「これからはウェブ販売だ」「これからはオムニチャネルだ」という掛け声をよく耳にする。

実際にウェブ通販の売上高総合計は伸びているから、これに異論はない。
ますますウェブ通販という業態自体は伸びるだろう。

しかし、コンサルタントやアドバイザーが言うのはまだしも、ナンタラ組合のエライさんとかナンタラ協議会のエライさんとかが言うのを聞いていると、どうも「ウェブ通販をやればすべての問題は自動的に解決し、あまり労せずして売上高が伸びる」という風に認識しているように思えてくる。
まあ、筆者特有の邪推かもしれないのだが。(笑)

そのエライさんたちがウェブに堪能だということは聞いたことがないし、そもそもそのエライさんたちはウェブ通販で買い物をしたことがあるのかどうかもあやしいところである。

一昔前に「SPA化すればすべての問題が解決する」と言ってた風潮とあまり変わっていないのではないか。

すでにウェブ通販には大手から小規模・零細まで無数の業者がひしめいている。
実際に筆者にも独立して、一人で各メーカーからの在庫を引き取ってきてウェブで販売している知人がいる。
その彼が展開しているウェブショップだが「当社も含めて新規参入組が楽天で上位に表示されるのは至難の業。上位に表示されないと集客できないし、当然、売上高にもつながらない」という状況である。

超有名ブランドならさしたる販促がなくてもある程度の集客はできるかもしれない(売上高につながるかどうかは別)が、それこそナンタラ組合とかナンタラ協議会みたいな消費者にとってマイナーな集団が思いつきで立ち上げたような通販サイトには、莫大な販促費を使わない限りなかなか集客できない。

それにそこそこ名の通ったウェブ通販業者だって苦戦している。
例えば夢展望。

2013年9月期連結は増収増益だが、
2014年9月期連結は、売上高が65億3900万円(前期比3・3%減)、営業損失7億5100万円、経常損失7億9000万円、当期損失9億800万円の減収赤字転落だった。

2015年から決算月を3月に変更したので、2015年3月期連結は半年間の変則決算だったが、業績は回復していない。

売上高26億9800万円
営業損失5億3600万円
経常損失5億9400万円
当期損失7億400万円

となっており、単純に2倍すると前年よりも減収・赤字幅ともに拡大している。

ちなみに2016年3月期連結の第1四半期は

売上高10億1900万円
営業損失1100万円
経常損失1500万円
当期損失1700万円

となっており、まだ回復傾向にあるとはいえない。

売上高は対前年同期比で約5億5000万円の減収である。

ウェブ通販の先駆けとして知られた企業ですらこの苦戦傾向である。

何の知名度もない新規参入者が無策に飛び込めばどれほど悲惨な状況に陥るかは火を見るより明らかではないか。
すでにウェブ通販はレッドオーシャンであり、決してブルーオーシャンではない。

コンサルタントやアドバイザーがウェブ通販参入を煽るのは自分たちのビジネスを拡大するためである。
集客がキモであることは彼らがもっとも熟知しているはずなので、煽るだけ煽って、具体策を提示することで彼らのビジネスにつなげるという作戦だろう。

しかし、わけもわからずその尻馬に乗っているように見える年配層の業界のエライさんたちは、逆に業界をミスリードするのではないか。
おそらく彼らは集客の困難さなど考えもしていないだろう。

先日、このブログにメールをくれた縫製業者と思しき人がいる。
その人によると、かつて自社でブランドを立ち上げ、楽天に出店したのだそうだ。
だが、売上高がまったく稼げないので1年ほどで撤退したという。

ご本人にはお気の毒だったが、無名の新規参入者なら当然の結果ともいえる。

それほどにウェブ通販での集客は難しい。
集客だけで考えるならリアル店舗を繁華街に出店する方が楽なのではないか。
もちろん、コスト面は度外視しての話である。

例えばJR大阪駅の改札付近の出店すれば、毎日何十万人という人が通る。
その中の少なくとも何百人かは店内を覗いてくれるだろう。買うかどうかは別にして。
ウェブ通販で無名の新規参入者が開店直後から毎日何百人の来訪者を安定的に集めることは限りなく困難である。
わざわざ消費者がその無名の通販サイトに来る理由がないからだ。

またウェブ通販だと集客をしても、間違ったターゲット層だと売上高はゼロである。

以前も紹介したBストアだが、ここは立ち上げて2,3年ほどのウェブ通販専業のカットソーブランドである。

http://b-webstore.jp/

主宰の山口悠太さんによると、初年度はかなりふんだんに広告費を使って集客したが、売上高はほぼゼロに近かったという。
集客したターゲット層と販売していた商品がマッチしなかったからだ。
ピーク時には1日に1000人近く来訪者があったが、売上高はほぼゼロだったというから、リアル店舗の販売よりもシビアである。

リアル店舗での販売なら、話好きのおばちゃんやおっちゃんが、「ねえちゃんが愛想良かったから、とりあえず500円の値下げ品でも買うわ」ということがたまにあるが、ウェブ通販だとそういう人情はゼロである。
欲しい物は買うが要らないものは要らない。それがより顕著となる。

ウェブ通販にはこういう厳しい側面がある。

だから各社は集客に必死になり、販促費を使うのである。
一時期問題となった有名タレントのステルスマーケティング(ステマ)はそういう背景があるからだ。

放っておくとサイトに集客ができない。
それなら多数のファンを抱えるタレントにブログやSNSで紹介してもらえれば、何千人・何万人のタレントのファンはとりあえず来店だけはしてくれるだろうし、タレントが「お気に入りです」とか「使ってめっちゃ良かった」と書けば、そのうちの何割かは購入してくれる。

だから何十万円・何百万円という費用を支払ってでも有名タレントにステマを依頼するのである。

大手がそれほどの投資をしてやっと集客しているのに、無名のポッと出のブランドが何の対策もなしに集客できるほどウェブ通販は甘い世界ではない。

これからは「ウェブ通販だ」「オムニチャネルだ」というのは間違いない。
問題はどうやって集客するかである。集客のできないウェブ通販サイトなんてゴミ屑同然である。

コンサルタントやアドバイザー諸氏はスローガンのぶち上げはもう十分だろうから、そろそろ如何に集客するかを語るべきだろうし、エライさんはウェブ通販をやったからといってすぐさま売上高が伸びるなんて妄想はそろそろ捨て去るべきだ。