ほんの3年ほど前まで各産地組合主催での、産地見学ツアーがちらほらと開催されていた。
東京を中心に、関西、名古屋あたりのアパレルメーカー社員や小規模デザイナー、一部小売店スタッフなどを対象として、それぞれの産地を見学するツアーが組まれていた。
地元での産地総合展示会も同時開催する場合もあった。

北陸の某産地でも無料送迎バスを用意したご招待ツアーがあった。
兵庫県の某産地も地元で産地総合展示会を開催し、オプションとして工場見学ツアーがあった。

だいたい、どの産地も3年やって「はい、お終い」となっている。
この3年というのは、補助金・助成金が終わるタイミングである。

送迎バスを用意したり、場合によっては宿泊施設も用意したりで、相当な費用がかかっていただろうから、補助金・助成金が終われば「自腹ではとてもじゃないが賄いきれません」というところだろう。

気持ちはわからないではないが、3年が経過してやっと少し工場見学ツアーが認知されつつあったのに「もったいないな」と感じてしまう。
よほどの知名度がない限り、初年度から注目されるイベントや打ち出しなんてありえない。
ブランドの構築だって本気でやるなら5年や10年はかかる。

にもかかわらず、各産地は3年ごとに打ち出しをリセットして、産地を告知するイベント自体は継続する。
目玉企画や開催場所を3年ごとに変えて今に至る。
その3年周期を何十年も繰り返してきた結果が現在である。
実を結んだ産地はあまりにも少ないというのが外野たる筆者の感想だ。

結論から言ってしまうと、産地組合が主導して、産地企業を平等に扱う全員参加型を前提とする限りにおいては、産地ブランド作りというのは不可能である。
何社かの有志が独自で活動する体制へと転換させる必要がある。

以前にも書いたが、人間が5人集まればすでに意見が割れる。
5人程度なら反対者をなだめながらでも活動は続けられるが、10人、20人となればそんな小手先の対応では通用しない。反対派を力で押さえつけるか排除するかしかない。
あとは、だれもが反対しないような「毒にも薬にもならない」企画を淡々と粛々と続けるか、である。


以前にも書いたが、東洋経済オンラインの「地方創生のリアル」という連載が面白い。


繊維産地にも当てはまるような事例が毎回紹介されている。
今回は地域ブランド化が失敗する理由がまとめられている。
産地総合展が各地で開催される時期にふさわしいのではないか(笑)

「地域ブランド化」が失敗に終わる3つの理由
難易度が高い上、凡庸な商品では無理がある
http://toyokeizai.net/articles/-/104375


タイトルだけで言わんとすることが伝わってくる。

理由1:ブランド化に適さない凡庸な「地域」と「商材」
理由2:コンサル頼みでは「汎用品・地域ブランド」しか生まれない
理由3:資源不足なのに難易度の高い方法に取り組む非合理


もうこの小見出しだけで十分伝わるのではないかと思う。

ここでの地域ブランドというのは繊維も含めたすべての商材についてであるから、繊維に関してすべてが合致するとは言えない。
食品、家具、雑貨、日用生活品、さまざまジャンルを包括的にとらえた記事である。
しかし、繊維にもこの記事のエッセンスを生かすことは重要ではないかと考えている。

理由2の章の中に、「外部から来た名ばかりコンサル(繊維業界あるあるw)が提案する7点セット」が紹介されている。7点とも繊維業界あるあるすぎて笑いが止まらない。

(1)よく聞くウリ文句(日本一の◯◯)
(2)いい加減な地域商材選定
(3)何となく地域の名前を使ったブランド名
(4)デザインされたロゴ
(5)綺麗な写真を使った大型ポスター
(6)中身のないWEB
(7)東京の一等地でのイベント


である。7点とも繊維産地でも良く見かけるセットではないか。
そしてこの7点セットで成功した繊維産地は数少ない。
すべて失敗したとは言わないが、成功した事例は片手の指で足りるほどではないか。

繊維産地に関していえば(2)は除外される場合が多い。
三備のデニムにしろ、和歌山のニットにしろ、西脇の先染め織物にしろ、泉州と今治のタオルにしろ、ずばりそのものの商材しかない。
しかし、残り6点はどうだろうか。
99%の産地で当てはまるのではないか。

個人的には、繊維産地についていえば(3)~(6)というのは、ほとんど何の効果ももたらしていない。
とくに販促的・広報的見地からいえば(4)~(6)はまったく効果がない。

今治タオルはロゴのデザインで成功した数少ない事例だといえるが、それ以外の産地のロゴが市場で認知されているだろうか。
筆者は記憶にない。
さらにいえば、産地の各企業がその産地ロゴを使い続けて商売をしているだろうか?
これもあまり記憶にない。

せいぜいが産地総合展の際にあちこちに掲げられるくらいだろう。
産地総合展は補助金・助成金の兼ね合いもあって年に1回しか開催されない。
必然的に産地ロゴを目にするのも年に1回限りとなる。
10年開催したって10回しか目にしないということである。
そんな物を記憶できている人間はかなりの少数派か産地関係者くらいである。
頻度の少ない物を人間は忘却する。

大型のポスターもそうだ。
筆者はそもそも産地に限らずポスターって効果があるのかと以前から疑問を抱いていた。
というのも、筆者の脳に欠陥があるのか、駅やビルに貼られているポスターをほとんど認識しないのである。
目には映っているが、認識しない。
視覚に流れて行っているのである。

風景やらロゴやら幾何学模様のポスターなら、有名芸能人の顔がデカデカと映ったポスターの方が認識しやすい。
他の人はどうだかわからないが、筆者の脳はそういう反応を示す。

そして、産地のWEBはだいたい中身がない。
表紙だけ整えられた紙芝居みたいなものである。
2000年代前半の企業サイトと同レベルだと感じる。

手を加えて人手を加えれば加えるほど費用が発生する。
費用を抑えようとするなら紙芝居にならざるを得ないのも理解できる。
しかし、紙芝居サイトでは何ら効果がないのも事実である。

反対にWEBサイトの表紙すらお粗末という産地や企業があることも事実であり、繊維業界のIT化への取り組みが如何に遅れているかという証拠でもある。

この記事は

自分たちは何も変わらず、単に補助金をつかったブランド化で一発逆転、だなんて都合のよい話はありません。

と結ばれているがまさしくその通りではないか。

昨今ではわずかながら、SPA化に成功した産地企業が現れ始めている。
個人的には、「エヴァムエヴァ」を展開する近藤ニットをもっとも評価している。
もともとはニット工場だったが、現在は直営店を全国展開しており、自社工場ラインの99・9%を自社製品製造で回している。残り0・1%だけ長い付き合いのある某ブランドの製品を製造していると聞いた。

近藤ニットに続く産地企業が少しでも多く現れることを願ってやまない。