経営が悪化した企業はコスト削減を行う。
これは定石だが、削減した後に新たな方策を打ち出さないと、そのまま業績は縮小し続けることになる。

先日、ワールドの2016年3月期の決算が発表された。
利益は大幅に改善されたが、これはブランド閉鎖、店舗閉鎖、首切りを含めたリストラによって生じた利益で、
本体事業が好転したわけではない。
要するに服が売れて業績が回復したのではないということである。

ワールド、営業利益2.2倍  13ブランド・479店舗閉鎖で販管費圧縮
https://www.wwdjapan.com/business/2016/05/17/00020547.html

ワールドの2016年3月期決算(国際会計基準)は、売上高に相当する売上収益が前期比93.2%の2782億円、営業利益が同221.7%の116億円、純利益が16.5%の7億4300万円だった。抜本的構造改革で推進したブランド閉鎖と不採算店舗退店によって減収したものの、販管費を約180億円圧縮したことで営業利益は倍増した。上山健二・社長が昨年の就任時に宣言した「17年3月期に営業利益100億円突破」の目標を1年前倒しで達成した。

不採算事業の整理では、上期の「アニマ」「ジンジャーエール」に続き、下期に「コキュ」「ミニマム」「フリーピープル」「ボイコット」「ラギッドファクトリー」「ブラウンバニー」「アナザーサイドスクエア」「メディテラス」「フォブコープエンテーゼ」「ラフマ」「ブールアネージュ」の13事業を閉鎖した。国内連結退店数は479店舗。終了事業の赤字総額は10億円だった。

とのことである。

ワールドが今期何か効果的な新しい取り組みがあるかというと筆者の目には皆無に見える。
ネット通販の強化を昨年に発表したが、正直なところ今のワールドのやり方でネット通販が大幅に伸びるとは思えない。
ワールドだけではない。オンワード樫山もファイブフォックスもTSIもイトキンも今のやり方ではネット通販が大きく伸びる可能性は限りなくゼロに近い。

そもそもこれらの旧大手各社はウェブ上での露出があまりにも少ない。
投稿があったとしても職務を遂行したレベルの面白みのない投稿しかない。
これではウェブでのファンは増えない。

インスタグラマーを積極的に使っている(もちろん有料で)ユニクロやジーユーの後塵をここでも拝しているわけである。

上にワールドの廃止ブランドが列挙されているが、例えばアニマとかジンジャーエールみたいな泡沫ブランドはともかくとして、ボイコットなんていうかつての著名ブランドが廃止になっているが、ウェブ上ではほとんど話題にはならなかった。
それほどまでに旧大手の各ブランドの注目度は低下しているといえる。

コスト削減だけを続けているなら、このまま縮小し続けていくことになるだろう。

大手ばかりではなく、中小零細企業でもそういう企業がアパレル業界には多い。

先日、某カジュアルアパレルに勤務する知人から連絡があった。
コンサルタントの進言を入れて、コスト削減に取り組むそうである。
まあ、他人の会社なのでどうなろうとまったく構わないのだが、聞いていると基幹ブランドだけ残して、新規ブランドはすべて廃止するそうである。

こういう企業は身の回りでけっこうある。

コスト削減に取り組むことは当然として、そもそもその基幹ブランドが凋落してきたから新規ブランドを開始したという経緯がある。
ブランドというものはいずれ勢いがなくなるので、その時に備えて複数のブランドを展開しておくほうがリスクが少ない。
新規ブランドを廃止して、凋落した基幹ブランドに特化したところでこれまでのやり方を改めることができなければこのまま縮小し続けることになる。

おそらくこのまま基幹ブランドにしがみついて縮小スパイラルに陥っていくと見ている。

基幹ブランドを大胆にリニューアルすることもできなければ、これまでのやり方を墨守して、あと10年持つかどうかではないかと思う。

コスト削減、不採算ブランドの廃止は経営回復には必要不可欠だが、次の成長戦略も同時に必要とされる。
アパレル業界は閉塞感が長らく漂っているがゆえに、新たなことに積極的に取り組める体質ではなくなりつつある。
失敗ができるほど余裕がない。もっと正確にいうと経営者に余裕がない。

今回挙げた旧大手や某カジュアルアパレルのように縮小スパイラルに突入して、遠からずなくなる企業、ブランドがまだまだ現れることだけは間違いないだろう。