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南充浩 オフィシャルブログ

物作り機運が高まっているが・・・・・

2012年7月19日 未分類 0

 2年くらい前からだろうか、繊維業界で「国内の物作りを見直そう」という動きがある。
それに向けていくつかの有志団体というかサークルのようなものが立ちあがっている。どの団体も傍から見ているとまだまだ組織作りの途中にあるように見えるため、具体的な名前を挙げることはあえて避けたい。

これらの団体に共通するのは、産地企業と一部の製造寄りの国産アパレルを中心にしているというところである。

平たく言うなら「産地と国産アパレルの首脳が集まって交流と親睦を深めて、より良い商品開発を行おう」と、そういう主旨である。

これらの主旨には大いに賛同するものの、疑念もいくつかある。

しかし、どの団体も主要企業は共通しており、例えばAという産地企業が3つも4つもの団体に参加しているという形となっている。
これなら、団体が林立する必要はなく、全団体を集めて一本化させる方が分かりやすいのではないかと感じる。
極端な言い方をするなら、参加企業はどの団体を見ても同じで、違うのは主催者や事務局だけということになる。

さらに個人的にもっとも気になるのが、どの団体にも流通の参加企業がいない。もしくは、いたとしてもものすごく少ないというところだ。

某団体は活動開始から2年くらいになり、参加企業数は増えているが、どれもが産地企業やアパレル、デザイナー、OEM事務所の類である。
流通企業は参加していない。

彼らは「物作り」の相談ばかりしているが、もしそのプロジェクトが進んで商品が出来上がったら、一体どこで販売するつもりなのだろうか?
勉強会での講師として大手流通企業の経営陣を招聘することはある。しかし、それ止まりである。
嫌な言い方をするなら、講師として招聘するくらいならある程度のツテがあれば難しいことではない。
招聘される側も時間さえ合えばOKしてくれる。
でもそれでは、主催者は単なるセミナー屋さんと変わりない。

百貨店でもセレクトショップでもSPAでも通販でも構わないから、せめて数社くらいは参加させる必要があるのではないだろうか。そうでなくては、プロジェクトを通じて出来上がったものを売る場所がない。
実際に物が出来上がったら、彼らはどうするつもりなのだろう?

技術開発は重要である。
これがなければ物作りも技術革新も立ち行かない。
しかし、あまりに「物作り」にこだわりすぎるのもどうだろうか。
繊維業界に置き換えてみるなら、合繊メーカーや紡績は常に技術開発している。
日本の機能性繊維は世界でトップクラスだろう。

吸水速乾、発熱、保温、湿潤、軽量、防臭などなど様々な機能性繊維がある。
ここでの技術開発は不可欠であるが、その糸を使って生地を織り、製品を作る側が同じように「物作り」の相談ばかりしていて良いのかというと、それは疑問を感じざるを得ない。

織り組織や編み組織、縫製、加工のテクニックだけを追求していても良いのか?ということである。
色柄やデザイン、シルエットなどの工夫も必要だろうし、プロモーション、告知も必要となる。

こんなブログがあるので参考資料として考えてもらいたい。

ものづくり日本って・・・いつから言っている?
http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-11305261250.html

『ものづくり日本』って、ずいぶん昔から言っていますよね。
それが日本経済、復活の鍵だって。

でも、全然復活にならない。

あまりにも「モノ」にこだわりすぎると、逆効果になる。
どんなにいい製品でも、乱暴な言い方をしたら所詮「製品」です。
劇的な個性的な差はない。
だからコモディテイ化が起きやすい。

たとえば薄型TV。

とのことである。

現在の衣料品も大量生産を背景とする工業製品である。
工業製品なのでコモディティ化しやすい。昨年ステテコが売れたと聞けば、今年はユニクロが大量生産販売を行う。そういうことである。(ステテコに関してはユニクロの状況分析と予想は誤っていたと感じるが)

現在の店頭で流通する衣料品は「伝統工芸品」とか「民芸品」ではない。

ところが、繊維業界の物作り団体の活動を眺めていると、売り場のない「伝統工芸品」や「民芸品」を開発しようとしているのではないかと感じられて仕方がない。

今回は期待も込めて、あえて懸念材料を書き連ねたがお許し願いたい。

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