三陽商会から250人のリストラと、2016年1~6月期の下方修正が発表されて、それに対する報道、論評が数多く見られる。ファッションやら経営やらの話はそれらに任せて個人的な感想をまとめてみたい。

売上高は期初予想の370億円を335億円へと減額し、営業赤字も同22億円から55億円へと、赤字幅が大幅に増える見通しとなっている。

さらにいうと通期での見通しは立っておらず、通期業績はさらに厳しくなるのではないかと考えられる。

今回の下方修正では、減収よりも赤字幅の大幅な拡大の方が問題である。
原因は、バーバリーの跡地ブランド(後継ではない)「マッキントッシュロンドン」と、バーバリーとの新たなライセンスで開始された「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振である。

個人的には、高価格帯の「マッキントッシュロンドン」よりも、若い年代に人気が高かった「バーバリーブルーレーベル」「バーバリーブラックレーベル」の後継ブランド「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」の不振の方が三陽商会にとっては痛手だったのではないかと見ている。

なぜなら、コートが10万円を軽く越えるような「マッキントッシュロンドン」の売上高が「バーバリー」に遠く及ばないであろうことは、当初から誰でもが予想できたのではないかと思う。
やっぱり「バーバリー」ブランドだから10万円を越えるような高価格帯のコート類をほしいと思う人がたくさんいた。
それが「マッキントッシュ」という一般的にあまり知名度が高くない屋号に変わってしまえば、買うことに躊躇する人が増えるのは簡単に予想できる。
ましてや同じ価格帯とはいえ、バーバリーとは根本的に商品そのものも違う。買わない人が増えるのは当たり前である。

業界人にとっては「マッキントッシュ」というのはそれなりにバリューのあるブランド名かもしれないが、業界外の人にとってはあまり知名度が高くない。「アップルコンピュータのマッキントッシュとどう違うの?」というレベルではないか。

おそらく三陽商会や百貨店側もマッキントッシュが苦戦することは織り込み済みだったのではないかと思う。

大誤算はむしろクレストブリッジの不振だろう。
これはバーバリーとの新しいライセンス契約から生まれたブランドで、文字通りの後継ブランドである。しかも本体のバーバリーに比べると幾分か価格が安い。

そのため、旧ブルーレーベル、旧ブラックレーベルは長らく若い男女に人気があった。
また、本体のバーバリーは元々はかなり重厚な雰囲気の商品が多かったが、このラインはトレンドに合わせてモダナイズされているからそういう意味でも人気が高かった。

クリーニング店「クリーニングビー」を経営する壁下陽一氏によると、この両ラインは「価格が高いわりに近年は商品クオリティがかなり低下していた」とのことだが、やっぱりネームバリューはあった。

バーバリーとの正式な契約から生まれた後継ブランドで、本体よりも幾分か安いから、三陽商会はおそらく旧ブルーレーベル、旧ブラックレーベルの穴埋めがそれなりにできると考えていたのではないか。
また百貨店を含めた商業施設側もそこそこの売上高を見込んでいたのではないか。

それが崩れたため、目算が大きく狂ったというのが実情ではないかと思う。

原因はなんだろうか?

商品のデザインが云々というのはよくわからない。
人それぞれ好き嫌いがあるからだ。
ただし、あの大振りなブロックチェック柄の洋服は売れにくいと思う。
人目を引きつけるがあれほど大ぶりなチェック柄の洋服はコーディネイトに取り入れるのが難しい。
ましてやそれがスーツになっていれば、さらに難易度が上がる。

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(ブラックレーベル・クレストブリッジのウェブサイトより)

モデルとか芸能人レベルの人間でないと着こなせない。
そしてそういう人が世間一般にどれほどの数で存在するのか。
かなりの少数に向けたニッチな商品である。
果たして三陽商会と三原康裕氏はそれを認識していたのか?

次にブランドとしての露出が極端に少ないことも原因の一つだろう。

いくらバーバリーとの正式契約とはいえ、一般消費者はそこまで知らない。
「バーバリー」と「クレストブリッジ」では一般人にとっては全く別ブランドである。
よくてもせいぜい「バーバリーっぽい」ブランドという認識止まりである。

にも拘わらず、本当に露出が少ない。
ウェブ上にはほとんど出てこないし、何より、三陽商会の公式ウェブサイトにさえも掲載されていない。
これじゃ、消費者の認知が進まないのも当然である。
さらに今回の下方修正報道でもほとんど言及されていない。
メディア側からも認知されていないという証拠ではないか。

旧両(ブルー、ブラック)レーベルくらいに認知を高めたければ、ドンドンと露出させるべきなのである。
「バーバリーがクレストブリッジに変わりました」というくらいベタにわかりやすく打ち出す方が良かっただろう。

「紅白歌合戦で嵐に着用してもらいました」程度の広報活動ではまったく起爆剤にはならない。
もちろん打ち上げ花火程度にはなるだろうが、大爆発は起きない。

バーバリー側の意向もあるのだろうが、これまでの広報活動は完全に裏目に出ており、効果がまったくあらわれていない。

さて、今後の推移を予測すると、三陽商会はさらに厳しくなるのではないか。

バーバリーの跡地に件の3ブランドを比較的あっさりと出店することができた。7割くらいが置き換わったはずだ。
三陽商会側の努力もあっただろうし、それほど多数の店舗を一気に出店できるアパレルがないため、置き換えに賛同した商業施設も多かった。

そしていわば初年度は「お試し期間」だった。

お試し期間で好成績が出れば、さらに出店は加速するだろうが、お試し期間で惨敗してしまえば、退店が加速する。
今回の不振を受けて、次年度以降は3ブランドとも店舗数をかなり減らすのではないかと考えられる。
当然、売上高はさらに低下するし、場合によっては利益額も減るだろう。
三陽商会は厳しい業績が続くと予想される。

ディオールを失って消滅したカネボウ、アディダスを失ったものの16年かけて復活したデサント。
三陽商会がどちらになるのかわからない。できればデサントのように復活してもらいたいと思うが、今後長期間に渡って厳しい局面が確実に続く。果たしてそれを三陽商会が乗り越えられるのかどうか。

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