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南充浩 オフィシャルブログ

機能性の積み上げでは商品は売れない

2012年8月8日 未分類 0

 家電業界は機能積み上げしか思いつかないようだ。

目覚まし付きテレビとか、ナノイーパソコンなど今夏、各メーカーから意味不明の商品が続々とリリースされている。
http://blog.esuteru.com/archives/6515569.html

家電開発者の脳内の迷走っぷりが顕著である。

機能積み上げで失敗した例は、繊維アパレル業界にもある。
以前にも書いたことがあるが、10年ほど前にメンズのワイシャツメーカーがことごとく失敗した。
90年代最後期に、形態安定加工のワイシャツが登場し爆発的にヒットした。
国内のワイシャツメーカーの多くは、紡績や合繊メーカーと深いつながりがある。形態安定加工もそのつながりによってワイシャツに使用された。

形態安定加工のワイシャツが発売された当時は、まとめ買いも珍しくなく、
あっという間に各人が複数枚所有するようになってしまった。

こうなると、次の年から形態安定加工ワイシャツの売れ行きは当然鈍る。
そこでシャツメーカーが考えたのが機能性の積み上げである。
毎年1つずつ新しい機能をワイシャツに付加していくことになる。
防臭加工、防汚加工、消臭加工、抗菌加工、吸水速乾機能とこの辺りまではわからないでもなかった。
そのうちにネタが切れたため、わけのわからない機能性を付加し続けることになる。
ちょうど目覚まし付きテレビやナノイーパソコンのように。

記憶に残っているのは、UVカット機能、ビタミンC加工、マイナスイオン練り込み加工などである。
UVカットとビタミンC加工は、美白に効果があるといわれている。
OL向けシャツならまだしも、どこのサラリーマンのオッサンが美白を求めているのだろうか。
展示会で説明を受けた時もピンとこなかったが、消費者もピンと来なかったようだ。

さらには血行を良くする効果があるらしいマイナスイオン練り込み加工である。
セラミックや鉱石の粉末を練り込んだと称する物が多かったが、効果は科学的に疑問である。
着用していると血行が良くなって肩こり防止や疲労回復に効果があるという触れ込みだったが、怪しいものである。こちらも製品寿命は短かった。

結局、今も残っている機能は形態安定加工と吸水速乾、それに防臭くらいである。
ワイシャツがその後爆発的に売れたのは2005年のクールビズまで待たなくてはならない。
しかし、その間にもカラーシャツが売れたり、台襟にボタンが二つある「ドゥエ・ボットーニ」が売れたりと、小さなヒットはあった。

2005年のクールビズを含めてそれらは、いずれも機能性よりもデザイン性を前面に打ち出しており、付け加えるなら着用シーンまでの提案を含んでいた。
それほど多機能でなくとも、着用シーンを設定したり、タンス在庫にないデザインを提案すれば売れるという証明ではないか。

ワイシャツは家電よりも値段が格段に安い。
同じ値段の商品として比べることは難しい部分もあるが、家電とて同じではないだろうか。

目覚まし機能ならすでに携帯電話が代用しているし、なにもテレビに付ける必要は無い。
今の家電メーカーは、かつてのワイシャツメーカーと同じ過ちを犯しているように見えて仕方がない。

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