8月からindependというウェブメディアで月に1本か2本を書くことになった。

https://independ.tokyo/

トレンドとかショップのことはすでにこれまでから書かれているので、製造加工業のことを中心に書くことになる。

手始めに高野口産地の2社について書いた。
なぜここを選んだのかと言うと馴染みが深いから取材に行きやすいという理由もあるが、日本で唯一のフェイクファー産地でありながら、知名度が今一つ業界内でも高くないというところである。
せっかくなのにもったいないなと思い、少しでも認知度を高めたいと思ったからである。

前編が岡田織物で、後編が妙中パイルである。

岡田織物編
https://independ.tokyo/column/%e5%b2%a1%e7%94%b0%e7%b9%94%e7%89%a9/

妙中パイル編
https://independ.tokyo/column/%e5%a6%99%e4%b8%ad%e3%83%91%e3%82%a4%e3%83%ab%e7%b9%94%e7%89%a9/

詳しくはクリックして全文を読んでいただきたいのだが、両社に共通するのは、「メイドインジャパンブーム」だとか「日本製生地への高評価」だとか言われることが増えたが、実際のところはそれほど売上高は増えていないという点である。

景気は「気」からと言われるように、雰囲気が盛り上がることは大事だが、雰囲気だけ盛り上がって実態が伴わないならあまり意味がない。

岡田織物は今でも唯一、産地内で海外輸出を続ける企業で、ルイ・ヴィトンやプラダなどのラグジュアリーブランドに納品を続けているが、売上高が増えたかというとほとんど変わらない。ピーク時からは減少したままである。

妙中パイルも衣料品向けの出荷は減ったままで、液晶画面の研磨用布や化粧をするときにつかうパフ用生地などで減少を補てんしている状況にある。

記事中にも書いたが、高野口産地の産地組合には昭和60年ごろは380社強の加盟があった。売上高総額は660億円だった。さらに非加盟社で有力企業が何社もあったから実際のところは産地売上高は700億円を越えていたのではないかと考えられる。

それが今では加盟者数は62社で総売上高は60億円にまで縮小している。

社数でいえば6分の1、売上高でいえば10分の1にまで縮小しているということになる。

これが日本の生地産地の現状で、高野口産地以外の他産地も似たような状況に立たされている。

今年6月には高野口産地で、また1社廃業している。
今後、国内の機屋や染色工場が減ることはあっても増えることは考えられない。

現在の市況を冷静に見れば、「メイドインジャパンを盛り上げるためにグローバルSPAやグローバルファストファッションを排斥しよう」なんていうキャンペーンが実を結ぶはずもなく、個人的には失笑を禁じ得ない。
そもそも洋服自体の供給が過剰なのであって、ファストファッションを排斥したところで供給過剰状態は改まるはずもない。

しかも可処分所得が減少している中で、高額品のみを生き残らせたところで、全社がその恩恵を受けるはずもなく、売れるところは売れるだろうが、売れないところは今以上に売れなくなる。
普通の人間は無い袖は振れないのである。
収入が少ないのにわざわざ高額な衣料品を買おうと思う人間は少数派である。

そして富裕層も少数派である。

少数派を相手に商売をして全社が共存共栄できるはずもなく、売れない会社は当然淘汰される。
産地企業が置かれる状況はファストファッションを排斥したところでおそらくほとんど変わらないだろう。

産地企業なんて今すぐすべて滅んでしまえとは思わないが、なんとしてでも現存する産地企業をすべて残すべきだとも思わない。
そんなことは社会主義経済ででもない限り不可能である。

今後も産地企業は減り続けていくだろう。
産地企業が補助金や助成金を過剰にあてにしたままなら減るスピードはさらに早まるし、自らの努力を放棄したような企業はつぶれるべきだとも思う。

が、事業主が続けたいという意思があって、それなりの努力をする産地企業があるなら、それは何とか活路を見出してもらいたいと思う。補助金やら助成金は本来そういう企業を助けるためのもので、やる気のない企業に年金のように付与するものではない。

岡田織物も妙中パイルも、ときどき個人的には「アレっ」と首を傾げるような取り組みはあるが、それは個人的見解の相違であって、自助努力を続けている。
事業主にやる気があるうちは何とか事業を継続できる状況が続いてもらいたいと思う。

ただの安っぽいセンチメンタリズムとノスタルジーでは国内産地企業なんて到底救うことはできないし、若手クリエイターや極小ロットブランドが「救う」なんていうのはどれほど上から目線なのかとも思う。

個人的にそういう風潮に賛同できないのは、多くのそういう小さいブランドは産地に対して「手作業」や家内制手工業のイメージを抱いているように感じるし、そうとらえている場合が多いと感じるからだ。
しかし、国内の生地産地は工業製品の産地であり、各社によって設定は異なるが、経済ロットに沿って活動する営利企業なのである。
別に無形文化財でも伝統工芸でもない。

最低でも3反(150メートル)の生地を織らないと不採算だという機屋に対して、「手作業で20メートルだけ生地を織ってください。それが文化伝承です」というのは到底正しいやり方ではない。
本当に産地を「救いたい」のなら、そういうブランドが世間への影響力を強め、売上高を極大化させるほかない。