今日で6月が終わりである。
早いもので半年が終わることになる。
年末を大晦日というが、昔は半年が終わる6月末日も水無月晦日と呼んで大祓が行われた。

そんなわけで雑感でも。

先日、繊研プラスにこんなコラムが掲載された。
ファッションスナップドットコムには「モードに関心のない専門学校生」」と改題されて掲載された。

http://www.senken.co.jp/column/eye/sacai0623/

 某ファッション専門学校での出来事だ。就職活動まっただ中の3年生200人に「サカイ」のデザイナーを聞いてみたところ、知っている学生は一人だけだった。クリエーションが世界で認められ、ビジネスも上り調子を続けるデザイナー阿部千登勢を知らないとは。ファッション専門学校生のモードへの関心は、想像以上に低くなっているようだ。

 彼らはきちんと学んできたまじめな学生たちだ。みんな今っぽい服装だったので、ファッションやトレンドには興味があるのだろう。ただ、モードにはあまり関心がない。ファストファッション全盛の今、時代を引っ張るデザイナーのことを知らなくても、今っぽいファッションは手軽に楽しめる。背伸びをしないと手が届かないデザイナーの服に興味を持つ必要はなかったのかもしれない。

 だが、いいものを知らないと目は養われない。時代を引っ張るデザイナーのクリエーションには、デザインが持つ力がある。それを知ることはファッションを生業(なりわい)にする人間の目を必ず育てる。一朝一夕には手に入れることができない目を、ファッション業界を担う次の世代にも育んでほしい。


とのことであり、短文なので全文を引用した。

まあ、言わんとすることは理解できる。
専門学校生の中にはいわゆるコレクションブランドに興味、関心のない生徒が実際に多くいる。

ちなみにモードってなんだろう?と思って意味を検索してみた。すると、


現代の「モード系」という
言葉の意味は、

①常に一歩先、最新であること。
トレンドを取り入れていること。

②モノトーンはもちろん、シンプル。
シルエットやバランスで評価される。

③ブランドよりデザイナーで
服を選ぶ。

が一般的なようです。

ただ時代の移り変わりによって
「モード」の意味は変遷を遂げています。


とのことであり、さっぱり要領を得ない。
実際のところ、筆者にしたって「これがモードだ」という定義がわからないのだから、他人に説明するとしたらこんな内容になってしまう。

このコラムで使われている「モード」という言葉は、文脈から推察すると、いわゆる「デザイナーズブランド」「コレクションブランド」と同義で使われているようだ。

デザイナーズブランド、コレクションブランドと限定すると、我が国の専門学校生が関心を持たないのは当然だといえる。
デザイナーズブランド、コレクションブランドで広く一般的に知られるほど大成功をおさめたブランドが「コム・デ・ギャルソン」くらいしかないからだ。
「ケンゾー」「イッセイミヤケ」「ヨウジヤマモト」あたりまで加えてもそれほど多くないだろう。

このコラムで例示されている「サカイ」や、「ミナペルホネン」などのブランドは成功を収めつつあるように見えるが、ファッションに興味のない人たちに認知されているほどの知名度ではない。

高校から専門学校へ進学した生徒たちが知らなかったり、関心を持たなかったりするのは当然ではないかと思う。

また、これらのブランドの直営店もあまりないし、これらを仕入れて販売している専門店も現在では数少なくなっている。

実は筆者だってこれらのブランドについて関心がまったくない。
仕事柄知識としては知っているが、それ以上に親しみたいとは思わない。

なぜなら、日常生活においても仕事においても全く接点がなかったし、今後もないだろうからだ。

今の専門学校生だって同じではないか。

高校を卒業するまでの過程で、日常生活においてこれらへの接点はほとんどなかっただろう。
接点のないものに興味を持つのはよほどマニアックな人である。
また専門学校に入ってからも接点はないだろうし、就職活動においてもあまり接点はないだろう。
ファッション専門学校の就職先としては、大手アパレル、中小・零細アパレル、生地問屋や商社の製品事業部、OEM/ODM企業がほとんどであり、それ以外は販売員である。

その販売員だって、大手チェーン店が圧倒的数を採用するから、わざわざデザイナーズブランドの直営店へ販売員として就職する人は少数派だ。
また、国内のデザイナーズブランドの多くは直営店を持てないか、持てたとしてもほんの1,2店から数店規模が大半以上を占める。
専門学校生の就職活動先としてはそんなに魅力ある先ではない。

デザイナーズブランドやコレクションブランドに興味を持てるとするなら、育つ過程においてそういうものに触れ合える機会が多かった人に限られるのではないかと思う。もしくは独自に興味を持つマニアックな人かである。
我が国の現状においてそういう人はどう考えても少数派ではないか。

社会環境がそうではないのだから、それを専門学校生に求めるのはない物ねだりなのではないかとも思う。

筆者は個人的に、そういう物は知識として知っておくに越したことはないが、それよりも現状のアパレル企業やその他の製品化事業部のある企業へ就職することに集中する方が専門学校生としては賢明ではないかと考える。

デザイナーズブランド、コレクションブランドが通常のアパレル企業並みに「ビジネスとして」成り立たっていない状況において、学生にそれを過剰に志向させるのは却って若者を経済的貧困に追い込むのではないかとも思う。
職業人として知っておくに越したことはないが。(大事なことなので2回繰り返しました)

幸か不幸か、我が国においてそういうブランドは一握りを除いて、ビジネスとして成り立っていない。
国が悪いとか社会が悪いとか言う話ではない。
環境は全企業同じである。同じ環境下において、ビジネスとして成り立っている企業もある。
成り立たせられないのは事業主の組み立て方に問題があると考えるべきだろう。

逆に言えば、今後、大成功を収めるデザイナーズブランドが次々と輩出されるようになれば(かなり確率は低いと思うが)、専門学校生も自ずと興味や関心を持つだろう。

ユニクロ対ZARA
齊藤 孝浩
日本経済新聞出版社
2014-11-20