基本的に洋服は自分の収入から手の届く範囲で買えば良いと思っているし、今の百貨店ブランド・ファッションビルブランドは、郊外型ショッピングセンターに入店している低価格ブランドの商品と見た目も品質も変わらないと思っている。

一方、本当に高品質の洋服を見たければ、それはもはやラグジュアリーブランドにしか存在しないとも思っている。

同年輩で、素材関連・OEM生産関連の仕事をなさっている社長がいる。
素材のことも縫製のこともアパレルの動向のこともお詳しい。

その人が、以前「本当に品質の良い生地が使われた洋服が百貨店やファッションビルで売られていた時期は20~15年前で終わった」というようなことを言った。
これはその通りだと思う。

20~15年前というと95~2000年くらいということになる。
こんな筆者でも2005年くらいまでは夏冬のバーゲン時には百貨店ブランドやファッションビルブランドで洋服を買っていた。
2005年当時、ショッピングセンターがあちこちにでき、各社は低価格ブランドを開発しており、それを見たり触ったりしたが、圧倒的に見た目も品質も違っていた。

さすがに90年代に買った服はほとんど残っていないが、2000年くらいに買った洋服は何枚か残っている。
元値が高かったというのもあるが、デザイン、品質ともに気に入っておりなかなか捨てるに捨てられない。
2010年以降に買った低価格ブランドの商品とは比べ物にならない。
まあ、ジャケット、コート類はアームホールが太すぎるので思い切って捨てたが。

例えば、今年3月末で廃止となったワールドのボイコットというメンズブランドがある。
OZOC、インディヴィと同じグループで展開されたメンズブランドである。
当初はタケオキクチとヤング向けのボイコットとして上手く住み分けていたが、タケオキクチにヤング向けや低価格ラインができるようになって市場でのポジショニングが被さってしまい、存在意義をなくした。

このボイコットのTシャツを今でも捨てられずに持っている。
もちろん傷まないように登板回数は減らしているが。

2004年にはすでに着用していた記憶がある。
なぜなら、当時これを着用していて「胸のシルバーのロゴがギャル男みたいですね」と言われたことがあるからだ。
こんな風貌のおっさんがギャル男みたいなTシャツを着ていたら気味が悪いだろう。(笑)
本人はそこまでギャル男みたいだとは思っていないのだが。

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おそらく2002年か2003年に買ったような気がする。
定価も買値も覚えていないが、阪急百貨店うめだ本店の催事場で投げ売られていたのを買った。
当時は夏冬のバーゲン終了時に、催事場で一段の投げ売りが行われていた。
元値が4000~5000円くらいで、それを1500~2000円で買ったのではないだろうか。

で、このTシャツの素材がかなり品質が高い。
6オンス前後の分厚さがあると思うのだが、その割にはソフト感がある。
襟の部分が色落ちしているが、全般的には染色堅牢度も高く、10年以上洗濯を繰り返しているがそこまで色落ちしていない。

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(襟の色落ち)

そして何よりうれしいのが、どんなに大量の汗をかいても、乾いたときに汗のあとが白く浮き出ないことである。
黒とか紺のTシャツ類は汗が乾いた後に白く塩が浮き出ることがある。
あれは見苦しいので、真夏に黒・紺のTシャツを着用することを避けているのだが、それがない。

同じ黒・紺でも、不思議なもので塩が白く浮き出るTシャツと浮き出ないTシャツがある。
一体、素材にどういう違いがあるのだろうか?
ここの詳細な説明を聞いたことがないので、ご存知の方はぜひ教えていただきたい。

買った当時は、「やっぱりブランド物は違う」と感じたのだが、今の百貨店ブランド・ファッションビルブランドにここまで感じさせる商品はほとんどない。
下手をするとユニクロや無印良品の方が素材が高品質だったりする。

末期のボイコットがマルイやらキューズモールの催事場で投げ売られていたが、ひどいものだった。
冬物だが合繊100%の安物くさいセーターとかおざなりな綿素材で作られたカジュアルパンツとか。
定価設定が高すぎるのではないかと感じた。あんなセーターを7000円とか8000円で売っていたらぼったくりも良いところである。

同じころに買ったジュンメンのボーダーTシャツがある。
おそらく2000~2002年ごろに買ったと記憶している。
これは今でいうビッグシルエット気味で、顔デカで肩幅の広い筆者が着ると、単なるゴツイおっさんみたいになるので部屋着として使っているが、これも肉厚生地で、染色堅牢度が高く、型崩れもしない。
ほとんど色落ちしていない。

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これは阪神百貨店で買った。おそらく値引きされて1500~2000円くらいだったと記憶している。

余談だが、90年代後半に女性を中心にチビTブームが2年ほどあった。
いわゆるSサイズとかXSサイズのTシャツをピチピチにして着るのだが、これがメンズにも波及した。
メンズのトップス類も2~3年くらい小さめが主流で、2000年ごろからそれが終わって、通常サイズに戻った。
このジュンメンのTシャツはそのころのもので、2004年からまたディオールオムのブームによってタイトフィット主流へと戻ってしまう。

ビッグシルエットが市民権を得るのは2014年以降のことである。

百貨店やファッションビルで手の届く価格で上質素材の商品が手に入ったのは、今から思うと幸せな時期だったのだと思う。
逆に今の30代半ばより下の世代は、そういうものがラグジュアリーブランド以外で手にすることができなくなったのは気の毒だと思う。

2008年ごろから原材料費はすべて上がり続けている。
比較的安定しているのが綿素材と合繊だけで、ウール・獣毛類、レザー、ファーはすべて値上がりし続けている。(綿は2011年ごろに高騰したがその後、もとに戻った)
今後原材料費が高くなることはあっても安くなることは考えられないから、素材クオリティの低下はまだまだ続くと見た方が良いだろう。

低価格ブランドとの違いをどこで打ち出すのか。百貨店ブランド・ファッションビルブランドには苦しい状況が続く。