一般的には、百貨店によるアパレル商品の「委託販売」が弊害だとされている。
先ごろの経産省からの提言でも弊害だとされている。

ではどのあたりが弊害なのだろうか?
業界内では広くこういうことが言われている。

「委託販売」があるから小資本のアパレルは百貨店との取引を行うと経営が苦しくなる

と。

そもそも委託販売というのは、商品を借りてきて店頭に並べて、売れた分だけの代金をメーカーに支払って売れ残った商品は返品するというやり方である。
残った商品が返されたところで、適正量の生産であるなら、それほど経営は圧迫しないはずである。

業界にお詳しい方は置いておいて、まだ業界にお詳しくない方はここの点を疑問に感じたことはないだろうか?

結論からいうと、百貨店のいう「委託販売」とは通常指す委託販売とは少し意味合いが異なるのである。
それをわかりやすく説明した記事があるのでご紹介したい。

百貨店とアパレル「不合理な商慣習」の正体

委託販売はなぜ重宝されてきたのか
http://toyokeizai.net/articles/-/123731

事前にある一定の期間、メーカー側から商品を預かり、販売を委託される仕入れのシステム=「派遣店員付委託取引」です。文字どおり、実際の販売は、メーカー側から販売スタッフとなる派遣店員を手配し、店頭に送り込むかたちをとることになります。

百貨店側では納品されたすべての商品を一旦買い取り、メーカー側への支払いも一旦発生させます。その後、メーカーへ返品をする時に、返品分の返金を受け取る代わりに、新たな納品商品を受け取り、そこで相殺処理をします。このような複雑な商品のやり取りを繰り返しながら売り場を構成していきます。

つまり、日本の百貨店のバイヤーは商品を買い付けると言っても、欧米のバイヤーのように完全買い取りで最終的な処分までするというような責任は無いことが多く、結果的にはメーカー側への返品ができてしまうというシステムです。

これだけでは、メーカー側にとってすこぶる不利な取引形態のように思えてしまいますが、当初は、メーカー側もこの取引形態をうまく利用していたのは否めません。期末が近づけば営業マンが一時的に売り上げを上げるために、商品を大量に百貨店に送り付け、期を過ぎたら返品処理で対応するといった具合です。

古くは、その返品コストを小売価格にあらかじめ上乗せして納品するということも見られたほどです。また、POSの無かったころに手配した派遣店員からは、生の顧客情報を入手し、自社の企画生産に反映できていたという点に大きなメリットがありました。

とのことである。
通常でいうところの委託販売とは大きく異なっていることがわかる。

「返品分の返金を受け取る代わりに新たな商品を納品してそれで相殺処理をする」という点が大きく異なるのである。

これを繰り返していくと、どうなるかというと、卸売りメーカー側は返品による返金を支払わないで済む代わりに、常に新製品を納入し続けないといけなくなる。メーカー側がいわゆる「自転車操業」状態に陥る。
こうなると、小資本のアパレルメーカーはたちどころに倒産してしまい、百貨店のこのシステムに乗っかれるのは大手資本のみということになってしまう。

小資本のアパレルが百貨店への卸売りを躊躇するのはこういう仕組みがあるからである。
じゃあ、小資本アパレルは「委託販売」ではなく、買い取りしてもらってはどうか?
という疑問が頭をもたげる。

それこそ昔はどうだったかしらないが、今の百貨店は斜陽産業にありがちな「前例主義」に凝り固まっている。
小資本アパレルの商品を買い取りで仕入れるなんてそんな「前例」のないことはやりたがらない。
経営トップが大号令をかければ話は別だが、それ以外の場合、担当者が失敗の責任を負わなければならない事柄は往々にして見送られる。
なぜなら担当者の今後の出世に響くからだ。

かくして小資本アパレルからの買い取り仕入れというのは、一部の例外を除いて、百貨店が積極的に推進するような事態は生まれないのである。

逆に、その結果、百貨店に卸売りするのは、「委託販売」システムに慣れたアパレルに限られることになり、百貨店各店の品ぞろえが同質化することになった。

一般にこの独特の「委託販売システム」を考案したのはオンワード樫山だとされており、オンワード樫山はこれによって百貨店との取引を拡大し続けてきたというのが、今日までの歴史だとされている。

話は少しそれるが、オンワード樫山の広報力が弱いのは、百貨店売り場を多く獲得し続けられているからではないかと考えている。
そんな広報やらプレスやらせずとも、売り場は多く獲得できたままである。
必然的に一定の売上高は稼げる。何も金を使って広報やらプレスを強化せずとも良いというわけだ。
これまでファッション雑誌にはそれなりの露出をしてきたが、2005年以降急速に普及したウェブというメディアではほとんど露出がないに等しい。

あるPR業者によると、10代~30代前半までの若い世代において、オンワード樫山の知名度は圧倒的に低いらしい。
これはSNSはおろかウェブでの露出がほとんどないためである。
今は売り場を多数獲得していて、30代後半以上の顧客がいるからそれでも大丈夫だろうが、10年~20年後は手痛いしっぺ返しがあるのではないかと個人的には見ている。

なぜならそのころ、今の10代~30代前半は、10年後なら20代~40代前半に、20年後なら30代~50代前半になっている。
今のオンワード樫山が得意とする年齢となる。
そうすると、今親しみのない彼女らが、そのころになってオンワード樫山の商品を選ぶ可能性は低いだろう。
若いころから親しんでいないブランドを、年を取ってからわざわざ買うことはほとんどない。

彼女らが買うのはユニクロや、今の低価格SPAブランドが立ち上げたミセス向けブランドということになるだろう。なぜなら、今親しんでいるから。

何事も物事は長所と短所は同じなのだと思い知らされる。

閑話休題

百貨店側に聞くと、今さらこの「委託販売」システムを変更することはかなり難しいそうだ。
一部では変更しようという意思はあるようだが、当たり前だが急激に変更することは不可能だ。
一部以外では変更しようという気すら持ち合わせていない。

したがって、今後も百貨店同士の同質化は続くし、斬新な新業態や新ブランドが導入されることは稀だろう。
そして同質化したまま緩やかに百貨店全体の売上高は減少し続けるだろう。