繊維関係では、撚糸・染色・整理加工・織布・編立・縫製などの各工程の工場が存在する。
これらの工場なくしては服は生産できない。

メイドインジャパンだ、日本製だ、クールジャパンだといわれながらも実際のところ国内の各工程の工場は年々減り続けている。
原因は後継者不足、資金難、モチベーションの低下である。
この3つが混然一体となって工場の廃業、倒産を引き起こしている。

工賃が上がらない、注文が増えないから資金難に陥る。
資金難に陥っているからモチベーションが上がらない。
後継者もいないし、余力のあるうちに工場を閉鎖しよう。

これが廃業である。

赤字に陥って余力がなくなっての閉鎖なら倒産である。

なぜ後継者がいないかというと儲からないからだ。
儲かって笑いが止まらない産業なら息子や娘、親類がどんどん跡継ぎになってくれるだろう。
儲からない産業をわざわざ継承したいという人はゼロではないがかなりの少数派である。

モチベーションの低下で廃業したのは八王子のみやしんだろう。
その後、文化・ファッションテキスタイル研究所として生まれ変わっており、このニュースに安堵の声を挙げた業界人は多いが、こういう幸運な結末は稀有な例である。
宝くじで1等が当たるくらいの幸運ではないか。ちなみに年末ジャンボで1等が当たる確率は180万分の1だと言われている。
大概の工場は廃業・倒産してそのままになる。

紡げ発想力、生まれ変わった織元 みやしん元代表・宮本英治さん
http://www.sankeibiz.jp/business/news/130719/bsc1307190500002-n1.htm

この記事中に興味深い一節がある。

90年には衣類の輸入品比率は48・5%だったとある。
国産が51・5%を占めていた。
それが現在では97%が輸入品比率である。ほとんどが中国製だが、中国製は減少しつつあり、ベトナムやミャンマー、タイ、カンボジア、バングラディシュなどのアジア諸国からの輸入が3年位前から急増している。

2011年当時で輸入品比率は96・4%、そこから微増ではあるがまだ上昇しているのが現状である。

こういう状況を鑑みて、国内工場を残そうという気運が一部では高まっている。
40代以下の若い世代にもそういう人が多い。
そういう彼らは「モチベーションを高めることで工場が残る」という趣旨のことを主張するのだが、個人的にはその主張は疑問だ。
なるほど、高いモチベーションを維持した工場が少数は残るだろう。
少数残すことが目的ならモチベーション向上というのは有効な手段の一つである。

しかし、モチベーションだけでは多くの工場が廃業・倒産することは避けられない。
筆者のようなライターとか、業界を徘徊する怪しげなコンサルタントとか、そういう人らなら収入があまりなくても仕事を続けることができる。なぜなら出費もほとんどないからだ。
あとは自分の生活水準を切り下げていけばいくらでも続けることができる。

一方、工場はそんなわけにはいかない。
工場を稼働させるには電気料金、水道料金から始まって莫大な金が要る。
工員を雇用していたなら人件費も発生する。
経営者が収入がないのは勝手だが、被雇用者には最低限の賃金は支払わなくてはならない。
もしくは最低限の時給の支払いは必要だ。
法律的にも人道的にも。

となると、モチベーションだけでは工場は稼働し続けられない。
カネは必要だ。
カネとモチベーションの両輪が備わっていないと工場を続けることができない。

カネがなくてもモチベーションでなんとかなる
カネなんてもらわなくても高いモチベーションで働くべき
カネなんて度外視してモノづくりという尊い仕事を残すべき


こういう主張は一歩間違うとワタミと同じである。
ワタミの創業者が言ってることもそういうことである。

新たな収益構造、新たな収益事業、新たな収益スタイル、これを確立しないことには各工場の廃業・倒産は止まらない。

こういう現実に対して「今の日本人は~」という論調もあるが、繊維関連の工場はすでに中国でも工員が集まりにくくなっている。経済成長した中国では繊維関連の工場よりも華やかで、金回りの良い働き口が増えた。
そちらに行く人が多いのは当然だろう。
わざわざ、キツくて金回りの悪い職場で働きたいなんていうマゾヒストのほうが異常だ。

いずれ、ベトナムやミャンマー、バングラディシュなどのアジア諸国も経済成長すれば繊維関連の工場での働き手が不足するだろう。

ときどき、ブログ内で筆者を紹介してくれる縫製工場のファッションいずみは、個人からの洋服のお直しも受注するようになった。
おそらく、今の売上高は知れているだろうが、注文数が増えれば一つの収益源になるだろう。
こういう新しい事業を手掛けることは工場の自助努力の一つだと思う。

そういう新規事業の立案なくして「モチベーションを高めろ」というイシキタカイ系の提案だけでは工場の廃業・倒産は絶対に止まらない。