ユニクロの6月度国内既存店売上高が前年比11・7%と大幅に落ち込んだことから、「ユニクロ失速」という記事がチラホラと出始めた。

結論からいうと、その兆候はあるかもしれないが6月度だけの結果でそう決めつけるのはいささか早計ではないかと感じる。
判断を下すのは7月度以降の推移を見てからの方が賢明だろう。

ただ、この記事はそれなりにユニクロの現状に対する消費者の雰囲気をうまく抽出していると感じる。

マクドナルドの二の舞か? 
なぜだ! ユニクロが突然、売れなくなった

「飽きた」「高くなった」「もう欲しい物がない」……
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44266

しかし、タイトル通りにすぐさま低迷し始めるとは思えないのも事実である。

この記事に示されているような可能性はあるだろうが、それでもユニクロの売上高がすぐさま大幅に減少することは考えにくい。逆に5000億円規模や3000億円規模に縮小するなら堅調に推移するだろう。
むしろ2000億円規模の大手総合アパレル各社の方がよほど経営危機に瀕している。

それに仮にユニクロがつぶれたとしてもそこら辺の苦戦続きのアパレルブランドの売上高が劇的に増えることは考えられない。ワールドやイトキン、ファイブフォックス、レナウン、TSIホールディングスが劇的復活することはありえない。それこそぬか喜びに終わるだろう。

それはさておき、先ほどの記事の中身を紹介しよう。

このあたりの分析は的確だと思う。

だが、日本の消費者は全く違う。誤解を恐れずに言うと、多くの日本人にとってユニクロは、お世辞にも「背伸びして買う服」ではない。

確かに、生地も縫製もしっかりしていて長持ちする。ヘンな柄やイラストのついたものが少なく、シンプルだから誰にでも似合う。何より、いつ店に行っても安かった。

しかし今、こうしたユニクロの美点が「強み」ではなく「弱み」に変わろうとしている。円安や材料費上昇などの要因で、値上げを余儀なくされているのが、最大の理由だ。マーケティングが専門の、慶應大学商学部教授の白井美由里氏が指摘する。

「誰もがユニクロには『高品質で低価格』というイメージを抱いています。しかし、数年かけてアンケート調査を行ったところ、実は『品質がいいのに安い』のではなく『安いわりに品質が良い』と評価されていることが分かりました」

また、消費者がユニクロ製品の何を重視して購入しているかを調べてみると、「品質の良さよりも安さのほうをより重視している」との結果が出たという。つまり、

「ユニクロの商品の主な『売り』は安さであり、ゆえに値上げが難しいということです。マーケティング戦略の一般論として、高級ブランドのほうが価格の自由度が高い。高いものは安くできますが、もともと安いと思われているものを値上げするのは困難なのです」(前出・白井氏)

とある。
まあ、納得である。
ただし【「品質が良いのに安い」ではなく「安いわりに品質が良い」と評価されていることが分かりました】とあるが、そんなことはわざわざ分析せずとも初めからわかっていたことではないか。

さらに

ほんの2年前までユニクロは、ジーンズ1本を1990円、2990円、3990円の3プライスで売っていた。だが昨年、柳井社長は創業以来初めての一斉値上げに踏み切った。現在、ジーンズの主要ラインナップには4990円の値札もつく。さらに今年の秋冬商品では、一部で大幅な値上げを予定しているとも発表した。値上げ幅を全商品で均すと、およそ1割に達するという。

とある。

記事の誤解を指摘したいが、ユニクロがUJとして1990、2990、3990円ジーンズを打ち出したのは2010年であるから5年前のことである。
そしてその期間は長くは続いていない。2011年には廃止されたので1年間しか続いていない。
2012年以降のユニクロは、ジーンズ3990円、それ以外のカラーパンツを1990円、チノパンを2990~3990円で販売している。

過去には何年間もかけてやっと完売できたメイドインジャパンジーンズ(企画的には失敗作だと感じる)があったが、あれは5990円~1万円で販売していた。

ただ、

「ユニクロと同じ価格帯には、世界中のファストファッションブランドがひしめいています。その中で1社だけ値上げが続けば、『この金額を払うなら、別にユニクロじゃなくていいや』と離れる消費者が増えるでしょう」

現に店頭では、「ユニクロ、なんか高くなったね」という客の声がすでに聞こえ始めている。

とあるのは事実に近いと感じる。
筆者の体感と同じだ。

スエットシャツ(いわゆるトレーナー)が1990円から2490円に、スエットフルジップパーカが2990円から3490円に値上がりしたのはどうしても「高ッ」と感じる。しかもこれは税別価格である。

原材料費の高騰、為替の円安基調、中国工場の慢性的な人件費高騰という3つの理由があるから値上げがやむを得ないことは承知している。

それでも「高いユニクロ」に対してそれほど魅力を感じない人が多いというのも事実である。

人は何かを買う時、無意識のうちに「内的参照価格」、つまり「このくらいまでなら出せる」という金額にモノの値段を照らし合わせるという。エルメスで服やカバンを買うときは「20万円出しても仕方ない」となる。だが、良くも悪くも「普通の服」ばかりというイメージが染みついたユニクロでは、1万円払うのも高いと感じる。どうしようもない現実だ。

これもほぼその通りだと思う。
そのための「+J」導入だったのだろうし、今秋からクリストフ・ルメールとのコラボなのだろう。
これまで上手く育たなかった外部デザイナーとのコラボが今秋から急に上手く行くとは考えにくい。
このラインを確立するためには少なからぬ時間が必要なのではないか。

ユニクロのくせに5000円もするジーンズは買いたくない—値段が許容できる水準を超えた瞬間、客はソッポを向き、何も言わず、何も買わずに店を出てゆく。

これもその通りだ。

そしてここまで高いならほかのブランドでも良いとも思う。
筆者もユニクロのジーンズに4990円支払うなら、エドウインの値下がり品か、ラングラーの定価商品を買う。

以上のような不満はこれまでずっと消費者の中にくすぶっていたもので、今、急に出て来たものではない。
実際に筆者だってずっとそう思ってきた。
今までくすぶっていたものが今後、さらに顕在化する可能性は高い。

あと、他メディアの中には、ヒートテック、ウルトラライトダウンに続くヒット商品がないと指摘する記事もあり、これもその通りだ。

しかし、ユニクロを弁護するわけではないが、何百万枚単位で販売できる大ヒット商品なんてそう簡単には生まれない。そんなに簡単に生まれるなら他のブランドがなぜここまで低迷しているのかということになる。
ユニクロに対してちょっと酷ではないか。

今のアパレル業界なら数千枚売ったらヒット商品である。
1万枚越えたら大ヒットである。
ユニクロとは販売枚数のケタが三つくらい違う。

不振といっても他のブランドなら超大ヒット商品並みの販売枚数があるのがユニクロである。

他の有象無象のアパレルブランドが束になっても敵わない規模がある。

話は逸れるがくだんの記事の中での柳井会長の考え方は賛成である。

柳井社長は、かつてこう語っていた。

「ファッションブランドはありもしないライフスタイル、いわば虚像を売っているようなもの」

「(既存のアパレル産業は)まず能書きとか自分たちに都合のいい情報をつくってお客を誘導するような商売でしょ」

細かい経営方針はコロコロ変える柳井社長にあって、この「ファッション」や「高級ブランド」といったものへの対抗心、批判精神は一貫している。

これはまったく同感である。
筆者もファッションブランドの能書きとか虚像作りは大嫌いである。
それ故にファッションがよくわからないし、ファッション業界には胡散臭さを感じる。

だからこそ、ユニクロに対しては共感する部分もある。

まあ、どっちにしろ他人の会社なので潰れようと身売りしようとどうなろうと構わないのだが、7月以降の推移を見つつ、是是非非で考えていきたい。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20


ユニクロ思考術
柳井 正
新潮社
2009-10-15


ユニクロ 世界一をつかむ経営
月泉 博
日本経済新聞出版社
2012-07-07