洋服がなぜ売れないのか。様々な理由があるだろうし、様々な人が所属するクラスタに応じた分析をしているだろう。的中しているかどうかは別にして。

個人的に考えていることをまとめると以下のようになる。

1、見映えの良い洋服は低価格SPAと外資ファストファッションのおかげでいくらでもあるから、無理に高い服を買う必要がない。
(素材の良し悪しとか縫製の良し悪しは関係ない。あくまでも一見したところ)

2、かっこいい洋服を着ていることが特別なステイタスではなくなったこと。
(とはいえ、ボロボロ・ダサダサの服装では好感は得られない)

3、可処分所得が伸びなかったり減少している中で、他の分野を倹約してまで洋服につぎ込むことに対してナンセンスだと思う人が増えたから。
(そう思う人がいても構わない。個人の価値観だから。ただしそういう人は少数派)



バブル期にこぞってバカ高いDCブランドでトレンドの洋服を買い漁っていたのは、それを着ることでモテたり、ステイタス性を感じられたからである。
それに当時は低価格衣料品でDCブランドと同じような外見をした商品が無かった。
ある意味では仕方なしにDCブランドを買わざるを得ない部分もあった。

何度も書いて恐縮だが、略礼服ではない黒無地のメンズスーツは94年当時には、DCブランドの流れを汲むブランドしか販売していなかった。
洋服の青山もアオキもはるやまもコナカも販売していなかった。
必然的に、黒のメンズスーツを買おうと思うとDC系ブランドしか選択肢がなかった。

それが今では、黒の色の深みとかそういうことを度外視すれば、西友にも8800円で黒無地スーツが売っている。
ファッションにそこまで興味のない人からすれば、8800円の西友のスーツで十分ということになり、これを指して「感度が退化した」とか「考え方がおかしい」と非難するのは業界人の驕り、慢心、思い上がりだろう。
あんたら一体何様やねん。


さて、先日、某大手ウェブメディア系の社長とお会いした。
その社長は「ファッションウェブメディアは当社も含めて、PV(閲覧者)数を稼ぐために最近は飲食店・飲食物記事ばかりを掲載するようになってしまっているんですよね~」と反省とも嘆きとも将来への危惧ともとれる感想を述べておられた。

たしかに最近のファッションウェブメディアは、飲食店オープンの記事がやたらと多い。
ショップオープンなら掲載するのもわからないではない(500歩くらい心の中で譲って)が、新メニュー紹介の記事も多くて、これにはさすがに「一体何のメディアやねん」と突っ込まざるを得ない。

飲食に対してさして興味のない筆者からすると、「新メニュー〇〇パフェ登場」なんて記事は興味の対象外だし、PV数稼ぎで掲載することに対しても大いに違和感はある。

しかし、ファッションとは衣料のみならず、食・住、ライフスタイルすべてが含まれるという昨今の風潮に則るなら「〇〇パフェ登場」という記事もファッション記事だということになる。

逆に、グルメ情報サイトやグルメ関係の媒体が、「ユニクロ〇〇店オープン」とか「欧米から〇〇ブランド初上陸」なんていう記事を掲載することはない。
あるとするなら、それらのブランドがカフェやレストランを併設していた場合くらいだろう。
あとはブランドとコラボした新メニューを開発した場合だろう。例えば「ユニクロコラボの親子丼(仮)」とか。

ファッションという概念が広がって食・住をも取り込んでしまっているというのが実情だろう。
もしくは、衣料品だけでは食えなくなって、食と住をも取り込む必要性に迫られて概念を広げたのか。

筆者は後者だと見ている。

今後、クリエイター系の人々や昔ながらの業界人が思い描くような「衣料品重視」の風潮は二度と来ることはないだろうから、食品記事や住宅関連記事がますます掲載されることになるだろう。
現にファッション雑誌だって相当に食品関連・住宅インテリア関連記事が増えている。

マス層は低価格SPA、ミドル層は中間価格帯のブランド、トップ層のみがいわゆる「こだわり系ブランド」を買う。
そのトップ層の人数は限りなく少ない。
「こだわり系ブランド」を展開するのであればそのニッチな市場を相手にするのだという意識をより強く持つことが必要である。
どんなにがんばってもマス層が「こだわり系ブランド」を欲することはないのだから。

「こだわり系ブランドの良さがわからないマス層は退化している」なんて言ってみても無駄だ。
その良さをマス層に「的確」に伝えられないブランド側・業界側に責任があるとしか言いようがない。
職人やクリエイターの「独りよがりなこだわりの作り」とか、一部の玄人にすらわからない「こだわりの仕様」だとか、そういうことを伝えてもほとんど効果がない。


個人的には大いに違和感があるが、「〇〇パフェ登場」「〇〇ラーメン開発」なんていう記事は、今後もますますファッション系メディアに掲載されることになるのだろうし、それは仕方がないことなのだろう。
全然興味ないけど。