山の日にこんな報告があった。

脇汗MAX!?9oclockが開始2ヶ月で400枚届かず…
http://katorimasahiro.hatenablog.jp/entry/2016/08/11/152352

6月6日からオンライン通販のみでスタートした国産Tシャツブランド「ナインオクロック」が2か月間で400枚弱売れたという報告である。

定価は税抜きで3500円。

実際のところは360~390枚くらいの販売量だったのではないかと思うが、この結果についてはどう思われるだろうか?

事業主の香取正博さんは、ビッグウェーブに乗ろうとしておられるようなのでこの販売量は予想を下回るとしていささか意気消沈している様子だが、個人的にはよく売れたほうではないかという評価を下している。

業界の人々はどんな評価だろうか?

東京に出張した際にも何人かに評価を尋ねてみたが、ほぼ全員が「無名のブランドが2か月で400枚弱売れるというのはなかなかの快挙ですよ」とおっしゃっていたが、筆者もそう思う。

しかし、この程度で満足していてはビッグウェーブになど乗ることは不可能なので、今後も引き続き頑張ってもらいたいと思う。

初月度はだいたい190枚くらい売れたと報告を受けており、次月度もほぼ同じペースで売れたと推測できる。
次月度も勢いが衰えなかったのは、一部の近隣(岩手県内)の専門店への卸売りが始まったからではないだろうか。
店頭販売価格は同じ3500円(税抜き)なので、香取さんに入る利益は極めて薄いと思われるが、生産ロットを増やせるというメリットはある。デメリットだけではない。
利益が薄いなら多売するという手もあるが、その専門店ではこのTシャツが10日間で50枚売れたという報告もある。

ブランド価値とは何だろう?タグ無しのTシャツが実店舗で10日で50枚以上売れた
http://katorimasahiro.hatenablog.jp/entry/2016/07/26/164109


これだけでも50枚の販売量は確保できているわけであり、総売り上げ枚数を押し上げていることは容易に想像できる。

話は横道にそれるが、無名の3500円もする無地のTシャツを10日間で50枚も売るというのはすごいことではないだろうか。1日平均5枚売っている。
それこそ販売員の力ではないか。
大手のチェーン店や有名店では在庫処分のために押し売りをすると聞くこともあるが、地域専門店の場合、そんな阿漕な商売をしたなら、すぐさま閉店せざるを得ない。

実質的に丁寧に接客をした結果ではないかとと考えられる。

個人的にはアホな販売員よりは自動販売機やペッパーくんの方がよほど販売力があると思っているが、プロとしての販売員となるとやっぱり売る力がすごい。
販売員をチョロっとかじった程度の筆者ならこのTシャツを10日間で50枚も売る自信はない。
しかも東京とか大阪の都心ではなく、岩手県の久慈市という田舎で。

店を訪ねたことも販売員にお会いしたこともないが、販売力がすさまじいと感じる。

こういう販売員が増えれば洋服は今よりは売れるようになるのではないかと思うが、養成するのはなかなか難しい。
だからこそTopseller.Style( http://topseller.style/ ) へ、などと書けば、どこかの感動系セミナーの勧誘とか、どこかの有料ファッションメルマガの勧誘みたいになってしまうのであえて言わない。(笑)

それはさておき

販売量が予想より下回った要因は欠品だという。
初回にけっこうな数量を作りこんだはずだが、売れ行きが予想できないことから、おそらくどの色もメリハリをあまりつけずにほぼフラットな枚数を発注していたのだと勝手に推測する。

その結果、人気の集中した色が欠品したということだろう。

黒のVネックの人気が高く欠品したのだというが、筆者からすると黒のVネックTシャツなんてもっとも売れるから初回にもっと作っておいてもよかったのではないかと思うが、事業主は黒のVネックを着ないため、そこまで発注しなかったようだ。
事業主はお会いしても画像でもだいたい白Tシャツをユニフォームのように着ているから、おそらくそういう発想になったのだろう。

自分の好みと売れ筋は異なるのである。
業界人ならこれは常識だろう。

昔、それこそユニフォームのようにグレーの長袖Tシャツと、腿にゆとりがあって足先がピタッとしていたジョッパーズパンツのようなパンツばかり着用していたアパレル社長がおられたが、彼はレディース向けにトレンドアイテムを的確に発売していた。間違ってもジョッパーズパンツなんていうのは一度も発売していない。

それが業界人としての正しい姿勢だろうと思う。

そんなナインオクロックの補充生産分がようやく出来上がったそうだ。
それでもまだショート気味だという。

なかなか補充生産分が出来上がらなかった理由を事業主はこう説明している。

小ロット生産なので、工場の大ロット生産の隙間で少しずつ作ってもらったから。

とのことだが、洋服の製造というのはこれが現実なのである。

大ロット生産が安定的に流れていて、その隙間に小ロット生産を押し込む。
だから、大ロット生産がなくなれば多くの縫製工場は倒産してしまう。
大ロット生産があるからこそ小ロット生産を受け入れてもらえるのであり、それが不満ならサンプル縫製工場のような小ロット専門の工場を探し当てるしかない。

縫製工場の仕組みを知らないイシキタカイ系の小ロットブランドは「どうしてうちを後回しにするのか?」と不満をぶちまけることがあるが、それは彼らの生産数量が少ないからで、後回しにされたくなければ大ロットの数量を発注すれば良いのである。一枚当たりの製造コストも下がるので、店頭販売価格も引き下げられるだろう。
店頭販売価格を引き下げない場合は利益率が高まるだろう。

良いことづくめなので資金調達して大ロット生産の仕組みづくりをやってみてはどうか。
銀行は金を貸したくてウズウズしているはずだ。

ただし、大ロットで生産した場合、それを売り切るだけの販売力が求められる。
そうでなければ山のような在庫を抱えて破産せざるを得ない。

相手を変えることは不可能なので、自分が変わるほかない。
資金調達して大ロットブランドにするか、極小ロットで生産している工場を探しあてるかのどちらかしかない。