今春夏は、レディースのジーンズに少し回復傾向がみられるという声が多い。

理由はトレンドが変わりつつあるからだ。
それまでのスキニー一辺倒から、テイパードストレートが浮上してきたからだ。

テイパードストレートとはどんな形かというと、スキニーよりは腰回りと太ももにゆとりがあり、つま先に行くに従って細くなっているという形だ。

スキニーの場合、本当に似合うのは足の細くて長い人に限られる(似合っていないのにトレンドだから穿いている人も多いが)がテイパードの場合、許容範囲がもう少し広がる。
スキニーに比べると間口はかなり広い。

しかし、トレンドとはいうものの、2~3年前にはすでにテイパードは店頭デビューしていたから、時間をかけてジワジワと浸透してきたという印象がある。

世間の景気に対する分析は各種あるが、個人的には2012年当時よりは上向きになりつつあると感じる。

今後、このまま景気回復が続いたとして、レディースの新トレンドであるテイパードジーンズが爆発的に売れるかというとそうではないような気がする。

毎年、毎シーズン何かのトレンドはあるが、待ちゆく人がそのトレンドの洋服一辺倒になることはないからだ。

例えば、ピークが過ぎたといわれているスキニージーンズだが、いまだに定番的な位置づけは変わらないし、待ちゆく人を眺めていても着用者も多くいる。
これが一挙にテイパードに変わるということはちょっと考えにくい。

また、非トレンドでちょっとダサいと思われ始めている、チュニック+レギンスという着こなしだが、これだって絶滅したわけではない。
都心でもちょいちょい見かけるし、郊外の住宅地なんかではむしろマス化したままのように見える。

復活したセーターの肩掛けスタイルだってそうだ。
今、わざわざそれをする人は少ないが、だからと言って、セーターを肩掛けしている人を見て「プッ ダサっ。3年前のままかよ」とは思わない。
「ああいうテイストが好きなんだな」とか「冷房が効きすぎて寒くなったら袖を通すために用意しているのかな」というくらいにしか思わない。

今後、どれだけ好景気になろうと、かつての高度経済成長期やバブル期のように、そのときどきにトレンドに応じてワードローブを総入れ替えするというような消費スタイルは絶対に復活しないだろう。

今、所有しているスキニージーンズをすべて廃棄して、テイパードジーンズを同じくらいの数そろえようという人はほぼ皆無だろう。

所有しているスキニージーンズを穿きつつ、テイパードジーンズを1本か2本買い足す程度だろう。

ガウチョパンツもしかりだ。
いくら今夏最大のトレンドとはいえ、毎日ガウチョパンツを穿いている女性はそれほどいないだろう。

一昨年に流行した花柄パンツだって、いまだに着用している人がいる。
「ああ、一昨年買ったのね」とは思うが「ダサっ まだあんなもんを穿いてるのか」とは思わない。
着用ローテーションの一つに登録されていたとしても不思議とも思わない。

2005年当時のようにレディースジーンズはブーツカット一辺倒ということにはなりえないし、今後もそういう消費行動にはならないだろう。

この10年間で日本人の洋服に対する考え方はある程度成熟化したのではないかと感じる。

なんだかんだといって、2005年ごろまではあるトレンドが圧倒的に支持された。
レディースのジーンズは全部ブーツカットだし、その前だと女性は全員神戸エレガンスだった時代もあった。

バブル崩壊後ですらああだったのだから、バブル期とか高度経済成長はトレンドへの狂乱ぶりはすさまじかったのではないか。

そして、アパレル各社やブランドの経営陣がああいう状況を創り出したいと考えて、事業を組み立てているなら、それは危険だろう。
むしろ会社やブランドが傾くのではないか。

トレンドが生まれてもそれ一辺倒にならず、それぞれのテイストを何となく使い分けるような消費行動は今後ますます定着するだろう。
驚くような突飛な服装にチャレンジするような人は今後も減り、それぞれのテイストの無難なアイテムを集積して上手くコーディネイトするような人はさらに増えるだろう。

となると、それに対応した企画・販売の形態を考える必要がある。

バブル期や高度経済成長期のような、ワードローブ総入れ替えのような消費行動が戻ることは二度とない。経営陣がそれを理想とし、追いかけているアパレル企業は今後ますます苦境に追い込まれる。