卸売りをメインとする小規模ブランドの展示会に行くとこんなことが話題に上る。
ブランドのテイストや価格帯は関係なく共通している。

それは小規模専門店からの発注枚数が極小化しているというところである。

小規模専門店、ブティックなどはこれまでなら、気に入った品番は1色で2サイズか3サイズ、もしくは2色で2サイズを発注していた。

例えていうと、Aという品番のコートがあって、これが3色展開だとする。
紺、グレー、赤だとしようか。

これまでの発注では、紺のコートを2サイズ1枚ずつとか2枚ずつ、もしくはグレーと赤を各サイズ1枚ずつとか各サイズ2枚ずつというやり方が主流だった。

ところが今は、「紺のコートのMサイズのみを1枚だけ」と発注する専門店・ブティックばかりだそうだ。

それだけ専門店・ブティックに売る力が無くなっているといえるが、そういう発注のやり方が主流になると、ブランド側は売上高を確保しにくくなるし、生産ロットとしてまとまらないからドロップ(生産しない)品番が増えることになる。
当然だが、展示会用のサンプル製作費もその品番については回収できないということになる。


こうなると、卸売りブランド側も自衛策を採らざるを得ない。
直営店展開とネット通販の開始である。

直営店を本格的に開設するには何百万円、何千万円の費用が必要となる。
小規模ブランドの中にはアトリエ、事務所を兼ねてこじんまりとした直営店を構えているところもある。

とくに独立系デザイナーズブランドは自社ネット通販を立ち上げていないブランドが多い。
ネット通販なら本格的な直営店よりも少ない費用で開設することができる。
無名ブランドがすぐに売上高を稼げるようになるとは思わないが、時間をかければある程度の売上金額に達することは可能だ。

ところが、いざ直営ネット通販を開設しようとすると、先のような専門店・ブティックからクレームが入る。
しかし、ブランド側から言わせれば「何を言っているのか」という話だ。
毎シーズンMサイズ1枚しかオーダーしない専門店やらブティックが「バッティングだ」とか「うちの商売の邪魔になる」と言ったところで説得力はゼロだ。
競合がいてもMサイズ1枚くらいなら売り切れるはずだ。できないというならよほど販売スキルが低いのだろう。

これがもし、5型も6型も発注してくれるような専門店やブティックからの意見ならブランド側も真摯に聞かざるを得ないが、Mサイズ1枚しか発注しないような専門店やブティックの意見など取り合う必要もない。
粛々と直営ネット通販を開設すれば良いのである。

逆に小規模専門店でも苦楽園のパーマネントエイジのように自社企画でオリジナル製品を製造する店もある。


卸売り型だから直営ネット通販はタブーとか、1店舗しかない小規模専門店だからオリジナル製品は作れないとかそういう時代ではない。

問屋がオリジナルブランドを開始した事例もある。

こうした動きに対して「業界の秩序を乱すな」みたいな意見もあるが、秩序を守って自社が倒産したのでは笑い話にもならない。
まずは生き残ることの方が重要だし、生き残った人間が新たな秩序を構築すれば良いのである。


生産の効率性を下げるような毎シーズンMサイズ1枚しか発注しない販売力のない専門店・ブティックは切り捨てても良いと思うし、それらは早晩淘汰されることになるだろう。


小規模ブランドといえども売れなくては話にならないのだから、売れるための手段は迷わず行使すべきである。直営ネット通販も迷わずに開設すべきである。