということもできる。一般消費者なら確実に識別できなかっただろう。

モノづくりのプロに解説してもらうと、違いは判る。
しかし、逆にいえばそれくらいでないと違いが判らないということもできる。

「この風合いの良さが」とか「この味が」とか言われても、まあ、わからんではないが、すごく納得できるかというと微妙なところである。

だから、この味のある素材だからン万円ですと言われても、「そうですか」としか答えようがない。

この「風合い」とか「味」のみを追求する物作りの姿勢だけでは、今後永遠に高い価格で売れるようにはならないのではないかと思う。

個人的にはそこにプラスアルファの要素を加えてはどうかと思う。

例えば機能性の付加
ゴアテックスという機能性素材がある。透湿防水機能である。
でもゴアテックスは高額である。
現在ではほぼ同じ機能の廉価素材もあるが、ゴアテックスはブランド化しており、高値でも売れる。
筆者なら7990円のブロックテックパーカで十分だが。

次にわかりやすいネーミングを与える。
これはユニクロが得意とするところだが、例えばブロックテック、ヒートテック、エアリズムなどである。
ネーミングだけでどんな機能があるのかなんとなくわかる。

ネーミング変更はアパレル業界が元来、得意とするところである。

今夏トレンドとなったスライドサンダルだが、もともとはシャワーサンダルと呼ばれていた。
海水浴やプールの前後にシャワーを浴びる際に使われる形のサンダルだからだ。
また便所サンダルと呼ぶ人もいた。(筆者である)

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シャワーサンダル、便所サンダルという呼び名のままなら、果たしてトレンドアイテムになったかどうか。
名称を変えたからヒット商品になるという事例はけっこう存在する。

じゃあ素材にもそういう工夫を凝らしてみればどうだろうか。
洋服にも同じようにネーミングを工夫してみればどうか。

「100双糸超細番手使用のシャツ生地」では一般消費者はそれが高級素材なのか何なのかわからない。
「ムラ糸使い12オンスデニム素材ペインターパンツ」というのは商品名としてどうなのだろうか。
果たしてどれだけ一般消費者に対して訴求力があるのだろうか。

この辺りを工夫することで、高価な素材と安い素材が消費者にもわかりやすくはならないだろうか?

機能性の付加と、ネーミングの工夫。

これをもう少し真剣に考えてみてはどうか。「風合いガー」「味ガー」を百万回連呼しても消費者の認識は変えようがない。